税務官公署出身会員に聞く

「関与先拡大」で入会のメリットを実感 先輩会員に学び事務所を進化させたい

中元寺達也税理士事務所 中元寺達也会員(九州会福岡支部)
中元寺達也会員

中元寺達也会員

税務署勤務時代の後輩に勧められ入会を決意したという中元寺達也会員。入会後は税務官公署OBの会員増強や、「適正な申告納税の実現」のため書面添付等にも力を注いでいる。

税務署時代の後輩に勧められ入会を決意

 ──事務所について教えてください。

 中元寺 開業は平成20年、関与先は法人12件、個人29件です。職員は内勤をしてくれている妻だけで、巡回監査は私が担当し、不動産賃貸業など年一の個人のお客さまを除けば翌月巡回監査率は100%を続けています。

 ──退官までのご経歴をお聞かせください。

 中元寺 出身は福岡県ですが、国税職員に合格してから東京で研修を受け、そのまま東京国税局管内の税務署に配属されました。期別は普通科の41期です。
 最初の配属地が横須賀税務署で、その後、藤沢、鎌倉、平塚、横浜中と神奈川県内の税務署を転々としました。職種は主に所得税を扱う個人課税課で、その後東京国税局に配属され、法人や個人の税務調査に5年間携わり、相模原税務署を経て福岡に戻って、福岡税務署勤務の時に中途退官しました。

 ──特に印象深かった業務は何ですか。

 中元寺 一番大変だったのが、鎌倉税務署時代の「海の家」の実態確認です。当時はクールビズなどありませんから、7月の暑い中スーツにネクタイ姿で海の家を訪問し「帳簿はつけていますか?」「アルバイトの源泉徴収はしていますか?」と指導して回ったのですが、汗だくで革靴もボロボロになり署に戻ってきた私を哀れんだ署長が「明日は上着はなしにしよう」と言ってくれました(笑)。
 また東京国税局時代、誰でも知っているような大企業や有名人の税務調査に携われたことも印象深かったです。

 ──TKC入会のきっかけは。

 中元寺 平成15年に妻が体調を崩して入院し、看病のために1年間仕事を休ませてもらったのですが、もう一度同じ理由で休職し仲間に迷惑をかけるわけにはいかないので、比較的時間が自由になると思い、独立・開業を決意しました。
 TKCには税理士登録をした直後に入会したのですが、神奈川会の吉野広之進会員に勧められたのが直接の理由です。彼は神奈川県の税務署にいた時の後輩で、すでに退官してTKCに入会しており「辞めたら連絡してほしい」と言われていたのです。辞表を出してすぐに電話してみたらTKCシステムの特長やおおよその費用を教えてくれた上で、「だまされたと思って1回使ってください」と。「彼がそこまで言うなら悪いシステムではないはず」と考え、入会を決めました。

「はじめの会」が関与先拡大に役立った

 ──実際に入会していかがでしたか。

 中元寺 営業の経験はないですし、やはりちゃんとお客さまが集まるかというのが一番の不安でした。でも当時、福岡支部では「はじめの会」というニューメンバーズの集まりがあって、月に1回関与先拡大や事務所経営について情報交換ができたのは非常に参考になりました。
 また全国会の「ニューメンバーズフォーラム」や九州会の「ニューメンバーズの集い」などのイベントでも事務所経営のノウハウを学ぶことができましたし、支部主催の金融機関との交流会では地元銀行の支店長と面識ができて、その後お客さまを紹介いただけるようになるなど、TKC入会のメリットを実感しました。

 ──金融機関からはどのような会社を紹介されるのですか。

 中元寺 一番多いのが税理士に不満を持っている会社です。例えば、毎月顧問料を払っているのに節税対策をしてくれない、経営のアドバイスもない、申告納税の際も申告期限の2週間前になってから突然「税金は○○円ですから、納めておいてください」と知らせてくるだけ。
 支店長はこうした税理士への不満を聞かされるそうで、同じような会社はまだたくさんあるという話でした。紹介はありがたいと思う一方で、税務だけではやっていけない時代だと痛感しています。

 ──TKC九州会は税務官公署退官者の会員増強に力を入れているそうですね。

 中元寺 一昨年に黒岩延峰会長の呼びかけで、税務官公署退官会員による「会員増強特別プロジェクト」が発足しました。具体的な活動としては、九州会の各支部で専任者を決め退官者にアプローチするというものです。
 福岡支部でも、税務官公署出身会員数名で協力し、独立・開業を検討している退官者にTKCシステムの機能やサポート体制をお知らせするセミナーを開催しています。昨年は十数名の退官者に参加いただき、1名が入会しました。今年も7月末に開催する予定です。

大事なのは「適正な申告納税の実現」

 ──事務所経営にあたって重視していることを教えてください。

 中元寺 月並みですが、やはり信頼関係は大事ですよね。顧問契約を継続していただけたりお客さまを紹介いただけたりするのは信頼されているからこそだと思いますし、そのために、お客さまに限らず相談ごとや頼まれごとには可能な限り迅速に対応するよう心掛けています。
 もう一つは「適正な申告納税の実現」です。TKCシステムを利用するのはそのためですし、当たり前ですが個人的な飲食代などを経費にするのは絶対に認めません。よくお客さまに「先生は厳しいね」と言われますが、法律で認められる範囲の節税対策なら、前職の経験も活かしつつ最大限アドバイスをします。
 もちろん書面添付も実践しています。「税務署はこうしたことをチェックするんですよ」とお客さまにアドバイスすることで経理のレベルが少しずつ上がるし、社長の納税意識も高くなってきます。最初から完璧な添付書面を作ろうとするのではなく、「関与先を良くするツール」という発想で取り組んでいます。

 ──今後の目標をお聞かせください。

 中元寺 入会直後に、同じ福岡支部の先輩会員の事務所を見学させていただいたのですが、高い業務品質や職員育成など非常に参考になりました。私も諸先輩会員のように、より多くのお客さまと顧問契約を結び、事務所をさらに進化させていきたいと思います。

(TKC出版 村井剛大)


中元寺達也(ちゅうがんじ・たつや)会員
平成20年8月税理士登録、9月TKC全国会入会。
中元寺達也税理士事務所
 住所:福岡市博多区博多駅南4-2-10 南近代ビル9F
 電話:092-260-8355

(会報『TKC』平成27年6月号より転載)