事務所経営

会員同士のつながりがTKCの良さ 業務品質を高めて関与先に貢献したい

女性会員が語る

とき:平成25年10月1日(火) ところ:TKC東京本社

先輩会員や家族の支援を受けながらプライベートと税理士業務を両立しているという3名の女性会員に、TKC入会のきっかけや事務所経営の工夫について語り合っていただいた。

出席者(敬称略・順不同)
 角谷雅子会員(近畿京滋会洛南支部)
 高橋和枝会員(千葉会東葛支部)
 赤塚真三恵会員(東・東京会足立支部)

司会/TKC全国会ニューメンバーズ・サービス委員会
 委員長 田口 操会員(東・東京会)

座談会

目を輝かせて継続MASの画面を見る社長を思い出し入会を決意

 ──本日はお集まりいただきありがとうございます。まず自己紹介をお願いします。

 高橋 私は千葉県鎌ヶ谷市で平成17年に開業し、今年で8年目になります。職員は3名、他に行政書士業務の担当職員が1名います。関与先は55件、巡回監査率は約80%です。
 私は高校を卒業してからずっと水泳のインストラクターをしていまして、寝ても覚めても選手を育てることや妊婦水泳、障害者水泳の指導で頭がいっぱいでした。だから35歳まで税理士という職業すら知らなかったんです。
 ところが、たまたま職業適性検査を受けたところ結果が「税理士」だったので、事務局の方に「どこに行ったらなれるんですか? 高卒でもなれますか」と聞いたら「専門学校に行けば誰でもなれますよ」といわれたので、合格すると信じて勉強を続けました。
 そしてTKC会員事務所に勤めながら勉強を続け、13年かかりましたが、なんとか合格し独立しました。

 角谷 私は高校を卒業してから進路に迷っていて、大学に行く強い目的がなかったのでとりあえず何か資格をとろうと思い、地元の広島県福山市の専門学校に進学し税理士を目指しました。4年かけて無事合格し、TKCが主催する合格祝賀会に行ったことがきっかけで、広島県府中市内の田邉知士会員の事務所に就職しました。
 そこで4年ほどお世話になったあと、都会に出ようと思って大阪の会計事務所に転職したのですが、そこは他社システム利用による記帳代行型事務所だったんです。やはり記帳代行業務になじめなくて、1年ほどで退職して平成16年に京都で独立しました。
 現在開業9年目ですが、スタッフは科目合格の主人と女性職員が2名。そのうち1名は税理士であり、当事務所が最初に担当してもらった元TKCのSCGの方です。関与先は30件で、全社FX2継続MASを導入しています。

 赤塚 私は皆さんとは違いⅢ型会員で、父(和田政雄会員)が経営する和田会計事務所に勤めています。昨年4月に税理士登録し、9月に入会しました。
 大学卒業後は損保会社に就職し経理部で法人税等の申告業務に携わっていました。5年後に結婚退職した後は専業主婦として4人の子育てに専念していたのですが、7年前、下の子供が幼稚園に入園したのを機に父の事務所に内勤として入所しました。実は大学時代に税理士試験の科目合格をしていたので、人生のけじめとしてもう一度トライし資格を取得しました。
 職員は巡回監査担当者5名と、内勤が2名。また最近公認会計士の弟が私と同じⅢ型で入会したので、所長の父とあわせて10名の事務所です。

 ──皆さん、最初に勤めたのがたまたまTKC会員の事務所ということで、自然に入会したのですね。

 高橋 私は単純に使い慣れているシステムがいいなと思って入会しました。
 勤めていた事務所では、新しいシステムを導入すると所長に分厚いマニュアルを渡されて「これを読んで進めなさい」と指示を受けるだけだったので、職員の立場でTKCの本当の良さはわからなかったんです。入会してみて、会員同士のつながりや研修制度を知って「こんな組織だったのか」とびっくりしました。

