山二工業株式会社様

山二工業株式会社

統合型会計情報システム(FX4クラウド)ユーザー事例

2代目社長が創った利益を獲得できる社内体質

福井県北東部に位置する「奥越」地域。その中心部に位置する大野市で総合建設業を営むのが山二工業だ。近年は、バス、トイレ、キッチンなど住宅リフォームに力を入れる同社を切り盛りしているのが、2代目の山田拓郎社長(40)。TKCの『FX4クラウド』を活用しながら、利益目標の達成を目指している。

水回りのリフォームが地元住民に好評

──建築、設備、土木と幅広く工事を手掛けているそうですね。

山田拓郎社長

山田拓郎社長

山田 もともとは管工事・水道工事をメーンにしていました。しかし先代の父(山田二郎会長)が下請け体質から脱却したいと、元請けとして公共工事の分野に乗り出したんです。それで、公共施設の建築や、道路などの土木工事にも範囲を広げました。最近は、電気工事や住宅リフォームの仕事も積極的に受注しています。

──多岐にわたる工事ができるところが会社のPRポイントですか。

山田 ええ。地元(大野市周辺)で総合建設業を名乗っているところは、それほどありません。発注元のお客さんからすれば「山二工業に頼めば一通りのことをやってくれる」と一元化できるわけで、そこがうちの特徴にもなっています。

──具体的な工事実績をご紹介ください。

山田 学校の給排水設備工事や空調工事もそうだし、県外からも大勢の人が訪れる「福井県立恐竜博物館」の屋内給排水工事なども手がけました。近年は公共施設(市役所の庁舎等)の新築工事(空調・給排水設備)や、一般住宅の増改築なども数多く請け負っています。

──現在の経営戦略は?

山二工業株式会社

山田 公共工事の数が今以上に減ってもやっていけるようにしたいとの思いから、近ごろは民間工事、なかでも住宅リフォームの営業に注力しており、月に一度「全体営業の日」をもうけて、社員全員でチラシを配ったり、お客さまのもとを訪問しています。その効果もあって、バス、トイレ、キッチンなどのリフォームをコンスタントに請け負うことができています。また、昨年、LIXIL(住宅設備機器・建材メーカー)のリフォームチェーンに加盟し、「住まいコンシェルLIFA奥越」として地域密着の感謝祭やイベントを開催するなど、より充実したサービスが提供できるようになりました。

──公共工事と民間工事とでは、だいぶ勝手が違いますか。

山二工業株式会社

 

山田 違いますね。民間工事は、直接お客さまが喜ぶ顔を見ることができたり、別のお客さまを紹介してくれたりと、ダイレクトに反応を感じることができます。これは社員にとってもうれしいようで、やる気向上につながっています。とにかく、民間工事で必要なのは、お客さまの要望には即対応するなど、信頼や安心感を提供すること。それが何より大切ではないでしょうか。

──会社の歴史を教えてください。

山田 創業は1974年。地元の水道工事を主体にスタートしました。その後、インフラ整備や箱物の仕事にも進出。会社が大きく成長したのはそれからで、景気の良かった80年代後半に一気に伸びました。

松田一彦顧問税理士 先代の会長には強い上昇志向があり、常に上を向いて頑張ってこられました。下請け体質から元請け体質に会社を転換できたのは、その上昇志向のたまものでした。

──事業承継をしたのはいつごろ?

山田 いまから6年前です。実はそのころ、利益を思うように出せずにいて、このままいくと会社はまずい状態になることが目に見えていました。「社長に挑戦したい」と思ったのはそうした危機感があったからで、自分と弟の2人で会社を立て直そうと考えていました。

2階層の部門別管理で採算の良い仕事を見極める

──利益が出せなかった要因は何だったのでしょうか。

山田 景気が良かった時期と同じ経営をしていたのがまずかったんです。どんぶり勘定というか、「仕事をとればもうかる」という意識から抜け出せずにいました。実際、大きい仕事をとってきても、利益が思うように残らない。決して薄利な仕事ばかりを受注していたわけではなく、社内のコスト意識の低さに問題があったのです。

──代替わりを機に、そこにメスを入れようと……。

山田 そのために何に取り組んだかというと、一言でいえば業績管理の徹底です。以前からTKCの『DAIC2』(建設業用会計情報データベース)で自計化を行ってはいたのですが、「工事台帳」の機能を中心に使っているだけで、「利益を出すためにどうするか」といった業績管理のレベルには達していませんでした。そこで、松田先生に指導を仰ぎながら、それをできるようにしていったのです。

松田一彦顧問税理士

松田一彦顧問税理士

松田税理士 昨年、『FX4クラウド』に切り替えたのをきっかけに、「当期決算(着地点)の先行き管理」にも力を入れています。施工中の工事の進ちょく度合いなども勘案しながら、このままいくと利益目標を達成できそうだとか、もう少しスピードを早めないと目標に届かないなどといったことが決算前に予測できるようになりました。黄色信号が灯っているとわかれば、何らかの有効な打ち手を考えて目標達成に向けて全力を尽くします。

──『FX4クラウド』を導入した狙いは?

