導入事例 CASE STUDY
株式会社アンド・いしかわ 様
「2016年度方針発表会」を加賀温泉で開催
統合型会計情報システム(FX4クラウド)ユーザー事例
「街のでんきやさん」グループが
一体化を加速したワケとは?
“街のでんきやさん”として地域密着型のサービスを展開するパナソニックショップ。石川県の「アンド・いしかわ」は、それらパナソニックの系列店が10社集まってできた組織ショップである。本部長の谷口 中さん(67)をリーダーに、「グループ全体の業績が正確に把握できない」「各加盟店の業績を本部で一元的に管理できない」といった課題を、クラウド 型の会計ソフトを新たに導入することで克服。グループとしての経営はさらにレベルアップした。
◎プロフィール
たにぐち・あたる●1948年、石川県小松市生まれ。創業1951年の「アンド・たにぐち」(タニグチムセン)の社長を務めるとともに、2010年に地元のパナソニックショップが加盟する「アンド・いしかわ」の本部長としてグループの中心的な役割を果たしている。
谷口 中本部長
石川県小松市で〝街のでんきやさん〟を営む谷口中さんは6年前、同業者の仲間とともに「組織ショップ」を立ち上げた。会社の名前は「アンド・いしかわ」。当初はパナソニックショップを経営する5社のグループだったが現在、参加企業は10社に増えている。
パナソニックショップとは、要するにパナソニックの系列販売店のこと。ヤマダ電機などに代表される家電量販店が文字どおり「家電」だけを売っているのに対し、昔ながらの「街のでんきやさん」であるパナソニックショップが売っているのは、「家電とそれに付随するサービス」だ。たとえばテレビなら、自宅に届けて終わりではなく、設置作業や操作方法の説明までも買って出る。あるいは電球や蛍光灯の交換などの軽工事にも幅広く応じている。
「高齢者のお宅にアンテナ修理に行って、ついでに雨どいの掃除をするようなこともあります」(谷口さん)
たとえ量販店よりも価格が高かったとしても、これらの付随サービスを必要なものと考えて、パナソニックショップと懇意にしている人たちは確実に存在する。
とはいえ、家電量販店の台頭に押されてパナソニックショップの数はピーク時に比べてだいぶ減っている。苦しい戦いを強いられているのは事実なのだ。そんな中で近年増えつつあるのが、複数のパナソニックショップ同士が集まって「組織ショップ」を結成する動きだ。すでに全国にいくつかのグループが誕生している。「アンド・いしかわ」はその代表例で、商品の仕入れや宣伝活動などを10社の共同体制でおこなっている。
本部長として「アンド・いしかわ」をまとめている谷口さんが組織ショップ化を目指したのは、あるきっかけからだった。
「近隣のパナソニックショップ仲間で結成した販促部隊(アンド・グループ)の研究会である日、FC化しているパナソニックショップの利益率と、私たち個店の利益率を比べてみたところ、大きな差があることに気づいたんです」
FC化したところは規模のメリットを生かして、メーカーから安く商品を仕入れることができていた。しかし、個店の場合はそうはいかない。だとしたら、組織ショップ化して自分たちもスケールメリットを享受できるようにするべきではないか。谷口さんはそう考えて、2010年に「アンド・いしかわ」を設立した。
最初は5社でのスタートだったが、メーカー系列の卸販売会社であるパナソニックコンシューマーマーケティング(PCMC)に背中を押されて加盟を申し出るところや、経営者自らの意思で参加を希望する店舗が集まってきたことから、合計10社(10店舗)の組織ショップとなった。谷口さんがオーナーを務める①アンド・たにぐちのほか、②アンド・やまだ③アンド・ふくおか④アンド・おおさき⑤アンド・つじ⑥アンド・わかでん⑦アンド・スミダ⑧アンド・はとや⑨アンド・いわい⑩アンド・やまはたの合計10社が現在、名を連ねている。
「グループ全体で目指しているのは、『お客さま満足』を追求して地域一番店になること。お互いに協力し合いながら、各加盟店が地域一番店になれるように努力していくことをスローガンに掲げています」
いま全国のパナソニックショップが販売に力を入れている商品には、洗濯機、冷蔵庫、エアコンなどの白物家電に加えて、太陽光発電システム、エコキュート、IHクッキングヒーターなどの「オール電化・リフォーム商品」がある。それらの商品を、いわゆる「御用聞き営業」に代表される地域密着型のサービスを通じて販売していくことに「アンド・いしかわ」の各加盟店が取り組んでいる。
各加盟店の状況を本部で把握
谷口さんは「アンド・いしかわ」を設立した際、加盟店ごとにバラバラだった決算月を3月に統一するとともに、「月次決算」の実践を各店のオーナーに求めたという。その狙いは、各加盟店の「経営の見える化」にあった。グループ全体で同じ目標に向かって進んでいくためには、各店がお互いの経営状況をオープンにすることが不可欠だと考えたのだ。
「これにより、はじめて組織ショップとしてのスタート地点に立てたような気がします」