 角谷 私はTKCシステム、他社システム、両方の事務所での勤務経験がありましたので、開業時にはどのシステムを使用するか正直迷いました。記帳代行の事務所はすごく業績が伸びていて、それなりのニーズはあったと思います。
 でも以前勤めた事務所で関与先の経営計画を立てた時、目を輝かせて継続MASの画面をのぞき込む社長の姿が強く印象に残っており、やるならTKCだと思い入会を決意しました。他には飯塚事件を描いた『不撓不屈』(高杉良著・新潮社)を読んで「こんな人がいたなんてすごいな」と思っていたことも理由の一つです。

 赤塚 当事務所は昭和46年の開業ですが、開業2年目に父が飯塚毅初代会長のセミナーを聞きにいったんですね。そこで飯塚初代会長のバイタリティに感動し、その日のうちに入会を決めたそうです。懇談会で「そのエネルギーはどこから来るんですか」と質問すると、「カルシウムをとっているから元気なんだ」と言われたらしくて、私が幼少の頃から食卓には謎のカルシウムのサプリが並んでいました(笑)。

出産・育児を経験したおかげで業務の効率化を図ることができた

 ──皆さんの事務所の特徴をお聞かせください。

高橋和枝会員

高橋和枝会員

 高橋 私は最初から女性税理士であることをアピールしようと思っていたので、事務所名も女性であることがわかるようにフルネームを入れて、名刺や看板もピンクで統一。開業当初は、よく産婦人科や会員制ナイトクラブに間違われました(笑)。職員も女性だけです。女の子はいるだけで明るくなるから、仕事は大変ですが朝から事務所に行くのがすごく楽しみです。
 職員は大切にしたいと思っていて、パート職員でも社会保険を完備していますし、私が引退する時に備えて退職金制度も取り入れています。

 角谷 開業当時は主人と二人だけでしたので、何でも話せる一方、言い過ぎてけんかをすることも(笑)。良い面も悪い面もありました。今の女性職員はそれぞれ子供が二人いて、私も二人出産しているのでやはり子供の話題が多いですね。
 出産後は本当に大変で、自分には育休がないので事務所にベビーベッドを置いて母乳を与えながら仕事をしていました。現在女性職員の一人が育休中で、もう一人も育休から復帰したばかり。経営者としては職員に休まれるのは大変ですが、自分の経験があるので、応援してあげたいという気持ちでいっぱいです。
 もちろん、そうした応援が可能なのは、オールTKCで業務が標準化されていて、休んでいる期間でも他の人がスムーズにカバーできることも大きいと思います。
 また、子育てしている女性は効率をすごく考えるので、それが仕事に活かせることもあります。例えば6時には必ず保育園に子供を迎えに行かないといけないので、それまでの時間の配分や作業のやり方を工夫しないといけない。それは女性の強みかなと思います。

 ──当事務所にも育休の職員がいるのでよくわかります。
 ニューメンバーズ・サービス委員会(NMS委員会)のフォロー活動で特に印象に残っていることはありましたか。

 赤塚 昨年、入会直後で何もわからない中、ニューメンバーズフォーラムに参加しました。その時は小旅行気分で気軽に行ったのですが(笑)、熱のこもった講演に驚きましたし、また同時に行われた事務所見学会でも、震災の被害にあった会員から「事務所のことよりまず関与先のために行動した」という言葉を聞いて「私も見習わないといけない」と痛感しました。
 他にも、机の上の山積みになった書類を片付ける「事務所美化計画」や、業務改善提案に対してポイントを付し奨励金を支給する制度など「なるほど」と思ったことはどんどん実践しています。

 高橋 千葉会NMS委員会主催の事務所見学会で、東北会の中田庄吾先生の事務所にうかがいました。私はよその事務所を見たことがなかったので、職員さんが休憩する部屋を設けていたり、ペーパーレス化して袖机を置かないところなど私の常識が覆される体験ばかりで、まさに「目から鱗」でした。
 他にも、ニューメンバーズフォーラムのグループディスカッションで知り合った方が『TKC会報』などに載ると「あの人も頑張っているんだ」とすごくうれしいんですよね。そうしたニューメンバーズ会員の活躍に刺激を受けています。

