株式会社梶原乳販様

株式会社梶原乳販の皆さんと菅原顧問税理士

統合型会計情報システム(FX4クラウド)ユーザー事例

「会計」の重要性に目覚めた
どん底からの会社再建

明治特約店として乳製品等の宅配を手がける梶原乳販は、今から20年ほど前に、倒産一歩手前の状態まで追い詰められたことがある。そこから復活を遂げられたのは、梶原哲夫社長(69)と梶原幸子専務の夫婦二人三脚で、計数管理を重視した経営を実践してきたからでもある。

女性パート中心の「顔の見える」配達

――牛乳の宅配がメーンだとお聞きしました。

梶原哲夫社長

梶原哲夫社長

梶原社長 3万軒を超える一般家庭に配達しています。事業エリアは本社のある山梨のほか、東京、神奈川、長野、静岡にもおよび現在18店舗を展開しています。

――牛乳販売店というと家業的なイメージがありますが、それとはずいぶん違うようですね。

梶原専務 「家業」から「企業」への転身にいちはやく取り組んだのは確かです。「早朝配達をやめて昼間にする」「毎日配達するのをやめる」といった、従来の牛乳屋さんとは少し違うやり方を取り入れることで、社員がきちんとお休みをとれるようにしました。それと、約250名いる配達員のほとんどが女性パートであるのも当社の特徴といえます。

――配達員1人につき何軒くらいを受け持っているのですか。

専務 軽のバンに乗って1人で100軒ぐらいを回ります。週2回の配達が基本で、その場合3日分と4日分との2回にわけて専用の保冷箱に牛乳を入れていきます。

――牛乳はスーパーやコンビニでも手軽に買える商品ですが、宅配を希望されるお客さんのニーズはどこにあるのでしょうか?

社長 特にお年寄りについては、牛乳を宅配してくれるという利便性だけを求めているわけではないのです。配達員との何気ない会話だったり、安否を気遣ってくれる優しさも重要な要素となります。配達員を女性中心にしているのは、人と人とのぬくもりを提供していくうえでコミュニケーション能力の高い女性のほうが適任だと考えているからです。
 以前、こんな話がありました。ある高齢者の家で配達員が「こんにちは」と声をかけたものの返事がない。一度その場を離れたがやはり気になってすぐに引き返し、「おばあちゃん、大丈夫ですか?」とあらためて呼びかけたところ、この気配りにいたく感激してくれて地元の新聞に投稿までしてくれた。それが紙面にのったのですが、私としても本当にうれしかったですね。

――牛乳以外の宅配もされているようですね。

梶原幸子専務

梶原幸子専務

専務 特殊な乳酸菌の作用をうたった高機能ヨーグルトなどのほか、「プラスワン」の名前で生活雑貨や栄養食品等も取り扱っています。また4年ほど前からは自社製パンの宅配も始めていて、こちらは「パン工房みるく」として展開しています。生乳を生地に用いたロールパンや菓子パンなどが人気を集めています。注文を受けてから製造するため、売れ残りはゼロ。まちのベーカリーとは違って、売れ残り分を含めたコスト管理をしないで済んでいます。

――創業は1976(昭和51)年だったと聞いています。

社長 もともと私が牛乳販売の世界に足を踏み入れたのは、近所の牛乳店でアルバイトとして働くようになってから。そこでの働きが牛乳メーカーの明治さんに認められ、JR竜王駅周辺の70軒の配達先をもつ販売店のオーナーになりました。
 それから十数年間、売り上げは順調で順風満帆と思いきや、まさかの「事実」が発覚します。宅配のほか、地元スーパーに商品を卸す「量販」の仕事も手がけていたのですが、これが非常に薄利で、実はまったくの赤字だった。当時はまさにドンブリ勘定。倒産一歩手前になって、ようやくこの事実に気づきました。そこで月商3,300万円あったうち、宅配の300万円を残して、あとは切り捨てることにしたんです。それでも5,000万ほどの借金が残ったため、自宅をはじめ金目のものはすべて売り払い、一文無しにちかい状態に。しかしそれでは商品の仕入れができないため、弟に頭を下げて家や土地、田畑などの権利書を借りてどうにかお金を工面し、商売を続けられる見通しをつけました。91(平成3)年ころの話です。