ただ、ひとつ問題点があった。「アンド・いしかわ」という組織ショップ全体の業績を正確かつスピーディーにつかむことができなかったのである。その一番の理由は、仕訳のやり方がそれぞれのお店で微妙に異なっていたことにあった。要するに、「どの費用をどの勘定科目に入れるべきか」ということがまるで統一されていなかったわけである。だから、各加盟店の数字を単純に合算するだけでは、グループ全体の数字を正確につかむことは難しかった。
この状況を改めるきっかけにしたいとの思いから、やがて谷口さんはTKCの財務会計システム『FX4クラウド』を全加盟店に導入することに踏み切る。これに伴い、システムコンサルタントとしてTKC全国会に所属する会計事務所が、各加盟店における『FX4クラウド』の活用支援にあたることになった。
「その結果、同じ勘定科目、同じ会計処理方法がそれぞれの加盟店に行き渡り、グループ全体の業績がタイムリーに把握できるようになりました。また、クラウド型のシステムであるため、本部で各加盟店の状況をいつでもパソコン画面で確認できるようになった点もうれしかったですね」
月次決算がスピーディーに
「アンド・たにぐち」の店舗内
実は、谷口さんが『FX4クラウド』を選んだのは、パナソニックショップが使っている「パナ情報Vシステム」と簡単にデータ連携できるところも大きなポイントだった。パソコンレジと接続することで販売管理をおこなえるのがパナ情報Vシステム。そこに蓄積された取引データを、ボタンひとつで『FX4クラウド』側に仕訳入力することが可能なのだ(仕訳読込テンプレート機能)。これによりデータ入力の作業が大幅に軽減できる。
加盟店のひとつ「アンド・ふくおか」(加賀市)の3代目・福岡善行さんは、「毎月5日に締めたあと、10日までには会計事務所の巡回監査のもとに月次決算を行うようにしています。仕訳入力の手間が省けるようになったおかげで、今まで以上にスピーディーに月次決算ができるようになりました」と話す。
すべての店が10日までに月次決算書(貸借対照表、損益計算書)を作るようにしているのは、毎月15日ごろに実施するグループの「戦略会議」で使う資料を制作するうえで、必要になるからだ。
「各店の業績を横断的に見られる『決算概況書』というオリジナル帳表を作っています。会議ではこの資料を見ながら経営改善などについて検討します」(谷口さん)
どの加盟店も月次決算書の提出期限を守ることができているのは、オーナーの夫人を中心とした経理担当者の間に存在する一種の「連帯感」によるところが大きい。データ連携では抜け落ちてしまう細かな仕訳データ(売り上げ、仕入れ、入金以外)を日々きちんと入力しているからこそ、10日までに間に合わせることができるのである。
各加盟店の業績を〝同じ尺度〟で把握できるようになった今日、「アンド・いしかわ」グループの経営計画は以前よりも精緻なものになっている。バラバラの条件で作った決算書をもとに策定していた単年度計画にもとづいていたころは、それを理由に目標達成の意識が希薄だった加盟店のオーナーもいまや言い訳できない状態になっている。「目標達成に向けてみんなの気持ちが引き締まったのは確かです」と谷口さんはいう。
5回目の「方針発表会」を開催
今年2月、「関西の奥座敷」とも評される加賀温泉の老舗ホテルを会場に、「アンド・いしかわ」の「2016年度方針発表会」が開催された。各加盟店の社長、子息(2代目)、経理担当の夫人、従業員などに加え、PCMCや信販会社の担当者なども出席。2016年度の「行動計画」「基本方針」「店別販売計画」などの発表に、多くの人が耳を傾けた。
方針発表会の後半では、各加盟店から2016年度に向けての決意発表があった。そのときに谷口さんは自身が経営する「アンド・たにぐち」の決意表明として、こんな内容を口にした。
「当店の経営課題は、『人手不足による訪問活動不足』『リフォームの提案不足』『男子従業員の採用および育成』です。その課題を解消するために、①男子従業員の早急な採用②月間目標軒数に基づく顧客訪問活動の実施③瓦版(チラシ)によるリフォームのPRに取り組んでいくつもりです」
自分の店の経営力向上だけでなく、本部長として「アンド・いしかわ」全体の底上げにも使命感を燃やしている谷口さん。地域社会に根を下ろした「街のでんきやさん」という業態を未来につなげるうえでも、さらなる頑張りが期待される。
企業情報
「アンド・いしかわ」グループの本部としての役割も担う「アンド・たにぐち」の店舗
株式会社アンド・いしかわ
- 設立
- 2010年4月
- 所在地
- 石川県小松市打越町乙68
- 加盟店数
- 10店舗
- 監修
- 税理士 芦川浩士(TKC東・東京会)
- 石川県支部担当リーダー
- 税理士 南 一栄(TKC北陸会)
税理士 山崎勝彦(TKC北陸会)
税理士・公認会計士 池水龍一(TKC北陸会)
税理士 三由充宏(TKC北陸会)
税理士 宮西邦夫(TKC北陸会)
税理士 池田孝人(TKC北陸会)
(『戦略経営者』2016年4月号より転載)