不二商会 様

不二商会の皆さんと大橋博晶顧問税理士

統合型会計情報システム(FX4クラウド)ユーザー事例

7営業所からの分散入力で
リアルタイムに財務をつかむ

東京や埼玉を中心に、管工機材や住宅設備関連機器の卸販売を手がける不二商会。現在7つの拠点を通じて「地域密着」の経営をおこなっている。「新築だけでなくリフォーム商材の販売にも力を注いでいる」という網野芳郎社長(55)に、TKC『FX4クラウド』導入の決め手などを聞いた。

「地域密着」の経営を貫き取引先との信頼関係を構築

──住宅関係の建材の卸売業を営まれているそうですね。

網野芳郎社長

網野芳郎社長

網野 キッチン、バス、トイレといった水まわりの配管材料や、住宅設備機器がメーンです。それらを、まちの水道工事店や工務店に卸しています。エアコンなどの空調設備や、照明関係、ドアなどの建具も守備範囲としています。また大手住宅メーカーからの委託を受けて、新築住宅の給排水衛生設備工事の施工も手掛けています。

──会社を経営するうえでの「こだわり」といえば……。

網野 「地域密着」の商売を貫いているところですね。東京城北部や埼玉県南部、そして山梨県に合計7つの営業所を置いているのですが、それぞれの地域のお客さまと強固な信頼関係を構築しています。
 会社を設立してから今年10月でちょうど60周年を迎えました。各地の営業所も、その地域で何十年にもわたる商売を続けており、その長い歴史のなかで培った「信用力」こそが当社の武器になっているのは確かです。お客さまにしても、工事をするうえでモノ(建築資材)がないと困る。「どうしても今すぐほしい」ということもよくあるため、各地に拠点を置くことでスピーディーな供給に努めています。

──営業戦略上、とくに力を入れていることは何ですか。

水まわりの配管材料などを取り扱う

水まわりの配管材料などを取り扱う

網野 以前は新築物件に使う商材の注文が多かったのですが、最近はリフォーム関係が増えています。その需要を確実にものにしていくことに注力していますね。リフォームといっても、単純な増改築ではなく、「リノベーション」と呼ばれる大がかりな改修工事が増えているんですよ。
 また、いわゆる「提案型の営業」にも力を入れており、住宅メーカーから水道関係の修理工事を頼まれた際などには、パンフレットや提案書を必ず持参するようにして、その家の人に見てもらっています。すると、「ガス台がもう古くなったから、IHヒーターにしようかしら」とか「いまのお風呂はこんなに使いやすくなっているの?」といった具合に、見積もりを依頼されるケースが意外とあるのです。みなさん、古くなった水まわり等の設備に何らかの不満を日々感じてはいるものの、それを新しくするきっかけがないため、そのまま放っておくことが多い。われわれの提案営業がそのきっかけになればと思っています。

──会社の歴史を教えてください。

網野 先代の父(現会長)が1950年に上野で水道工事用材料の販売を個人ではじめたのがスタートです。その後会社組織にして、今から約50年前に拠点を板橋に移しました。高度経済成長の住宅建築ブームの波に乗り、会社はしだいに成長を遂げました。昭和40年代から50年代にかけては、埼玉不二(現在の蕨営業所)、不二商工(現在の足立営業所)、不二住器(現在の朝霞営業所)といったグループ会社をつぎつぎに設立していきました。
 私が社長に就任したのは、今から4年ほど前。それから間もなくして、グループ会社をすべて統合することにしました。各営業所の縦割り意識が強くなったことや、組織全体としてのスケールメリットの観点から、そうしたほうがよいと判断したのです。いずれも100%子会社だったので、グループ統合はすんなりと進みました。

──事業承継の直接のきっかけは?

網野 以前から事業承継の話は出ていましたが、父が「お前はまだその器じゃない」「経験が足りない」などと言って結局、先送りになってきました。いまでも「やる気がないようなら、いつでも俺が社長に復帰する」と口にしているくらいに事業に対する思い入れが強いのです。しかし「命尽きるまで」とは当然いかないし、会社の将来のことを考えてみてもこのあたりで代替わりが必要だと判断したようです。
 ある統計によると、創業してから50年以上続く会社はわずか3%ほどだといいます。100社起業したら、残るのはわずか3社。つまり、うちはその3社の中に入る希有な会社といえます。今後もさらに会社が続くよう、社長として頑張っていきたいと思っています。

「クラウド化」によりコスト面でもメリットが

──いまの経営環境はいかがでしょうか。

網野 自民党に政権が変わり、建設業界を取り巻く環境は少しずつ改善されています。板橋区の小中学校のトイレを和式から洋式にする公共工事の話も持ち上がっていて、うちにとってはビジネスチャンスとなり得ます。

