税務官公署出身会員に聞く
退官者のネットワークを組織し、東北会独自の会員増強に取り組む
猪股敏夫税理士事務所 猪股敏夫(東北会宮城県支部)
猪股敏夫会員
平成16年に退官し、同じく国税OBであった叔父が開業した事務所を承継した猪股敏夫会員は、国税退官者に対するTKCからの情報提供が不足していると感じたという。自身の体験等を活かし東北会で独自に取り組む会員増強活動について聞いた。
叔父の事務所を三代目として承継
──国税当局の勤務から入会までの経緯について教えていただけますか。
猪股 秋田県出身で、仙台国税局の普通科24期です。国税庁派遣監察官・国税不服審判所審判官・酒田署長・厚生課長などを経て平成16年7月に会津若松署長で退官しました。当事務所は昭和47年6月に叔父である初代所長が開業した事務所です。叔父も国税のOBです。私は退官を機に三代目として平成17年4月に事務所を引き継いでいます。
初代所長の時代からTKC全国会に入会していたため、私も自然に入会しました。国税に勤務していた時代も、TKC会員事務所が指導している法人は税務調査での非違事項が少なく、監査が適切にされているなという印象がありました。
現在事務所は私以外に監査担当3名、内勤2名がおります。月次監査対象の関与先は法人28件、個人18件です。翌月巡回監査率は90%を維持していますが、自計化はまだ37%で、継続MASや書面添付の件数なども少なく、まだまだ課題を抱えている事務所です。
入会してはじめてわかる付加価値
──入会する前と入会した後で印象が異なる点はありますか。
猪股 TKC全国会に入会して1年ほど活動に参加してみて、国税勤務時代に抱いていたTKCの印象と実態が大きく違うことに気がつきました。勤務時代も『TKC会報』には目を通していましたが、それだけでは実態はよくわからず、TKCといえばシステムの利用を中心とした団体というようなイメージでした。実際には充実した研修体系や会員相互の交流があり、地域会の会員やTKCの社員による事務所経営のフォロー体制が整備され、システム利用にとどまらぬ様々な付加価値があると感じています。
TKCは料金が高いと聞いたことがありますが、1年間、あるいは複数年のスパンで見れば決して高いものではありません。初期コストだけでの比較や、ランニングコスト、ハードを含めたリース契約等、料金比較の視点が違っているのだとわかりました。
まず「開業」という壁を越えてほしい
──退官者会員のネットワーク作りに取り組んでおられるそうですが。
税務官公署退官者会員増強連絡会の
支部代表委員委嘱状
猪股 先ほどのような「入ってはじめてわかる」ということもありますが、根本にはTKCのことを知ってもらうための情報提供が十分でない問題があると感じていました。そしてその状況を打開するために、退官して開業する予定の税務職員向けにもっとTKC側から情報を発信する仕組みを作らなければいけないと考えていました。
入会して1年経った頃、私が東北会のニューメンバーズ・サービス委員になったこともあり、退官者向けにDMを送付して「開業準備セミナー」を開催しました。このセミナーは運営も国税OBの会員を中心に行いました。そうした実績をもとに、さらに組織拡大を図るため、東北会ニューメンバーズ・サービス委員会に「税務官公署退官者会員増強連絡会」を設置することを提案し、理事会の承認を得て正式に設置されました。この「連絡会」の活動は、東北会会長から委嘱された東北各県の国税OB会員に参加してもらっています。人脈を通じた退職予定者の情報収集や、セミナーへの参加の声掛けが主な活動です。
──入会された退官者会員の動向はいかがでしょうか。
猪股 毎年何名か入会していますが、退会している方はいないので、皆さん頑張っていることと思います。最近は事務所を承継するケースが増えていて、私のような親戚関係の話だけでなく、独立開業後に後継者不在の事務所から声を掛けられて承継している人もいます。
──これから開業される方へのアドバイスをお願いします。
猪股 退官しても開業しない方が増えています。お客さんがゼロの状態でも、TKC全国会に入っていれば研修を受けたりセミナーの講師をやる機会をいただいたりと意外と忙しく、自分を磨いていくこともできます。開業していればお客様の紹介といった話が来ることもあるし、まず開業するという一つの壁を越えてみていただきたい。お客さんがいないので目先の出費を気にするのはわかりますが、お客さんが来てからシステムを選んでいては遅いし、「ウチはTKCシステムでやります」と決めて、まず受け皿を作ることが大事なのではないでしょうか。
そして入会したら、TKCの活動に参加することが自身のレベルアップ、ひいては安定した事務所経営につながると思います。
(TKC出版 蒔田鉄兵)
(会報『TKC』平成25年6月号より転載)