事務所経営

FX4クラウドは税理士の存在価値を高めるクリエイティブなシステム!

【FX4クラウド活用編】税理士法人徳島 北條伊織会員(TKC四国会)
北條伊織会員

北條伊織会員

徳島県徳島市に事務所を構える北條伊織会員は、「関与先の経理担当者に光が当たるような支援がしたい」と語り、経理事務の省力化と「経営に役立つ資料」の提供に力を注いでいる。その大前提となる初期指導のポイントや、FX4クラウド推進の考え方などについて聞いた。

格好いい仕事がしたくてTKCへ移行 FXによる経理事務省力化がいつしか特技に

──地域性や関与先の特徴を教えてください。

北條 徳島県は、昔は船舶関係や林業、木工業、製造業が盛んでした。いまは、化学工業や電気機械が多いです。特徴的なのは、昔から四国の県民性を表す言葉として「讃岐男に阿波女、伊予の学者に、土佐の高知は鬼侍」(※)というのがあるのですが(笑)、その言葉の通りに徳島県はよく働く女性が多い土地柄。女性経営者も多いと思います。
 関与先では、小売、サービス、不動産業、建設業のお客さまが多く、若い経営者が多いです。また相続のご相談が多いですね。年間50件ほどご相談をいただくので、相続専門の職員が2人います。

※「香川県の男性は穏やかで、徳島県の女性はよく働き、情が深い。愛媛県には頭の良い人が多く、高知県には気性が荒く酒好きの人が多い」という言葉。

──開業までの経緯は。

北條 高校は進学校だったのですが、遊び回っていたのでセンター試験も受けさせてくれませんでした(笑)。それで大阪へ行き、ふと見かけたチラシに「開業税理士は年収1500万円」と書いてあったので、よし税理士になろうと(笑)。それで専門学校に通って、21歳の時に5科目受かりました。それから徳島に戻ってきて、5年間勤めて25歳のときに資格を取得。26歳のときに開業し、平成18年に税理士法人を組織しました。勤務時代にお世話になっていた事務所はTKC会員事務所でしたが、他社システム併用の起票代行型事務所だったこともあり、開業は他社システムでした。

──TKC入会のきっかけは?

北條 愛媛支部の兵頭弘章先生の関与先さんが徳島支店を出されることになり、徳島の若い税理士を探している──ということで、お声掛けをいただいたのがきっかけです。関与はTKCへの入会が条件でしたが、そのときは「お客さまが増えるから」という打算的な考えで入会しました。平成16年のことです。
 そんな不純な入会動機でしたから、2~3年は、あまりシステムを使っていませんでした。それが徳島支部ニューメンバーズ・サービス(NMS)委員会委員長のお役目をいただいて、当時四国会NMS委員長だった三好豊先生(現TKC四国会会長)や、愛媛支部のNMS委員長だった髙須賀敦先生(現全国会NMS委員会副委員長)と一緒に会務に参加させてもらう中で、「システムをきちんと使っていないと話についていけないし、いつまでも併用会員でいるのも心苦しいな」と思うようになりました。
 何より、税理士の仕事は記帳代行と税務申告しかないと思っていたのに、TKC会員の先輩方は、継続MASで経営計画を作ったり経営助言をしたり、私が経験したことのない仕事をしていて格好いいなと思ったんです。そこから本格的にシステム移行を進めました。いまは、TKCシステムを使っていただくこと、毎月の巡回監査の実施を顧問契約の大前提にして、納得いただけない場合は関与をお断りしています。

