事務所経営

業務を「見える化」し、お客さまとの対話につながる書面添付

目次
竹添義之会員

竹添義之会員

令和4年9月にTKC入会、開業後4年で現在では月次関与先件数を120件にまで拡大している竹添義之会員。書面添付には入会直後から取り組んでおり、ニューメンバーズフォーラムの「書面添付実践表彰」では3年連続で表彰されている。TKC東・東京会の樋口貴夫書面添付推進委員長同席のもと、竹添会員に書面添付推進のメリットを含めて事務所経営への波及効果等について伺った。

■とき:令和8年4月14日(火)

不動産業界から転身後、『事務所通信』の徹底活用で関与先拡大

──まずは自己紹介も兼ねて、税理士を目指したきっかけやTKC入会の経緯についてお聞かせください。

竹添 もともと私は不動産業界で働いていました。不動産の営業を行う中で、税務や会計をあまり知らずに仕事をしていることに限界を感じ、「もうちょっと知識を深めたい」という思いから会計事務所業界に興味を持って、TKC会員事務所へ転職したのがきっかけです。そこでは17年ほどお世話になりました。

樋口 竹添先生はTKC東・東京会ですでに大活躍されていますが、異業種からの転身とは、知りませんでした。

竹添 実はそうなんです(笑)。入所からしばらくして30代後半になり「そろそろしっかり税理士資格を取ろう」と本格的に受験勉強を始めました。ただ、働きながらの受験だったので本当に苦労しまして、合格まで10年近くかかりました。まずは、簿記論、財務諸表論に合格し、働きながら4年間大学院に通い卒業、最後に消費税に合格して、令和3年12月に無事資格を取得できました。その後令和4年9月に開業し、同じタイミングでTKCに入会しました。

──開業直後はいかがでしたか。

竹添 当初は1人で事務所経営に取り組もうと思っていたのですが、多少前事務所から関与先を引き継がせていただき、事務員を雇いました。ただ、巡回監査などについていけず退職してしまったので、その後は「当事務所は巡回監査士や巡回監査士補などの資格取得を目指し、月次巡回監査を断行し、書面添付などの業務に取り組む会計事務所です」と方針を明確にして職員採用をかけるようになりました。
 また、開業してから1年ほど経った時期がちょうどインボイス制度導入のタイミングで、会計事務所による的確な情報が求められていましたから、関与先拡大の機会に恵まれていました。事務所のホワイトボードを使って、お客さまにインボイスの説明を一生懸命行っていたら、ありがたいことに関与先が増えて、休む間もなく働いていたのを思い出します。私にとっても職員にとっても日々の業務でホワイトボードは欠かせません。

──この部屋の大きなホワイトボードは印象的ですね。関与先拡大のきっかけは何だったのでしょうか。

竹添 関与先拡大のきっかけは、普段から紙版の『事務所通信』を持ち歩いていることが大きかったですね。当時はコロナ禍で、今よりは懇親会の機会が少なかったですが、立ち飲み屋などでばったり経営者にお会いした際には、名刺の次くらいに『事務所通信』をお渡ししていました。開業したばかりのニューメンバーズ会員ですから、事務所パンフレットを作ろうと思っても「開業何年目」といった実績等を載せられません。ですから、『事務所通信』が私たちの事務所案内代わりだったのです。
 初めてお客さまにお会いする際にも「毎月、『事務所通信』を活用し、税務・会計・経営などに関する最新情報を説明していますよ」とお伝えしていました。当時はインボイスに関する情報がたくさん掲載されていて、「ご存知ですか?」と情報提供することで非常に喜ばれました。
 『事務所通信』を活用すること自体が他の会計事務所との差別化にもなりますし、私は本当に『事務所通信』が大好きなんですよ。今は、紙版とデジタル版をニーズに応じて使い分けています。

日々の業務で欠かせないというホワイトボード

日々の業務で欠かせないというホワイトボード

顧客目線を何よりも大事に、スピーディーな対応を心掛ける

──顧問契約を締結する際に心掛けていることなどはありますか。

竹添 私は、会計事務所の仕事は「サービス業」だと考えています。私が尊敬している同じくTKC東・東京会の久野賢一朗先生もおっしゃっていますが、顧客目線が何よりも大事であると。この姿勢を所内でも徹底するよう心掛けています。お客さまに寄り添い、圧倒的なスピード感で対応するために、TKCチャットやメールなどをフル活用し、常に連絡が取りやすい環境を構築しています。初期指導の段階でFXクラウドに色々と入力していて分からないことが出てきたときでも、なるべく早く対応することで、サービスの質を向上させ、スピードを上げるよう心掛けています。

──現在の関与先件数についてお聞かせください。

竹添 現在、月次関与先件数は120件で、自計化導入件数が106件、そのうちFXクラウドシリーズが97件です。新しく関与する際は、最初から「会計システムはFXクラウドを活用し、逐一情報を共有させてください」とお願いしています。
 また、銀行やクレジットカードの明細を自動連携してもらうようにしています。インターネットバンキングの契約を推奨し、とにかく連携できるものを増やしています。FXクラウドを導入している関与先であれば、銀行信販データ受信機能ですぐにデータ連携できますし、未導入の関与先は半年くらいかけて徐々にFXクラウドへ移行していくイメージですね。

