導入事例 CASE STUDY
有限会社しら河様
統合型会計情報システム(FX4クラウド)ユーザー事例
ウナギの高騰に負けない
企業体質を業績管理で築く
名古屋名物「ひつまぶし」の人気店の一つとして地元でも有名なのが、しら河だ。料亭をルーツにする同社のひつまぶしには、職人技が息づく。森田堅一社長(65)と森田大延専務の親子がいま注力しているのが、ウナギの高騰に負けない企業体質づくりだ。
名古屋市内に4つのうなぎ専門店を出す
──名古屋名物として知られる「ひつまぶし」が看板メニューだそうですね。
森田堅一社長
森田 ひつまぶしは、うなぎの蒲焼きを細かく刻んで、ご飯に混ぜ合わせて食べる料理です。もともとは、うなぎ店のまかない料理だったという説もあります。関東ではうなぎを蒸して食べますが、名古屋では蒸さずに焼き上げるのが主流です。外はパリッ、中はふっくらとしています。
──ひつまぶしのおいしい食べ方を教えてください。
森田 うちでは次のような召し上がり方をお勧めしています。
まず、ご飯にうなぎを敷き詰めた器をしゃもじで5~6回かき混ぜます。1膳目では、そのままお茶碗によそって食べます。2膳目でお好みの薬味(ねぎ、ワサビ、のり)を添えて食べ、最後の3膳目でだし汁を多めにかけて、お茶漬けにして食べます。
──『うなぎ和食 しら河』の特徴といえば……。
日比野久・顧問税理士 お値打ちなうえにおいしく、そのうえメニューも豊富なところだと思います。ポピュラーなひつまぶし(お茶わんに約3杯分)のほか、女性向けに量を少なくした「ミニひつまぶし」(お茶わんに約2杯分)などがあります。また、うなぎ以外の和食メニュー(刺身や天ぷら等)が充実しているところもよいですね。
『うなぎ和食 しら河』のひつまぶし
──もともとは「料亭」の仕事がメーンだったとか?
森田 料亭の仕事は「料亭大森」の名前で今も続けています。しら河・浄心本店の向かい側にある建物がお店です。昭和41年に建てたそのお店に併設された「うなぎ店」がやがて分離独立して、しら河になりました。さらにその後、大森としら河が合併し、しら河が存続会社となって現在に至っています。
ひつまぶしをメニューに加えたのは昭和58年からで、割引価格にして新規顧客を呼び込むキャンペーンを定期的にしながら、徐々にリピーターの数を増やしていきました。
──うなぎ店の売り上げが安定したのはいつ頃から?
森田 15年前くらいでしょうか。地元での知名度がそれなりに上がり、支店も出しました。
最近は、地元の人だけでなく、インターネットのグルメサイトを見て来たという県外のお客さまも増えています。特に土日は、県外の人がおよそ3分の1を占めます。
──現在のしら河の店舗数を教えてください。
森田 浄心本店(約75席)、今池店(約100席)、栄店(約60席)に、テークアウト専門の高島屋店(JR名古屋駅に隣接)を加えた4つです。
高島屋店で販売しているお持ち帰り用のお弁当については、うなぎの焼き方を工夫して、冷めてもおいしく食べられるようにしています。高島屋店の売り上げは、ほかのイートインの支店に肉薄するほどで、高島屋さんの暖簾の力を見せつけられています。
──昨今、うなぎ専門店を悩ませているのが、シラスウナギ(稚魚)の価格高騰だといいます。その影響はやはり大きいのでしょうか。
森田 ええ、特に昨年はウナギの価格が跳ね上がり、値上げせざるを得ない状況になりました。3割値上げすれば、来店客が3割減ることを覚悟しなければなりませんが、そうも言っていられないほどに高騰したんです。
──そうした中で集客力を高めるために工夫していることは何ですか。
森田大延専務
森田専務 もともとうちは料亭がはじまりということもあり、料亭で修行を積んだ料理人がうなぎも調理しているという感じなんです。お刺身や天ぷらなど、いろいろな和食料理を出せるところが当社の強みでもあるので、そこをもっと訴求していくことが大事だと考えています。
──これから夏場を迎えると、うなぎ屋さんは忙しくなりますね。
森田 土用の丑の日がある7月、8月は私たちにとって一番のかき入れ時です。そのための準備を今まさに整えているところです。
部門別業績管理が店舗スタッフの士気高める
──TKCシステムを使い始めたいきさつを教えてください。
森田 今から6~7年前に、日比野先生に税務顧問をお願いしたのがきっかけです。従来版の『FX4』を導入して、自計化できる体制を整えました。
日比野税理士 正直な性格の森田社長と、過去にさかのぼってデータの改ざんができないという正確性を大事にする『FX4』との親和性は高く、業績管理に欠かせないツールとして役立ててもらっています。