──システム移行で工夫された点を教えてください。

北條 他社システム利用時から、入力だけはお客さまにしていただいていたので、FX2に切り替えてもそれほど苦労はありませんでした。ただ、適時に正確な帳簿を作るために開発されているFX2シリーズは、他社システムと比較すると入力項目が多いので、負担に感じるお客さまも中にはいらっしゃいます。そこで、できるだけデータ連携を活用して経理担当者の負担が減らせるよう工夫していました。
 例えば、先にSXシリーズやPXシリーズを導入してもらい、FX2を導入したときに仕訳連携できるように工夫していました。具体的には「科目別課税区分」の機能を使い、取引を選択すると課税区分と元帳摘要が自動転記できるようにしています。また、インターネットバンキングを「絶対に入れてください」と、ほぼ強制していました(笑)。徳島県では「支店が遠い」との理由で通帳記入をしていないお客さまが結構多く、預金取引の起票が遅れていたからです。FX2シリーズに銀行信販データ受信機能が搭載されてからは、さらに入力作業を省力化できました。
 FX2の機能はフル活用しましたので、おかげで経理事務の合理化が特技になりました(笑)。いまは「TKCシステムまいサポート」もありますが、会計事務所からお客さまにお勧めして提供しているシステムなのですから、お客さまから「操作が分からない」と聞かれたら自分でご案内できるようにしたい。「どこに何の機能があるかくらいはしっかり把握しておきなさい」と、職員にも言っています。

創業1期目の会社にもFX4クラウド導入 「企業規模で線引きしない」と気づけた

──FX2を駆使されている北條先生ですが、FX4クラウドの導入も進んでいますね。

北條 現在、16件に導入しています。半分は新規導入、あとの半分は「階層別に部門管理をしたい」「科目が足りなくなってきた」という理由で、FX2からの切り替えです。うちの事務所でも利用しています。

──FX4クラウドを推進する基準はあるのでしょうか。

北條 年商などの基準はなく、基本的には、新規で法人のお客さまであれば、最初にFX4クラウドをご提案します。年商約5000万円のお客さまにも導入いただいています。

──システムラインナップの最良のものからご提案するということですか。

北條 それもありますが、企業規模が小さいからといってFX4クラウドをお勧めしないのは、「この人はこれくらいかな」と他人を評価しているような感じで、あまり気持ちの良いものではないなと。それに事務所経営のことを考えたら、導入いただける可能性を少しでも高めたい。その点でも、勝手な線引きや判断はよくないと思っています。
 でも、実は私も4年ほど前までは、「価格のことを考えると、企業規模の小さい会社にはFX4クラウドの導入は難しいだろうな」という先入観を持っていたんです。その考えを改めるきっかけをくれたのが、平成27年から関与している不動産会社の社長さんでした。
 当時創業1期目だったその会社の社長さんは、「小さな企業でも大企業と同じように月次決算がしたい」「5年で上場したい」と言われていました。半ば無理かもと思いつつ、「それなら、FX4クラウドというシステムがありますよ」と言ってみたところ、「そのシステム、CMで見たことあります。ぜひ使いたい」と。すぐに導入が決まりました。
 この社長さんは何でも前向きに取り組まれる方で、本当に大事なところにお金と時間をかけたいという方。1期目で目標だった年商5億円超を達成し、その後も順調に成長していまはグループ展開もされている優良企業ですが、いまだに社長室もないし、社員さんの机にも引き出しはなく、文房具は共通の引き出しに必要な数がしまってあるだけ。できるだけ社内のことはシンプルに、無駄を省いてその分お客さま対応に集中したいという考えの持ち主なんですね。
 私と世代・感性が近い方というのもありますが、こちら側が前向きなご提案をすれば、経営者もしっかり受け止めてくれるということに気づかせてくれた。この社長さんには感謝しかありません。

