導入事例 CASE STUDY
株式会社クラスコ 様
中央に座るのが、小林利幸会長。左前は小村和功取締役
統合型会計情報システム(FX4クラウド)ユーザー事例
不動産業界に新風吹き込む
革新企業の業績管理体制
石川県金沢市に全国の不動産会社から熱い視線を注がれている企業がある。小村典弘社長(42)が代表を務めるクラスコだ。「リノッタ」というリノベーションブランドをFC展開するなど、不動産関連事業の多角化を進めている。それを業績管理の面から支えるのがTKCの『FX4クラウド』だ。
リノベーションをはじめ不動産の新たな価値を提案
──不動産の賃貸仲介件数で県内トップクラスを誇るそうですね。
小村典弘社長
小村 金沢駅前店がアパマンショップ加盟店のなかで日本一の売り上げを達成したこともあります。不動産の「仲介」だけでなく、「売買」「賃貸借」「管理」もするほか、コインパーキングやコインランドリーの事業も手がけています。
さらに、グループ会社の「クラスコプロパンガス」でプロパンガスの販売・メンテナンスをしたり、同じくグループ会社の「クラスコケア」で高齢者専用賃貸住宅の運営や介護事業もしています。
──2012年からスタートしたリノベーションブランド「リノッタ」が、全国的に注目されているとか。
小村 古い部屋でも、設備やデザイン性をプラスすることで、新築以上に魅力的な住まいにすることができます。当社では早くからリノベーション事業に取り組み、賃貸物件の入居率を向上させてきました。そのノウハウを生かしてFC展開したのが、「リノッタ」です。現在の加盟店数は全国386店舗。日本最大級の賃貸リノベーションネットワークといえます。
リノッタの持ち味は、ひと部屋ごとに違うコンセプトのデザインを取り入れ、〝一戸一絵〟のライフスタイルを提供できるところです。それなりの築年数のマンションだったとしても、デザイナーズ物件と呼ぶにふさわしい、魅力的なお部屋に生まれ変わらせることができます。
──「デザイン力」にこだわっているわけですね。
小村 ええ、それが消費者の心をつかまえるうえでの大切な要素になると考えています。例えば、ダイソンの掃除機にしても、アップルのパソコンにしても、デザインによってその製品の価値を高めています。あるいは、ユニクロの店舗はすご腕のインテリアデザイナーがプロデュースすることで集客率アップに成功しています。それと同じようにデザイン性に優れた物件なら、たとえ築年数が古かったとしても、多くのユーザーの関心を集めることができるのです。現に、築年数30年超の物件でもリノベーションによって40%の家賃アップを実現させたといった話はたくさんあります。
──FC展開をはじめたのはどんな理由からですか。
「リノベーション」のうまさが持ち味
小村 いま全国の不動産屋さんの多くが、空き室対策に困っています。そんな同業者のみなさんのお役に少しでも立てればと思い、「リノッタ」のFC事業をスタートしました。
また、不動産業務を効率化するための各種ITツールを提供する「クラスコリテック」のサービスに力を入れているのも同様の理由からです。アイパッドアンケートで顧客分析ができるアプリ『とうろくん』、スマホで内見の案内ができるソフト『あんないと』、外壁修繕の提案書作成システム『がいへきんぐ』、賃貸管理のウェブマニュアル『ちんたいちょう』など、マンパワーに頼りがちな専門的な業務や細かな作業をサポートするさまざまなITツールを用意しています。
私たちが不動産コンサルティング会社となって、不動産業界全体を底上げしたい。そんな思いのもとに、「リノッタ」や「クラスコリテック」の事業を展開しています。
「MR設計ツール」を使いグループ会社同士を横比較
──創業は1963年でした。
小村 私の祖父が「タカラ不動産商事」として金沢市で創業したのがはじまりです。
その後、1993年に現会長の父(小村利幸氏)が事業を引き継ぎ、不動産事業のほかにコインパーキングやプロパンガス販売の事業などにも進出し、業容を拡大していきました。
池水龍一公認会計士 私がクラスコさんの税務顧問に就任したのは、小村会長が社長を務めていた15年前でした。当時、小村会長は従業員の定着率をよくするための取り組みなど、さまざまな組織改革を進めていました。業績管理のあり方についても見直しを図り、『FX2』を導入してTKC方式を本格的にスタート。5~6店舗あったアパマンショップを『FX2』の部門別管理機能を使って個別に業績管理できるようにしたことで、より詳細な経営判断がおこなえる体制を築きました。
──現在は、『FX4クラウド』を活用されているそうですね。
細山忠明・経理課係長
