税務官公署出身会員に聞く
先代の協力とTKCシステムの活用で税理士法人をスムーズに承継
税理士法人北川会計 代表社員税理士 四條秀男(静岡会島田支部)
四條秀男会員
税務署を退官後、総勢12名の税理士法人北川会計を承継した四條秀男会員。入所から3年後の今年の1月から所長(代表社員税理士)に就任した。税理士法人承継の経緯や事務所経営全般について語った。
退官後3年で税理士法人を承継
──税務官時代のご経歴を教えてください。
四條 昭和49年に名古屋国税局の採用となり、昭和50年に静岡税務署の法人源泉部門(当時)に赴任して以来33年間、主に税務署と国税局で法人課税部門の仕事をしました。そのうち2年間は税務広報広聴官として租税教室で小・中・高校生に講義をしたり、マスコミ対応、広報番組の制作などに携わりました。調査の仕事では接点のなかった人たちに対し、それまでと違う視点で税務業務を伝える経験が特に印象的でした。
──税務署を退官されてから、どのような経緯で税理士法人北川会計を承継されたのですか。
四條 先代の北川浩三会長が随分前から後継者を探していて、税務署の先輩からお誘いを受けたことがきっかけでした。お話をいただくまで、そのタイミングで辞めようとはさらさら思っていませんでしたが、勤続30年以上経ったこと、北川会長と直接お話したことで2週間で決意が固まりました。
承継が決まってから分かったことですが、実は平成2年頃に特別調査官として調査した企業で、1度だけ北川会長とお会いしていたのです(笑)。私はこの辺りを管轄する島田署に配属されたことはなかったので本当に偶然ですが、今思えばその時からご縁がありましたね。
──承継はスムーズに進みましたか。
四條 はい。平成19年7月に静岡税務署の特別国税調査官を最後に退官し、8月に税理士登録と同時に、最初は副所長として入所しました。その時退職した職員がいたので、担当をそのまま引き継いで業務を覚えていきました。初めて使うTKCシステムということもあり、私にとっての研修期間でもありました。正式に所長(代表社員税理士)になったのは、入所から3年5ヶ月後の平成23年1月。北川会長は70歳を契機に交代したいと考えておられたようです。
──承継で大事なことは何でしょうか。
島田駅から車で5分程の大通りに面する税理士
法人北川会計。市内には、「世界一の長さを
誇る木造歩道橋」の蓬莱橋がある。
四條 先代、職員とよく話し合ってお互いが分かり合うことではないでしょうか。私の場合入所前の半年間、事務所の研修に参加して、職員とのコミュニケーションをとるようにしました。それから、やっぱり先代のご協力が一番大事ですね。一代で築きあげた事務所ですから、言いたいこともあるのではないかと思いますが、そこは割り切って任せていただいているので本当に感謝しています。
「FX2がないと仕事になりません」
──TKCシステムにはすぐになじめましたか。
四條 TKCシステムの使い勝手のよさは抜群です。FX2は、関与先の約6割に入っていますが、使っていくうちに素晴らしさがわかり入力の操作も簡単なので、TKCシステムがないと仕事になりません。
今年から、所内で巡回監査率やTKCシステム導入などの目標を設定しました。巡回監査率は約95%なので、100%を目指して個人ごとに目標を設定し進捗状況を確認しています。職員が多いので、OMSの所長メニューで書面添付の状況や巡回監査率を把握するようにしています。
──なぜ所内でそのような目標設定をされたのですか。
四條 目標がないと下がるのは簡単ですよね。税務官の時にTKC会員の関与する企業を調査するときは、「データ処理実績証明書」や月次の試算表を必ず見せてもらっていました。いまは「記帳適時性証明書」もあります。また、調査で意見聴取を行った経験から、逆の立場になってみて書面添付の重要性を実感しています。
個別の課題もたくさんあります。TKCシステムでは、FX2(.NET版)への移行や巡回監査支援システムの活用のために、関与先の自計化率を引き上げていくことが重要です。
坐禅で自分を見つめ直し新鮮な気持ちに
──事務所独自の取り組みはありますか。
四條会員と先代の北川会員
(現、税理士法人北川会計会長)
四條 北川会長が続けてこられた事務所の坐禅会を継続して開いています。月に1度吉田町にある能満寺に行って、お線香1本が終わるまで坐ります。これは、事務所として何十年も続けてきたことだそうです。自分を見つめ直し新鮮な気持ちにもなれるので、これからも続けていこうと思っています。
──税理士としての目標と事務所の未来像を教えてください。
四條 今後も関与先の黒字経営をサポートしていくために、巡回監査を基本にKFSを実践し、税務当局、金融機関などから信頼される事務所作りをしていきます。
職員には、仕事はもちろん大切ですが、家族との時間や自己研鑽の時間も充実してほしいと思っています。坐禅もそうですが遊びでも読書でも何でもいい。そういった経験が仕事に活きてくることが必ずあると思います。先代のときからアットホームで離職率も低い事務所です。続けていく限り必ずまた承継をしなければならない日がきますので、そのときはぜひ事務所の職員に継いでもらいたいと思っています。
そして、新規の関与先を増やしていくこと。そのためにはまず、事務所経営を安定させることがいまの私に課せられた一番の使命だと思います。
(TKC出版 益子美咲)
(会報『TKC』平成23年9月号より転載)