経理担当者には必ず「あなたの評価が上がるようにしたい」と伝える

──FX4クラウド立ち上げの段階で、意識されていることや工夫されていることは何でしょうか。

北條 設計・立ち上げは、ほぼ所内で行います。まずは、「社長が何を知りたいか」についてヒアリングします。社長が日々追いかけている数字は何なのか、どの部署の成績を気にしているのか。それと、「社長がこれからどうしたいのか」という社長の夢を必ず聞きます。「多店舗展開したい」「上場したい」など、社長が目指す将来像を最初に聞いておかないと、本当に社長が欲しい経営データを取り出すための売上設計や部門設計ができないからです。
 ただし、最初から完璧な設計はしません。早く軌道に乗せて最新業績の確認ができるようになることを最優先に設計して、徐々にカスタマイズしていくこととしています。
 次に、社内でどんな経営資料を作っているのかを確認します。というのは、経理担当者がエクセルで管理資料を作ることに多くの時間を割いている会社は結構多いんですよね。その点、FX4クラウドの「MR設計ツール」を利用して作れる資料があれば、経理担当者の作業時間を削減することができますから。
 これはFX4クラウドに限らないことですが、初期指導やシステム立ち上げ時に私がいつも経理担当者さんに言うのは、「あなたの評価が上がるようにしたいんです」ということ。社長は基本的に、よく売ってくる営業担当者や、黙々と頑張る技術者さんたちのことを評価しがちなんですよね。だからそういう人たちを優先的に雇おうとするし、給料の配分も必然的に高くなる。でも、経理担当者はずっと同じ給料という企業が多い。私は、それを改善したいんです。
 よく、会社の財務経営力向上のためには社長が会計を理解し、数字を「読める・書ける・話せる・見通せる」力が必要と言われますが、私は、そうした力は経理担当者にこそ必要だと思っています。経理担当者自身の財務経営力を上げて、「経営に役立つ資料」を社長に提供して、今月の数字と来月の見通しをしっかり話せるようになったら、社長もその経理担当者を評価してくれるようになるはずですから。

仕訳読込機能で大幅に省力化 「今まで何やってたんだろう」と感動の声

北條 ただし、「経営に役立つ資料」の大前提は適時に正確な記帳です。ですから私は、何よりも初期指導を重視しています。初期指導はほぼ毎週、長くても10日間隔で訪問するようにしています。初期指導は企業の状況にあわせた指導の仕方が必要ですし、同じ企業でも行くたびに新たな課題やご提案したいことが見つかるので、常に変化があってすごく楽しい──という個人的な好みも入っていますが(笑)。

──具体的には、どのように初期指導をされていますか。

北條 基本的に最初の3カ月は、財務会計をしっかり把握できるようになることをゴールにしています。毎日きっちり入力して、現金・預金の間違いを自分で発見・修正できるようになること、売上・仕入・人件費と、その会社にとって重要な経費を発生主義で計上できるようになること──これが3カ月間の目標です。この期間は入力日もチェックします。前日にまとめて入力している場合には、私はかなり怒りますね(笑)。
 1回目の初期指導で覚えてもらうのは、現金入力の仕方です。そして2回目は、預金入力の仕方。でもいまは銀行信販データ受信機能を活用すれば、預金入力はほとんど済んでしまいます。その後は、日々の現預金残高の確認の仕方を教えます。
 その次の段階は伝票入力になりますが、基本的には「1伝票型」か「5伝票型」で入力してもらうようにします。その後、売上・仕入の処理や、給与の処理を覚えてもらいます。また、消費税の処理では、「よく使うのは1(課税売上)と5(課税売上にのみ要する課税仕入)です。売上は1と覚えてください。3(非課税売上)と0(不課税取引)は、出てきたら教えます」とお伝えして、「科目別課税区分」の機能を使ってもらうようにします。課税区分コードと摘要欄が一緒に入るので、そのほうが早く入力できますから。
 給与は、必ずPXシリーズを入れてもらっていますから、給与の仕訳については、PXとの仕訳連携の仕方を教えるだけで済んでしまいます。特にFX4クラウドは読込機能が充実していますので、「仕訳読込テンプレート」機能を使うとそれまで数時間かかっていた仕訳の入力が瞬時に終わる。「今まで何やっていたんだろう」と、経理担当者は皆さん感動されます。

初期指導は「写メ」と動画を駆使して説明 ノウハウは経理担当者のスマホの中に

──仕訳辞書ではなく「科目別課税区分」機能を活用されているのですね。

FX4クラウド推進のポイント

  • 企業規模で導入対象を「線引き」しないこと。
  • 仕訳読込機能をフル活用して経理事務省力化を徹底すること。
  • MR設計ツールで「経営に役立つ資料」の提供を支援すること。

北條 実は、私は仕訳辞書反対派なんです(笑)。最初から事務所が仕訳辞書を全部作ってあげると、経理担当者が自分で間違いを見つけて修正する力が身につかないからです。ただ、もちろん使い方は教えます。「月末が土日の場合に必要な処理」というような分かりやすいタイトルで登録して、自分で考えながら使えるようにしてもらいます。
 あくまで「経理担当者が自分でできるように」が私の方針なので、事務所側で別途資料やマニュアルの類を用意することはありません。すべて現場対応です。込み入った説明が必要ならばホワイトボードに書いて写メを撮ってもらったり、私が画面を見ながら操作説明しているところをご自身のスマートフォン(スマホ)で動画に撮ってもらったりして、ご自分のスマホにノウハウをためていっていただきます。「分からない時はまずスマホ見てね」と伝えています。

