株式会社平出精密 様

株式会社平出精密

統合型会計情報システム(FX4クラウド)ユーザー事例

業務システムとのデータ連携で
スマート工場化を加速

“東洋のスイス”と称され、精密機器産業が集積する長野県岡谷市。精密板金加工に強みを持つ平出精密もその1社だ。とりわけ図面や工程の見える化を核とした「スマート工場」の取り組みにより、同業他社の注目度は高い。「アメーバ経営」を標榜する平出正彦社長に『FX4クラウド』を用いた財務マネジメントのまわし方を聞いた。

精密板金加工の草分けとして高度な技術力で業界をリード

──長い業歴をお持ちだとか。

平出正彦社長

平出正彦社長

平出 父が前身である「平出精密鈑金製作所」を創業したのが1964年です。もともとは戦時中の航空機板金技術をベースにスタートしました。創業50周年である2014年を迎えるに際して、さまざまな表彰制度に応募し「ものづくり大賞NAGANO2014グランプリ」や「5S実践塾おかや最優秀賞」などを受賞できました。

──ものづくり大賞ではどのような点が評価されたのでしょうか。

平出 得意とする高精度の精密板金、加工技術を高く評価していただきました。ミクロン単位の精度の抜き加工、曲げ加工は半導体装置、医療用機器等の部品加工に幅広く活用されています。

──技術力の源泉は?

平出 最新鋭の機械設備を積極的に活用している点が挙げられます。1982年に炭酸ガスレーザー加工機を、85年にはドイツ製のレーザー・パンチ複合機を国内でいち早く導入。ファイバーレーザーによる溶接技術を応用した「テーラードブランキング工法」ではアルミ溶接でもひずみがほとんど出ません。
 近年は3億円を投資し小型全自動曲げロボットの導入のほか、機械が搬出を行う自動倉庫の更新、ICチップ付きの300金型の交換を行いました。工場内が床暖房により一定の室温に保たれているのも高精度を実現する要因のひとつです。

──IT化が進んでいますね。

平出 工場のIoT化を強力に推し進めている最中です。4次元化した図面や製作工程、作業指示書などあらゆるデータをサーバーで一元管理し、製造現場で必要な情報を誰もが共有できるスマート工場を目指しています。ゆくゆくは各工程の機械設備を全てネットワークに接続し、現場担当者はタブレット端末を使って情報を参照できる体制にしていく予定です。

──2016年1月には新工場を設立されました。

平出 長野自動車道・岡谷インターチェンジのそばに神明工場を竣工(しゅんこう)しました。自社開発製品の水系スパイラル洗浄機を扱う洗浄事業部を移転し、各種精密装置の組み立ても行っています。

──独自の人材教育プログラムを取り入れていると聞きました。

平出 入社1年目は正確性の習得、2年目はスピードの追求……といったように年次ごとの目標に応じた社員教育を実施しています。国家検定の工場板金検定の特級や1級を保有している社員が数多くおり、精密板金というジャンルを開拓した自負のもと取り組んでいます。
 また、信州大学大学院修士課程28単位中の2単位を当社で修得できるのも大きな特徴です。機械システム工学を学ぶ学生に人気の講座で、1日8時間、計5日間講義と実習を通して学んでもらっています。当社にも大学院に通う社員がいるほか、設計者、バイヤー向けの板金技術に関するセミナーも随時開催しています。

瀬戸顧問税理士 平出社長は社員教育、人材育成に並々ならぬ情熱を注がれていて、多額の資金と時間を投じられています。私が訪問するようになった当初は心配になり、より効率的な方法があるのではとご提案したほどです(笑)。

機械装置の稼働状況が一目瞭然

機械装置の稼働状況が一目瞭然

生産管理システムと連携し冗費の節減に役立てる

──『FX4クラウド』を導入したねらいは?

