税務官公署出身会員に聞く
前向きな仲間と切磋琢磨して事務所は日々成長しています
川原孝行会員(九州会福岡支部)
川原孝行会員
勤続30年、50歳という人生の節目の年に税務官公署を退官し、税理士事務所を開業した川原孝行会員。総合力を高めて自然に関与先が紹介されるような事務所をめざすという川原会員は、TKC入会のメリットを「前向きな仲間と切磋琢磨できること」と語った。
「人生は一度きり」と開業にチャレンジ
──退官前のご経歴を教えてください。
川原 期別は普通科37期です。勤続30年のうち通算17年は福岡、熊本、東京などの国税局での勤務となり、全国に仲間ができました。特に総務課税務情報専門官当時の同僚とは、今でも連絡を取り合い、情報を交換しています。
──開業に踏み切った理由は何ですか。
川原 病気をきっかけに、「人生は一度きりである」ということを深く認識したことが影響しています。これからの自分の生き方について悩んだ結果、税務官公署に勤めて30年、年齢も50歳と区切りもよいのでここでリセットし、別な人生にチャレンジしようと決心しました。
──TKC入会のきっかけは?
川原 国税局勤務時に『TKC会報』を読んでいたので、TKC全国会の活動は知っていました。当時から「自利利他」の理念や「巡回監査の実施」、「自計化の推進」といった点には共感するものがあり、またTKCマークの入った申告書はしっかりしているという印象があったので、開業したらTKCにしようと考えていました。
──現在、事務所で特に力を入れていることは何ですか。
川原 「巡回監査の体制強化、質的向上」です。巡回監査はすべての基本ですから、ここは強くしていかなければなりません。
その先にある書面添付については事務所の業務品質向上にもつながるので、確実に件数を増やせるよう努めています。開業して3年目となり、今年は書面添付できるお客さまがさらに増えると思います。
福岡支部の「ブラザー制度」に感謝
──実際にTKCシステムを使われてみていかがでしたか。
川原 マニュアルや虎の巻の存在もさることながら、間違った入力・判断へのチェック機能が充実しているので、安心して申告書が作成できます。特に電子申告については最高のシステムだと思います。ただ、TKCシステムは法令に完全準拠しているため、改定のスピードが速く、ついていくのが大変ですね(笑)。
──支部等からはどんなサポートを受けましたか。
川原 福岡支部には「ブラザー制度」というものがあり、入会時におおいに活用していました。これはニューメンバーズ会員が地元の先輩会員に、電話などで何でも相談できるという制度ですが、私の担当は福岡支部長である桑原平磨会員で、システムなどで分からないことがあったらすぐに相談していました。ときには職員の方に駆け付けていただいたこともあり、大変感謝しています。ブラザー制度にかかわらず、支部の先輩会員には事務所経営上の相談に乗っていただきました。
もちろんTKCのSCG社員の皆さんにもシステムの疑問点等にすばやく対応してもらっています。
自然に紹介が来るように事務所力を高める
──事務所設立以来、関与先拡大に力を入れていると伺っていますが、何か心がけていることはありますか。
川原 関与先拡大を目指すのはもちろん大切ですが、それよりも経営者の方に満足してもらえるサービスを提供できる事務所になることが先決だと思います。
というのは、開業間もないときは初期指導が徹底できなくて、せっかくFX2を導入しても事務所で入力したり、関与先の社長さんに自計化の意義を十分理解してもらえずに他の会計事務所に移られたりするケースがあったからです。
そうした反省のもと「初期指導の充実・徹底」を掲げ、お客さまに満足していただけるサービスを提供するために、さまざまな研修に参加し、先輩が良いと言われることを素直に取り入れる。そしてお客さまに指導することはまず自分の事務所で実践することを心がけています。
また、事務所の理念の構築、外部研修への参加、事務所のSWOT分析、週1点改善運動などにも取り組み、業務レベルの底上げを図っています。その結果、自信をもってお客さまを指導できるようになりました。このように事務所力をアップし、自然と新規関与先を紹介されるような事務所を目指しています。
──退官後に開業を考えている方に何か助言できることがございますか。
川原 開業当初は不安でしたが、TKCに入会して研修を受講し、先輩会員と交流を深めるにつれて、どうにかやっていけると思えるようになりました。
中には「TKCはコストがかかる」といった声もありますが、システムの信頼性や使いやすさ、SCG社員のサポート体制、各種研修や情報の充実などを考えれば決してそんなことはありません。最後は、本人が「どれだけ税理士を本気でやるか」という覚悟に掛かっていると思います。
TKCの素晴らしい点は、会員同士が事務所見学等で惜しみなくお互いのノウハウを交換していることだと思います。このような「自利利他」の理念を共にした前向きな仲間と切磋琢磨しながら事務所を日々成長させることができるのは、TKCならではのメリットだと思います。
(TKC出版 渋田正和)
平成19年8月税理士登録と同時にTKC入会、9月1日開業。関与先件数は法人23社、個人10件。53歳。
川原孝行税理士事務所
福岡県筑紫野市原田7-2-11 パインテールHARUDA2-D
(会報『TKC』平成22年9月号より転載)