──黒字経営を実現するために意識していることをお聞かせください。

網野 われわれ卸業者は、メーカーから仕入れた商品に粗利を乗せて、工務店などに販売するのが仕事。その粗利をどれくらいにするかは経営上の重要なポイントになるわけですが、だからといって不当に高い値段で売っていたら、販売先からの信頼を損なうことになります。つまり自分たちだけがもうけようと欲張ったところで、長い目でみればあまりいいことがない。とにかく商品の仕入先や販売先とお互いウィン・ウィンの関係を築いていかなければ、商売が回っていかないわけです。この辺りをどううまくやっていくかが、黒字経営を持続できるかどうかの分かれ目になるでしょう。言い方を換えれば、商品の粗利ないしは会社全体の限界利益率をどうするかが、経営上の大きな課題となるわけです。そうした限界利益率の推移などをタイムリーに把握するために活用しているのが『FX4クラウド』です。

──『FX4クラウド』を導入したのは昨年だったそうですね。

網野 ええ、それ以前は『FX2』を使っていました。TKCシステムを使うようになったのは、大橋会計にグループすべての税務顧問をお願いするようになってからです。
 最初から『FX4』を入れるという選択肢もありましたが、高額な専用サーバーを購入しなければならないなどコスト面の負担が大きかった。なので、そのときは最終的に『FX2』を選んだのですが、ここにきて『FX4』がクラウド化され、専用サーバーをわざわざ買う必要がなくなった。そうしたことから、機能性に長けた『FX4』の導入をあらためて検討したのです。

──『FX4クラウド』を実際に使ってみての印象は……。

網野 営業所ごとに『FX2』を入れていたころは、会社全体の業績をリアルタイムに把握することは難しかった。しかし、拠点ごとに分散入力できる『FX4クラウド』なら、それが容易にできます。それが一番うれしいですね。

大橋博晶顧問税理士

大橋博晶顧問税理士

大橋博晶税理士 網野社長は「会計」の重要性をしっかりと認識されていて、簿記に関する知識もお持ちなんですよ。

網野 会計の重要性については父から常々言われており、大学の学費を出してくれる条件も、日商簿記2級をとることでした。だから大学生になってすぐに2級をとってしまった。そのおかげで大学の必修科目だった簿記の授業で苦労することはありませんでした。
 大学卒業後、仕入れ先の会社に修行に出て営業を担当していたころはあまり簿記の知識は必要ではなかったものの、父親のもとに戻ってきて営業所長をするようになったら、営業所の業績を正しく把握するうえでも、取引先の与信管理をするためにも、決算書を読む力が要求されました。PL(損益計算書)だけでなく、BS(貸借対照表)についてもきちんと見ることができたのは、簿記の知識があったからといえます。

7つの営業所を部門別に管理する

──部門別管理はしていますか。

不二商会

網野 各営業所を部門に見たてて業績管理をしています。現在、(1)本社(2)板橋営業所(3)足立営業所(4)給装営業所(5)蕨営業所(6)朝霞営業所(7)山梨営業所の合計7部門があります。各営業所でやっている仕事はほぼ似た内容ですから、部門別管理によって各営業所のどんなところが良くて、どんなところが悪いのかが、はっきりと比較できる。部門別管理のよさはそんなところにもあります。

──よく見る帳表は?

網野 『FX4クラウド』の《変動損益計算書》の数字をもとにスプレッドシート上で加工した、社内で「簡易変動損益計算書」と呼んでいるオリジナル帳表を一番よく見ています。3期分の同月比が一覧で分かるようにしています。

──「仕訳読込テンプレート」の機能は使っていますか。

網野 今のところまだですが、販売管理に使っている他社のシステムがあるので、それとのデータ連動を仕訳読込テンプレートを用いて実現することを今後の検討課題としていきたいと考えています。

大橋税理士 データ連動できれば、わざわざ仕入れや売掛金のデータを2度打ちして『FX4クラウド』側に入力しなくて済むようになります。経理スタッフの作業負担軽減や、入力ミス削減の点からも前向きに検討していきたいです。

──最後に今後の抱負を。

網野 働きやすい職場環境づくりを推進したり、外部の人材コンサルタント会社の研修等を利用しながら、社員のモチベーション向上とスキルアップを図っていきたいですね。専門知識やマネジメントスキルだけでなく、その基礎となるビジネススキル、具体的には「人の話をきちんと聞く」とか「あいさつのしかた」などをもう一度鍛え直すことも重要な課題だと思っています。

企業情報

不二商会

不二商会

代表者
網野芳郎
創業
1953年10月
所在地
東京都板橋区高島平1-45-1
TEL
03-3936-1211
売上高
49億円
社員数
90名
URL
http://www.fujishokai.info/

顧問税理士 大橋義弘
税理士法人大橋会計

所在地
東京都板橋区小豆沢3-6-7 NK志村ビル7階
TEL
03-3966-0826
URL
http://1-oohashi.tkcnf.com/

『戦略経営者』2013年11月号より転載)