細山忠明・経理課係長 『FX2』→『FX4(従来版)』→『FX4クラウド』とステップアップしてきました。いま合計7社あるグループ会社(クラスコプロパンガス、クラスコケア、クラスコデザインスタジオなど)についても、すべて『FX4クラウド』に切り替えています。
以前は『FX4(従来版)』を使っている会社と『FX2』を使っている会社とが混在していましたが、それではグループ全体の数字を合算した社内資料を作る際にひと手間かかってしまうため、『FX4クラウド』に統一しました。現在は「マネジメントレポート(MR)設計ツール」の機能を用いて、グループ全体の数字のほか、各グループ会社の数字を「横比較」できる自社独自の帳表を簡単に作成できています。
──部門別管理はどのようにされていますか。
細山 3階層での部門設定をしています。まず1段目の階層では、①賃貸②管理③売買④資産コンサル⑤コインランドリー……など、それぞれの事業を部門に見立てています。
つぎに2段目の階層として、例えば①賃貸部門の下に「金沢駅前店」「石川県庁前店」「小松店」をぶら下げるといった形で、店舗別の部門設定をしています。さらに「小松店」については、その下に「管理」と「リフォーム」の部門を3段目の階層としてぶら下げています。
こうした階層別の部門別管理をすることで、それぞれの事業や店舗などの業績が個別に把握できるわけです。特に小村会長は詳細な部門別管理にこだわっており、私がクラスコに中途入社した7年前から部門別管理を徹底するようにと口酸っぱく言われてきました。
フィンテック機能で残高確認の負担が軽減
──社内会議では主にどんな資料を活用されていますか。
小村 MR設計ツールを使って作成した独自の「部門別限界利益一覧表」などを会議資料として使っています。『FX4クラウド』にも各部門の限界利益が一覧で見られる正規の帳表があるのですが、自分たちにとって使いやすいスタイルのものを使用し続けています。
──クラスコさんが限界利益の動きを注意深く見ているのは、池水先生の指導によるものですか。
池水龍一公認会計士
池水 いやいや、小村会長をはじめとした経営陣のみなさんが本当によく勉強しているからですよ。《変動損益計算書》の考え方をきちんと理解していて、損益分岐点(固定費÷限界利益率)がどこであるかなどをいつも意識されています。なかなかの理論家ですね。「攻め」も強いけど、「守り」にも神経質な人で、だからこそ財務データの動きに目を光らせているのです。
ちなみに小村会長とは、クラスコグループの「プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント」(問題児・スター・金のなる木・負け犬)についてよく話をしています。現在の金のなる木は、不動産事業。そしてスター(花形商品)は、リノベーション事業。そんな話をしながら、クラスコさんの多角化経営を検証しています。
──ほかに『FX4クラウド』の機能で気に入っているものがあれば教えてください。
細山 TKCのフィンテックサービスである「銀行信販データ受信機能」はいいですね。月次巡回監査の前に残高確認をしているのですが、以前は金額が合わないことが結構多かったんです。しかしこの機能を使って、インターネットバンキングの数字を仕訳データとして取り込むようになったところ入力ミスがなくなり、残高がきちんと合うようになりました。
──今後の展開は?
小村 中古住宅(一戸建て・マンション)をリノベーションして物件価値を高めたうえで販売するFC事業に本腰を入れることがまずひとつ。加えて、先ほど申し上げたクラスコリテックのサービスを通じて、不動産業界の「働き方革命」を推進していきたいとも考えています。業務効率化を実現できるサービスを通じて、業界内に根付く残業問題などを少しでも解消できたらいいですね。そのためにも、積極的にAI(人工知能)を活用するなどして、さらなるサービスの充実化を図っていきたいものです。
企業情報
株式会社クラスコ
- 設立
- 1984年9月
- 所在地
- 石川県金沢市西念4丁目24-21
- 売上高
- 38億1,000万円(平成28年度グループ全体)
- 社員数
- 258名(平成28年8月現在グループ全体)
- URL
- http://www.crasco.jp/
顧問税理士(公認会計士) 池水龍一
さわやか税理士法人 池水公認会計士事務所
- 所在地
- 石川県金沢市西町3番丁18番地
- TEL
- 076-263-0411
- URL
- http://www.tkcnf.com/ikemizu_kaikei/
(『戦略経営者』2017年6月号より転載)