──おととし10月に『FX4クラウド』に切り替えたのは、どんな理由からだったのでしょうか。
森田 クラウドシステムであるため、サーバーを新しく購入しないで済む点にひかれたのが一つ。それと、BCP(事業継続計画)対策のうえでも有効だということもありました。クラウドの仕組みを利用して、データをTKC側(データセンター)で預かってもらえるので、仮に災害等で会社のパソコンがだめになったとしても、データは無事なのです。
日比野 久顧問税理士
日比野税理士 『FX4クラウド』なら、森田社長が見ているのと同じ画面を会計事務所のパソコンからもみることができます。2人で同じ画面を見ながら、電話であれこれ説明できるので便利ですね。
──部門別管理をされていると聞きました。
森田 ①浄心(本店)②大森(料亭)③栄④今池⑤高島屋⑥加工場⑦本部⑧ギフトの8部門に分けて管理しています。部門間の内部取引についてもしっかり計上しており、たとえば加工場から店舗に食材を移動する際には内部売り上げが発生します。
──部門別管理のメリットをどんなところに感じていますか。
森田 各店舗の売り上げや利益を正確な数字でつかめる点ですね。それぞれのお店の業績をもとに賞与の金額を決めたり、昇給の参考にもしています。
うちでは、各店舗の店長にある程度の裁量権を与えています。グランドメニューは別ですが、「季節料理」の類いについては、店長の判断で料理の内容などを決めてよいとしています。接客サービスのあり方についても同様です。われわれからあれこれ言うよりも、自主的に働いてもらったほうがみんなのやる気を引き出せるからです。ただし、その成果に応じてボーナス等の金額が変わってくるわけです。
──店舗ごとにはっきりとした数字の差が出てくるものなのでしょうか。
森田 今みたいにうなぎが高騰しているときはどの店も悪いですが、それでも各店舗の工夫しだいで差は出てきます。食材ロスを減らそうと努力しているお店や、パートさんのシフト管理を徹底して無駄な人件費をかけないようにしているお店は、当然、利益率がよいです。
森田専務 あるお店の料理長は、わざわざ日本海側まで自ら足を運んで新鮮な魚の仕入れルートを開拓してきました。その魚を使った料理はかなりご好評いただいています。こうした自主的な取り組みの積み重ねで、店舗間の差が生まれてくるのは確かですね。
「前年同月比」に着目して店舗オペレーションの質高める
──「マネジメントレポート(MR)設計ツール」を活用されているそうですね。
森田 横軸を「部門」、縦軸を「勘定科目」にした、独自の経営資料(スプレッドシート)を作っています。これを見れば、その月における各部門の売上高や人件費などがすぐに分かります。自分にとって見やすいオリジナル帳表が簡単に作れるのが、この機能のよいところです。
──特に意識して見ている数字は何ですか。
森田 飲食業を営むわれわれの場合、何と言ってもフード(材料費)とレーバー(人件費)ですね。そこは重点的に見ていく必要があります。また、それらの「前年同月比」も気になるところ。たとえば去年の8月第1週目の数字を参考にして、今年の仕入れや人の配置をどうするかを考えたりもしています。
──業績管理をするうえでの課題があればお聞かせください。
森田 実は、前月の試算表が見られるのが、1カ月半ほど経過してからなんです。というのは、取引数が多いこともあって伝票の入力作業が遅れがちだからです。これでも自計化を始めた当初よりはだいぶ早くなったのですが、ここを何らかの工夫をもって改善していかなければならないと思っています。
──今後はどうでしょうか。
森田 ウナギの供給が不透明ということもあり、はっきりしたことは言えませんが、そうした懸念材料がなければもう少し店舗数を増やしたいという気持ちはあります。
いずれにしても近い将来、息子に事業承継したいと思っているので、よい形でバトンタッチできるように社内体制を整えていきたい。それが一番の目標ですかね。
企業情報
有限会社しら河
- 代表者
- 森田堅一
- 設 立
- 1989年11月
- 所在地
- 愛知県名古屋市西区城西四丁目30-3
- TEL
- 052-522-8331
- 売上高
- 約15億円
- 社員数
- 約180人(パート含む)
- URL
- http://www.hitsumabushi.jp/
顧問税理士 日比野 久
日比野会計事務所
- 所在地
- 愛知県名古屋市名東区石が根町98番地 丸八ビル3F
- TEL
- 052-760-0291
- URL
- http://www.hibino-kaikei.com/
(『戦略経営者』2014年7月号より転載)