職員採用では基本的な能力を重視 研修には積極的に参加してもらう

 ──関与先拡大について、事務所での取り組みをお聞かせください。

 高橋 開業当初は、近所に飛び込み営業していました。『事務所通信』を持って訪問すると「職員さんなの?」とか「税理士が営業するなんて聞いたことない」と驚かれましたが「最近開業しましたのでよろしくお願いします」と言って、『事務所通信』を渡してくるんです。
 大抵はすでに顧問税理士がいましたが、「この人は必ずいつか関与先になる」と信じていると、不思議なことに本当に顧問税理士が引っ越したり廃業したりして、移ってきてくださるんですね。
 あとは、金融機関からの紹介も多いです。女性の社長だと「女性税理士がいい」と要望する方が多いそうで、そんなとき声をかけていただけます。

角谷雅子会員

角谷雅子会員

 角谷 私はこれまで積極的な拡大は取り組んでこなくて、ほぼ100%関与先の紹介です。あとは事務所主催の経営支援セミナーを開催した時、関与先が知り合いの社長を連れてきてくれて契約に結びついたということはありました。
 拡大に積極的でなかったのは、サービスの質を落とさないためには、自分がしっかり見られる関与先数で十分だと思っていたからです。ただ現在は職員も増えましたし、やはりTKC会員だからこそできるサービス、例えば「記帳適時性証明書」の決算書への添付もそうですが、そうしたメリットを1社でも多くの中小企業に提供したいという思いが強くなり、自らの使命として積極的な拡大が必要と考えています。

 赤塚 所長は少し保守的なところがあって、事務所HPを見た経営者が電話で問い合わせてきても「どんな人かわからないから」と断ってしまうんですよ(笑)。でもHPは重要な拡大ツールなので、最近リニューアルしました。例えば所長は写真が趣味なので「写真館」のページを新しく開設したり、職員紹介のページにみんなの似顔絵を載せるなど、親しみを持ってもらえるように工夫をしています。
 今は種まきの段階なのでそこから関与につながった事例はまだありませんが、今後も続けていきたいと考えています。

 ──職員育成についてはいかがですか。

 角谷 TKCはとにかく研修が充実しているので、職員が受けたいと思う研修はすべて受講してもらっています。
 職員の一人はまだ簿記の勉強を始めたばかりですが、最終的には巡回監査を担当できるようになってもらいたいので、私自身も勉強をしながら成長していきたいです。

 高橋 職員については採用基準を重視しています。条件を「簿記2級」にすると50人くらい応募がきて面接が大変なので、仕訳の試験を実施しています。内容は「車輌の買い換え」に関する難問で、簿記2級取得者や会計事務所勤務経験者でも10点満点で5点程度。でも実は点数は関係なく、実際はカンマを打てるか、数字を丁寧に書けるかなど、基本的な部分をチェックしています。
 TKCの研修については、私が重要度を勘案して「◎・○・△」の3段階に分け、「◎」は必須、「○」はできるだけ参加、「△」は時間に余裕があれば参加、という基準で受講してもらっています。

毎月の訪問日を確定することで翌月巡回監査率が向上

 ──巡回監査はTKC会員の基本業務ですが、翌月巡回監査率を上げるために工夫していることはありますか。

 角谷 私は社長自身が業績管理できることを最終目標にしてほしいので、初期指導でFX2を社長が見たくなるように設定することを心がけています。例えば、生産性分析や取引先別管理、口座別管理など、社長と話をしながらどういう情報がほしいのか確かめて細かく設定します。
 当然、経営計画も必要なので継続MASも全社で導入して、とにかく社長が随時チェックしたくなるように工夫しています。そうすることで社長の意識が高まり、巡回監査を楽しみにしてくれるようになります。

赤塚真三恵会員

赤塚真三恵会員

 赤塚 昨年の翌月巡回監査率は73%程度と低かったのですが、ここ1年くらいで90%前後まで向上しました。理由は、職員が巡回監査率をチェックして奮起してくれたこと。当事務所には巡回監査士が二人いるので、ProFITで事務所の翌月巡回監査率を見て「これではいけないな」と話し合ったそうです。
 私も担当を持っているので、関与先の状況に常にアンテナを張って、毎月しっかり訪問していきたいです。

