導入事例 CASE STUDY
恵那川上屋様
統合型会計情報システム(FX4クラウド)ユーザー事例
ブランドストーリーを創造し収益向上と地域貢献を両立
岐阜県東濃地方の木曽川沿いに展開する景勝地「恵那峡」。そこからほど近い場所に本店を置くのが、恵那川上屋だ。地元の銘菓「栗きんとん」で全国的にも名前を知られている和洋菓子店である。「農商工連携地域活性化ベストプラクティス」にも選出された同社の鎌田真悟社長(50)と、経理業務を担当する森紳一管理本部長に話を聞いた。
地元の素材を使っておいしい栗きんとんを作る
──地元産の栗を使った「栗きんとん」が大人気だとお聞きしました。
鎌田真悟社長
鎌田 おかげさまで、岐阜県内に7つある直営店に年間約65万人ものお客さんが訪れてくれています。
栗きんとんは、岐阜県東濃地方を代表する和菓子。栗を炊きあげてすりつぶし、砂糖を加えて「茶巾」のような形にしたものです。うちの栗きんとんの一番の特徴は、「超特選恵那栗」という地元産の高品質な素材を使っているところにあります。
──とにかく素材の良さを大事にしているわけですね。
鎌田 はい。このあたりは古くから栗栽培が盛んな場所で、そうした土地柄を背景に栗きんとんを売る和菓子店が数多くありました。しかし流通網の発展により、80年代以降、東京や大阪の百貨店に出店するお店が増えると、しだいに状況が変わってきました。加工量が多くなった結果、地元の栗だけでは足りなくなり、他県産の栗を卸売市場で大量に仕入れるのが当たり前になっていったのです。すると、地元の栗が安く買い叩かれるようになり、多くの栗農家がやる気を失っていきました。栗栽培をやめてしまう農家も増え、栗菓子の里だけど栗の里ではなくなってきたのです。
さらにもう一つ私が納得できなかったのが、他県産の栗を使うことで味が昔よりも明らかに違ってきていたことでした。これが果たして地元の「銘菓」と呼べるのか──そんな気持ちから、「ならばうちは地域の良い素材を使った良い商品を売る会社になろう」と考えるようになったのです。そこでまず私が最初に取り組んだのは、地元の恵那栗の品質アップを図ることでした。今から20年近く前の話です。
──その具体的な内容は?
同社の「栗きんとん」は、本社恵那峡店
など7つの直営店で売られている
超特選恵那栗は、枝を低く剪定して日照がより確保できるようにした「超低樹高栽培」などの条件で育てられ、大きさは普通の栗のおよそ2倍。それを当社が全量買い取っています。仕入れた栗は生のまま、あるいはペーストに1次加工して、「CAS冷凍システム」で鮮度を保ったまま長期保存。これにより1年を通しておいしい栗菓子の生産ができるようになりました。
ちなみに、栽培してもらっている栗の品種は全部で11種類。多くの農家に早生、中生、晩生までいくつかの品種を混合栽培してもらい、シーズン(8月下旬~10月中旬)を通して安定した収穫量を確保しています。
──その後どのようにして、栗きんとんの人気を高めていったのですか。
鎌田 販促にあたっては、地元のデザイナーに協力してもらいました。チラシやパッケージのデザインなど、目に見える発信物についてはデザイナーにすべて任せました。地道にチラシを駅前でまいたりするうちに、評判が評判を呼ぶかたちでしだいにお客さんの数が増えていったという感じですね。これはやはり、「地元の素材を使った地元のお菓子」というブランドストーリーに多くの人たちの共感が集まったからではないでしょうか。
もちろん、魅力的な栗菓子を積極的に開発していくことにも取り組みました。栗きんとんと長芋の練り切りを合わせた『里長閑』、水生地で栗きんとんをやさしく包み込んだ『栗観世』、干し柿と白あんの皮で栗きんとんを包んだ『天日果喜』など、四季を通して楽しめる商品をつくっています。和菓子、洋菓子、焼き菓子のジャンルでそれぞれ商品開発を進めてきたことから、点数は約10倍に増えています。
これらの商品を地元のお客さんが自宅用はもちろん、お土産用として購入し県外にも広めてくれたことにより、観光客のお土産としての需要も増え、会社の業績はだんだん伸びていきました。当初、年商1億円ほどだったのがわずか5年で10億円となり、前期は約20億円を計上するまでになりました。
髙木生顧問税理士 じつは恵那川上屋さんは、このあたりの栗菓子店としては最後発。にもかかわらず、最近は恵那川上屋さんが考案した新商品をまねするお店も出てくるなど、地域の菓子文化に“うねり”を与える存在として注目されています。
他システムとのデータ連携で仕訳作業の効率化を実現
──税理士法人イータックさんとのお付き合いのきっかけは?