宅配に絞り込むことで新たな道が開けた

――そこからどうやって会社を再建していったのでしょうか。

配達エリアは1都4県におよぶ

配達エリアは1都4県におよぶ

社長 「得るは捨てるにあり」という言葉がありますが、量販の仕事3,000万円を手放したことにより、結果的に新たな道が開けました。とにかく配達先の数を増やしていくしかないと、量販の仕事がなくなり時間に余裕のできた社員といっしょに営業に回ったり、ほかの販売店から権利を譲り受けるなどして、必死に頑張ったことで徐々に経営が上向いていったのです。
 ほかの販売店から権利を譲り受けたのは、車で1時間半ほどの場所にある増穂(現・富士川町)の販売店が最初でした。その店の奥さんから、ご主人が亡くなったため「事業を引き継いでもらいたい」との相談を受けたのです。近隣の販売店にお願いしてもどこも応じてくれなかったため、困り果てて私のところに連絡してきたそうです。片道1時間半ではとても採算がとれない。ふつうなら断るところですが、私が最初に取引したスーパーの社長から「利他の精神」(他人のためなら自分を犠牲にする)の大切さを教え込まれていたことを思い出し、人助けのつもりで引き受けることにしました。
 最初は「重荷だな」と思っていたのですが、配達を終えてそのまま帰るだけではもったいないと考え、帰り道に営業をするようになると、つぎつぎにお得意先が取れていった。点と点でしかなかった配達先がしだいに「面」になってきました。そんなある日、用事があった私に代わって、1人の女性パートに増穂コースをすべて任せてみたところ、立派にやり遂げてくれた。「家業」的な意識がまだあったそのころ、配達はパートには無理と思い込んでいたので目から鱗でした。これが一つの成功体験になったんですね。廃業を考えている販売店から権利を譲ってもらったり、積極的な営業で配達先を開拓しては、その配達の仕事を自分以外のだれかに任せる。これを繰り返していくうちに、しだいに事業エリアが山梨県以外の他県にも広がっていきました。

――TKCの財務会計システム『FX2』を導入したのは、会社再建に乗り出してから間もなくだったそうですね。

社長 ええ、再起を目指すわれわれを明治さんも応援してくれて、税務顧問として菅原先生を紹介してくれました。菅原先生の指導のもと『FX2』を導入し、遅ればせながら「会計」の重要性に目覚めました。

菅原初義顧問税理士

菅原初義顧問税理士

菅原税理士 牛乳の宅配は粗利が高い。配達先の軒数を着実に増やしていくと同時に、きちんと業績管理を行っていけば、会社の再建は夢ではないと思っていました。

社長 99(平成11)年には無事借金を返済。その後もさらに事業エリアを拡大していき、10年間で2億円だった年商を13億円を超えるまでに伸ばしました。

――おととしから『FX4クラウド』を活用されていますが、システムを切り替えた狙いはどこに?

社長 「複数階層化」した部門別管理をしたいというのが、最も大きな理由でした。

――部門の設定はどのようにされていますか。

専務 山梨、東京、神奈川、長野の4事業部をそれぞれ部門にみたてるほか、プラスワン(物販)事業部、パン事業部、本社営業、コールセンターも個別部門として設定しています。さらにその下の階層に、各店舗をぶら下げるかたちで重層的な部門別管理を行っています。

「ルート効率」を意識し経費削減に努める

――「1年前の今日」といつでも業績比較できる《365日変動損益計算書》はご覧になっていますか。

株式会社梶原乳販

専務 経費(変動費・固定費)の動きをチェックするための資料としていつも見ています。

――経費削減の工夫があれば教えてください。

社長 やはり「配送ルートの効率化」というのがまず最初にきますね。人件費や燃料費など、すべてに関わってきますから。配送ルートの見直しをシステマチックにできる社内体制を整えています。

――『FX4クラウド』には、自社独自の帳表が簡単に作れる「マネジメント(MR)設計ツール」の機能がありますが、活用されていますか。

社長 現時点においてはまだですが、毎月の実績と予算の対比を示した販売会議用の資料を作成しているので、その数字を『FX4クラウド』から自動的に流し込めるようなものを設計すれば、もっと便利になるかもしれませんね。

――今後の展望は?

専務 全国にはうちとは違うやり方でもっと広範囲に事業展開している販売店がありますが、地元密着を大切にしながら焦らずに業容を拡大していくことを目指しています。そして、雇用を通じて少しでも社会貢献できればいいなと思っています。

企業情報

株式会社梶原乳販

株式会社梶原乳販

設立
1998年11月
所在地
山梨県甲府市国母1-5-20
TEL
055-222-4747
売上高
約14億円
社員数
298名
URL
http://www.kajihara-nyuhan.co.jp/

顧問税理士 菅原初義
T・MACKS税理士法人

所在地
東京都千代田区岩本町3-9-9
TEL
03-5687-6570
URL
http://www.tkcnf.com/t-macks/

『戦略経営者』2013年4月号より転載)