 高橋 私は関与先ごとにあらかじめ巡回監査日を決めていて、例えばA社は毎月1日、B社は毎月10日など、日付か曜日で設定してしまうので、1年間どの関与先にいつ行くかが決まっています。
 以前は巡回監査日が月の後半に集中してしまい、関与先から「給料日が終わってからにしてください」などと言われると、どんどん遅れていました。しかし今の方法にして日程を分散してから、少しずつ改善してきました。

 ──千葉会は特に書面添付推進にも積極的ですね。

 高橋 本当に書面添付には力を入れていて、実施していないと千葉会にはいられません(笑)。ところが、私は書面添付がすごく苦手なんです。
 ある会員にアドバイスを受けたのは、「文面は職員に書かせて、添付書面を作成したらとにかく報酬を支払いなさい」ということ。そこで個人の申告書には5千円、法人なら1万円を手当として支給することにしました。
 内心「そんなことしても書かないだろうな」と思っていたら、意外と書いてくれて。もちろん私が最終的にチェックしますが、下書きしてくれるだけでもかなり助かりますし件数も増えてきました。

理念を継いでくれる後継者を育て職員と関与先の将来に責任を

司会/田口 操委員長

司会/田口 操委員長

 ──今後の課題を教えてください。

 角谷 業務品質を高めながらの関与先拡大です。拡大ばかり考えると業務品質が疎かになる可能性があるのでその点は気をつけながら、少しずつ増やしていきたい。いま赤字企業が非常に多いので、当事務所とかかわることで1件でも多く黒字企業を増やしていければと願っています。

 高橋 とにかく毎日が忙しいこと(笑)。TKCはもちろん、税理士会や協同組合、商店街など毎日朝から晩まで飛び回っているので、この状態を何とかしてもっと事務所にも目を向けたいですね。
 あとは私も年齢的にそこまで長く続けられないと思いますので、職員、あるいはTKC会員の中から「一緒にやりたい」という方を後継者として事務所を存続させていきたいです。職員と関与先の将来を責任のある形で守っていきたいと思います。

 赤塚 非常につきあいの長い関与先が多いので、節度を保った良好な関係を築くことです。気心が知れた仲でも、ちょっとした言葉遣いや行き違いで離れてしまうこともありますので、お互い「なあなあ」とならないようフォローしていきたいと思います。
 当事務所は私と弟の二人の後継者がいることが強みなので、今後は父が築いてきた地域密着型の成熟した事務所経営に加え、私たちのカラー、例えばママ友達がちょっとしたことでも気軽に質問に来てもらえるようなアットホームな面を打ち出していきたいですね。

 ──ニューメンバーズ会員、未入会税理士へのアドバイスをお願いします。

 高橋 私はパソコンが苦手なのですが、担当のSCGが本当によくやってくれて助かっています。こうしたSCGのフォローもTKCの良いところ。TKCには尊敬する女性会員、頼りがいのある先輩がたくさんいらっしゃるので「一人で悩んでないでぜひ門を叩いてください」と言いたいですね。

 角谷 私がTKCに入会して一番良かったのは、事務所の経営方針を「このやり方で間違いないんだ」と迷いがなくなったことです。私もニューメンバーズの時先輩会員に多くのことを教えていただいたので、ニューメンバーズの皆さんも遠慮せずに先輩を頼ってください。

 赤塚 一緒に切磋琢磨できる仲間ができたことが一番心強いです。私もパソコンが苦手ですが、担当SCGは私を厳しく育ててくれていますし(笑)。
 TKCは研修が充実していて、税法やシステムだけでなく、マナーや話し方など若い職員向けの研修などもあります。そういった研修は「参加して吸収したもの勝ち」。所長をはじめ職員みんなで受講し自分達の力にすれば財産になるし、それもTKCの大きな魅力だと思います。

 ──中小企業の経営支援者としての税理士の役割が期待されています。認定支援機関としての皆さんのますますの活躍を期待しています。

(構成/TKC出版 村井剛大)

(会報『TKC』平成25年11月号より転載)