鎌田 92年に本社機能をもたせた恵那峡店を出すにあたって多額の借金をしたところ、それまでお世話になっていた地元の会計事務所から見離されてしまった(笑)。年末調整を目前に控えた時期で困っていたときに泣きついたのが、以前から勉強会などを通じて顔見知りだった桐山(靖作)先生でした。その桐山先生の右腕として、当初から私たちの面倒を見てくれていたのが髙木先生で、勇退した桐山先生の後を継ぎ、いまは事務所の所長をされています。
──『FX2』から『FX4クラウド』に切り替えたのは、昨年5月とお聞きしました。理由は?
森紳一管理本部長
森 他社の仕入管理システムとの「データ連携」ができるところに魅力を感じました。従来は、仕入管理システムからプリントアウトした紙を見ながら事務員が『FX2』に手入力をしていましたが、『FX4クラウド』を導入してからは、「仕訳読込テンプレート」によって自動的に仕訳がなされています。
さらに、インターネットバンキングも容易にできるので、その意味でも業務の合理化になりました。
──クラウドコンピューティングならではの魅力をどんなところに感じていますか。
森 複数台のパソコンで同時にシステムを利用できるところですね。『FX2』では、会計担当者がデータ入力していると、ほかの社員が利用できなかった。しかし今は、たとえば会議の途中で社長から「これについて確認してほしい」と言われてもすぐにパソコン画面を開いて、業績管理に関するさまざまなデータを提供できるようになりました。
──「黒字経営を続けるための極意」といえば何でしょうか?
鎌田 経営計画にもとづく業績管理だと思います。利益目標などを掲げながら、その達成を目指して幹部社員や現場のスタッフが努力していく。その仕組みを作ることが大切なんです。
髙木生顧問税理士
髙木 鎌田社長は勉強熱心で、経営計画にもとづく業績管理の行い方についても独学で身につけて社長就任当初(98年)から実践されています。
鎌田 50歳を過ぎたあたりから、度胸とカンだけで会社経営をやっていてはダメだと意識するようになりましたね。少子高齢化が進む国内市場で、恵那川上屋が今後どんな商売をしていくかといった長期的ビジョンを従業員たちにきちんと明示するためにも、まずは経営者である自分自身がしっかりと勉強しなければならないと思っています。
2階層17部門に分けきめ細かい業績管理を実践
──部門別管理はされていますか。
森 2階層での部門別管理をおこなっています。まず1段目の階層に、(1)販売(2)製造(3)物流の3つの部門を置きます。さらに(1)販売の下に、実店舗7部門(本社恵那峡店、中央店、岐阜髙島屋店、二子玉川店など)と外商3部門をあわせた10部門をぶら下げています。そして(2)製造の下には、4つの工場を部門としてぶら下げるかたちで部門別管理をしています。こうすることで、それぞれの店舗や工場ごとの売上高や限界利益などの数字がつかめるとともに、「販売」全体や「製造」全体での数字も把握できるようになります。
──独自帳表をスプレッドシート形式で作れる「マネジメントレポート(MR)設計ツール」の活用を考えているそうですね。
森 はい、社内用のレポート資料を作るうえで活用したいと思っています。部門長がわかりやすいように、レイアウト等を工夫したオリジナル帳表を作ることを目指して、いま勉強中です。
──「会計」の重要性とはずばり何だと思いますか?
鎌田 「数字」で自社の経営を正しく判断できるところではないしょうか。数字の重要性については、幹部社員にもきちんと意識してもらいたいものですね。彼らの目標設定にあたっては、5W1H(いつ、どこで、だれが、なにを、なぜ、どのように)を基本にした数値目標を課して、私と数字でコミュニケーションできるように促しています。
──今後についてはいかがですか。
鎌田 現在、当社が使っている栗の量は年間で約150トン。それを300トンにして、売上高30億円にするのが以前からの目標です。そのためにも、会社のブランド価値をさらに高めていく必要があると思っています。
企業情報
恵那川上屋
- 代表者
- 鎌田真悟
- 創業
- 1964年6月
- 所在地
- 岐阜県恵那市大井町2632-105
- TEL
- 0573-25-2470
- 売上高
- 約20億円
- 社員数
- 約240名(パート含む)
- URL
- http://www.enakawakamiya.co.jp/
顧問税理士 髙木 生
税理士法人イータック
- 所在地
- 愛知県名古屋市中村区名駅4-14-16
- TEL
- 052-586-1897
- URL
- http://e-tax.tkcnf.com/
(『戦略経営者』2013年9月号より転載)