平出 情報の一元化を進める過程で、生産管理システムと財務の情報をいかにリンクさせるかが課題になっていました。『FX4クラウド』を使えば生産管理システムとデータ連携を行えると瀬戸先生から紹介され、長年利用していた『FX2』から移行しました。クラウドに切り替えてさまざまな面で利便性が向上したと感じています。

──具体的には?

自社製品の1個流しのできる「水系インラインスパイラル洗浄機」

自社製品の1個流しのできる
「水系インラインスパイラル洗浄機」

平出 われわれは部門をできるだけ細かく分けて業績を管理する「アメーバ経営」の考え方を取り入れています。『FX4クラウド』の仕訳読込テンプレートを使って生産管理システムのデータを連携させることで、費用がどの工程で発生したのかなど、より詳細なデータを把握できるようになりました。それから『FX4クラウド』を3台のパソコンで利用し、当日のデータを翌日の正午までに入力しおえることをルールにしているため、勘定科目ごとの数値を把握するタイミングが早まりました。

──どんな点を重点的にチェックしていますか。

平出 一般的な損益計算書の計算式は、売上高-経費-人件費、労務費=利益という考え方ですが、アメーバ経営では人件費と労務費を右辺に移し、売上高-経費=人件費、労務費+利益という計算式をベースに考えます。人件費と利益を向上させるためには、売上高を増やして経費の無駄を徹底して削らねばなりません。ですからおのずと目が行くのは売上高と経費科目の推移です。
 《変動損益計算書》の画面を開いて棒グラフで前月、前年同月の数値と比較して大きな変動のある科目が見つかったとき、原因を納得できるまで追究しています。気になる科目をたいてい3、4回クリックすると異常値をもたらした仕訳にたどりつけます。このドリルダウン機能がありがたいと感じています。
 例えば取引先から着払いで資材などが送られてきますが、前月に比べて5万円ほど金額が増えていたことがありました。しかしそれに付随して売上高は伸びていない。詳しく調べたところ、資材が小ロットで何回も送られてきていたのです。10個たまった時点で配送してもらうよう現場に指示したところ、翌月以降異常値は見受けられなくなりました。前日のデータをもとに、現場に的確な指示を出せるスピード感を評価しています。

──先生が監査されていますか。

瀬戸 はい。毎月10日前後に訪問して『FX4クラウド』の入力データを確認し、20日前後にもう一度訪問して生産管理システムの確定したデータを連携させ月次の数字を締めています。私がふだん利用しているパソコンにも『FX4クラウド』がインストールされているので、社長からお問い合わせがあったときはお互いに同じ画面を開いて回答できます。また、おうかがいする前に《勘定科目残高一覧表》などの帳表を印刷してチェックしてから巡回監査に臨めるので、業務効率が非常に高まりました。

平出 『FX4クラウド』は外出先や自宅など、場所を問わず利用できるところがいいですね。システムを終了するのを忘れて寝てしまい、社員に迷惑をかけることもありますが(笑)。近ごろは買掛金の支払いサイクルが短縮化しつつあり、今後は支払管理機能をあわせて活用していく予定です。

──抱負をお願いします。

平出 トランプ米大統領の就任や英国のEU離脱など、グローバル化の流れに反発するナショナリズムの機運が世界各地で高まっています。タイに工場を展開する当社もこうした動向に無縁ではなく、国際情勢がますます不安定になることが予想されるなか、何よりも工場のIoT化をキーファクターとして捉えています。加工工程の見える化、ビッグデータ解析を基盤としたスマート工場化を強力に推し進め、屈指のエンジニアを育てていくつもりです。

企業情報

株式会社平出精密

株式会社平出精密

創業
1964年1月
所在地
長野県岡谷市今井1680-1
売上高
13億1,000万円
(2016年1月期)
社員数
105名
URL
http://www.hiraide.co.jp/

顧問税理士 瀬戸雅三税理士
法人瀬戸会計事務所

所在地
長野県岡谷市赤羽1-3-28
TEL
0266-22-3658
URL
http://www.tkcnf.com/setokaikei/

『戦略経営者』2017年1月号より転載)