山田 きめ細かい部門別業績管理をしたいというのがありました。『FX4クラウド』の場合、複数の階層で部門別管理をすることができます。そこに注目したのです。

──現在の部門別管理の内訳は。

山田 まず、①建築②土木③電気④設備⑤LIFA(リフォーム)の5部門があります。さらに①建築の下に、「民間の元請け」「民間の下請け」「公共の元請け」「公共の下請け」の4部門をぶら下げるかたちで2階層の部門別管理をしています。

──そうしたきめ細かい部門別管理のメリットをどんなところに感じていますか。

山田 「採算の悪い仕事」と「採算のよい仕事」が、しっかり見極められるようになった点ですね。ちなみに採算が悪いのは土木。民間土木はともかく、当社の規模・設備では採算がとれない公共土木は撤退を考えてもいいほどで、現在は利益率のよい仕事しか取らないようにしています。他方、採算がよいのは設備とリフォーム。だから今はこちらの方に、営業活動の中心を置いています。

「仕訳読込テンプレート」で経営判断が迅速化

──他の業務システムと仕訳連携するための「仕訳読込テンプレート」を活用されているそうですね。

中村由美子総務部長 工事原価や請求書の管理ができる建設業者向けの「工事原価管理システム」と『FX4クラウド』をデータ連携させています。材料費、施工費、外注費、売掛金などの仕訳データは、従来は手入力で打ち込んでいました。ところが今は、ボタンひとつで『FX4クラウド』側にヒューと飛ばせる感覚ですね(笑)。だいぶ手間が省け、その分、ほかの仕事に時間を回せるようになりました。

山田 データ入力に時間を取られることがなくなった結果、月次試算表が出てくるまでの日数が短縮されたことは、ありがたかったですね。月初には試算表が見られるようになり、よりリアルタイムな経営判断が可能になっています。

──よく見ている帳表は何ですか。

山田 実は《365日変動損益計算書》をベースに社内で作成した、会議用の資料を一番よく見ています。本来は、幹部社員を集めて毎週月曜日の朝6時半からおこなう会議で使うためのものなのですが、売上高や利益率、着地点予測などの知りたい情報がコンパクトに記されていることから、こればかり見るようになりました。

──利益率を少しでもよくするために意識していることはありますか。

山二工業株式会社

山田 社員全員に利益に関して敏感になってもらうことです。良くても悪くても月次決算の数字を見せたり、予算を達成するための具体的な「行動目標」を示すなどして、それを促しています。とにかく社員全員がコスト意識を持っている会社は強いんですよ。質は良いけど価格の安い材料を仕入れようとか、当初の請負契約より工事費が上がってしまう恐れのある出戻り工事をいかに少なくしようかといった気持ちで働いていれば、おのずと利益率は上がっていきます。そんな社員が主導権を発揮できる会社にしたいものです。

──金融機関との関係はうまくいっていますか。

山田 非常にいいですね。松田先生の指導を受けて、毎月地元のメーンバンクに業務報告に出向いているのですが、最近は当社に信頼感や安心感を感じてくれているような気がします。「中小会計要領」に準拠した、正しい会計処理をしていることも評価を高める一つの要因になっているのかもしれません。

──今後の目標は?

山田 建設業にはまだまだ古い体質の会社が多いと言えますが、当社は新しい社内体制を整えて、一足先に「ホンモノ」の建設会社になれるよう頑張っていきたい。それによって、地元「奥越」をはじめ、社会に貢献できる企業になれたらと思っています。

企業情報

山二工業株式会社

山二工業株式会社

代表者
山田拓郎
創 業
1984年6月
所在地
福井県大野市春日161-12-1
TEL
0779-65-5231
売上高
6億3000万円(今期見込み)
社員数
21人
URL
http://yamani-k.com/

顧問税理士 松田一彦
松田一彦税理士事務所

所在地
福井県大野市本町8-17
TEL
0779-65-1426
URL
http://www.matsuda-management.com/

『戦略経営者』2014年6月号より転載)