──初期指導で、経理担当者の自立・自律を促すというわけですね。

北條 理想は、全てのお客さまについて、巡回監査のときに「今月も指摘事項はありません」という状態をつくること。『TKC会計人の行動基準書』に、巡回監査を省略しても良い条件が記載されていますよね(3-2-7⑪)。会計、商法、会社法及び税法等について高度の専門的知識を有する人が関与先内部におり、かつ会計処理を正しく実践する意思を有しており、内部統制が効いている──という三つの条件が定められていますが、究極的には、私はこの状態を目指したいんです。
 だからお客さまにも、「ご自分の会社で全部きっちり処理できるようになったら、いつでもうちの事務所を卒業してもらって構いませんよ」と伝えています。でもTKCシステムのすごいところは、顧問料+システムサポート料というかたちで関与先の離脱を防止してくれる仕組みになっていること。会計事務所としては、この仕組みは本当にありがたいことだと思います。

MR設計ツールで帳表をカスタマイズ 税理士の仕事をクリエイティブに!

──そうすると会計事務所の存在感発揮と付加価値アップがカギになりますね。

北條 そうですね。初期指導が済んである程度軌道に乗ったら、「経営に役立つ資料」提供の準備に入ります。最初にヒアリングした社長の考えを基に、今度はMR設計ツールの帳表設計に入ります。うちの事務所では、必ずお客さまから事務所用のIDとパスワードを発行してもらっていて、私が事務所で設計しています。MR設計ツールは初期指導と同じくお客さまごとの対応が必要になるので、私にとってはすごく面白い業務の一つです。
 実は私は手書きがすごく苦手で、メモ帳を持ち歩いてアイデアが浮かんだら書き留める、ということすらできないタイプ(笑)。思い立ったらすぐ行動したくなるタチなんです。大抵、社長が欲しがるデータの収集・分析方法のアイデアを思いつくのはふとした瞬間。その点、FX4クラウドは思い立ったらすぐにアクセスして、あれこれ試行錯誤できるのが良いですね。

──MR設計ツールでの帳表設計は、北條先生にとって非常にクリエイティブなお仕事になっているのですね。

北條 そうですね。MR設計ツールをお渡しするときはキレイにマクロを組んで、ボタン1発で瞬時に出るように気合を入れて設計します(笑)。社長が欲しがる「経営に役立つ資料」を、経理担当者が簡単に提供できるようになってほしいですからね。
 最近は「BSの部門別を見たい」と言われることが多くなってきました。支店単位で借金をしている場合や固定資産の処分等をした場合に、PLだけでなくBS上の細かい数字まで分かるほうが、出店や撤退の経営判断をするのに役立つということのようです。お客さまのニーズに合わせて経営に役立つデータをカスタマイズできるのは、本当に楽しいです。

FX4クラウドを活用して管理会計の世界でリードしていきたい

──現在の課題を踏まえて、今後の抱負をお聞かせください。

北條 今までFX4クラウドの立ち上げ・各設計は全部私が行ってきましたが、職員も成長してくれているので、これからは職員にも担当してもらえるようにしたいですね。それから、最近少し巡回監査率が下がっているので、所内体制を整えてもう一度上げたいと思います。
 中長期的には、もう少し「数」にこだわっていきたい。売上はもちろん、職員数や関与先数を増やさないと、どんなに良い仕事をしていても世の中に認知してもらえませんから。事務所の規模の拡大も視野に入れつつ、FX4クラウドをもっと活用して、管理会計の世界でお客さまをリードしていきたいと考えています。


北條伊織(ほうじょう・いおり)会員
税理士法人徳島
 徳島市昭和町8-46-20

(インタビュアー:SCG営業部 山田千津/構成:TKC出版 篠原いづみ)

(会報『TKC』平成31年2月号より転載)