──FXクラウドに移行することで、事務所の生産性や付加価値はどのように向上していますか。

竹添 事務所側で入力作業をすると、巡回監査時に5分、10分しか経営者とお話しする時間が取れません。しかし、お客さまが入力し、私たちがFXクラウドで事前確認をする体制になれば、巡回監査時に経営助言をはじめとして、1時間ほど経営者との対話の機会を確保することができます。
 また、FXクラウドの巡回監査機能により、巡回監査時に記載した内容を複数人で確認できるため、書面添付の記載内容についても品質が高まり、税務調査も減るという好循環が生まれるので、どんどんFXクラウドへ移行するように意識しています。余談ですが、業績検討会などの際に、事務所の大画面のディスプレイでFXクラウドを開くとFX2(スタンドアロン版)とは異なる迫力があり、取引先別の売掛金なども見やすくなるため、お客さまに対しても、インパクトのある説明ができています。
 加えて、月に1回所内で会議を行っているのですが、そこでFXクラウドへの移行状況や書面添付の実践状況を各関与先ごとに確認しています。

累計で232件の書面添付に取り組み意見聴取が4件、税務調査は0件

──竹添先生は、開業当初から積極的に書面添付に取り組まれており、令和8年3月末現在で実践件数が88件に及んでいます。はじめに書面添付に取り組まれたきっかけは、何だったのですか。

竹添 実は、職員時代から書面添付が好きだったんです。というのも、書面添付を実践するのとしないのとでは、税務調査の件数が明らかに違うことを肌で感じていたためです。ですから、開業した際には「必ず書面添付を実践する会計事務所にしよう」と心に決めていました。
 担当関与先の件数が増えて、税務調査が入ると自分の時間が奪われてしまい、業務が回らなくなってしまいます。ですから書面添付は税務調査を減らし、自分の時間を確保するための「最大の防御策」として捉えています。ただ、記載した内容には当然責任が伴いますから、お客さまへの指導も一定の水準は保たなくてはなりませんし、その指導が結果的にお客さまの経理水準を上げることにつながります。また、開業時から「書面添付」の実践をお客さまへのアプローチとして積極的に考えていました。「私たちは月次巡回監査を行い、書面添付を実践する事務所です」と顧問契約の時から常にお伝えしています。TKC会員以外の会計事務所では、書面添付に取り組んでいないところも多いですし、それだけでも他事務所との差別化につながります。

──意見聴取や税務調査の状況はいかがですか。

竹添 これまで、累計で232件書面添付に取り組みましたが、意見聴取が行われたのは4件で、実際に税務調査に移行した件数は今のところ0件です。添付書面に、あえて税務署の方々が気にされそうなことをしっかり書いているのが影響しているかもしれません。

樋口 金融機関においては現場レベルの担当者だと、書面添付への理解がまだ浸透していないケースもあると思いますが、竹添先生とお付き合いがある金融機関担当者は理解がありますよね。

竹添 そうなんですよ。そういった担当者の方々の存在は非常にありがたいです。規模の大きい企業などは金融機関も非常に気にしているので、決算前には進捗説明をしますし、決算書類の提出とともに書面添付もつけてお渡ししています。日頃から付き合いのある信用金庫や地銀の担当者の方々は、書面添付の中身をしっかり見てくれます。そういう理解のある担当者と懇意になると、彼らが異動になった際にも、転勤先で新しいお客さまを紹介してくれたりするのです。書面添付を実践していることが「しっかり指導している事務所だ」という印象になり、紹介を生む好循環につながっています。

樋口貴夫TKC東・東京会書面添付推進委員長(左)

樋口貴夫TKC東・東京会書面添付推進委員長(左)

AIを積極的に活用しながらも、正しく判断できる職員を育成したい

──所内で書面添付を実践するにあたって、業務フローや職員教育はどのように行っていますか。

竹添 弊所では、入所の時から書面添付を標準業務として職員に伝えています。
 そして、添付書面を作成する際には必ず「書面添付文例データベース」を確認してもらうようにしています。内容としては、類似した他業種の文例を参考にしてもらいつつ、「どこでどのような事業を行っている会社か」、「今期の変動要素とその理由」、「来期の展望」の3点を必ず書くように指導しています。

──添付書面内容のチェック体制についてはいかがでしょうか。

竹添 巡回監査時や日々のやりとりで気付いた重要な事項については、FXクラウドの巡回監査機能やTKCチャットを活用して記録し、その内容を関与先ごとにExcelの管理表へ転記することで蓄積しています。そこから、スムーズに添付書面に記載できます。最終的には全ての添付書面を私がチェックするのですが、その前に必ず他の職員にも見てもらうようにしています。
 他の職員がどんなことを書いているかを共有することで、所内全体の添付書面の質の底上げにつながります。

──最近では会計事務所内でのAI活用も話題ですが、竹添先生の事務所ではいかがですか。

竹添 生成AIなどはフル活用しています。検索や文章作成の補助として非常に便利です。ただ、最終的にAIが作ったものを「人間の目」で確認しなければならないと思います。
 ですからAIが作成した情報が正しいかをきちんと判断できる職員に育成したいという思いがあります。省略できる作業はAIやTKCシステムをフル活用してどんどん自動化して、浮いた時間を経営助言業務等に充てるようにできればと考えています。

毎年の重点項目を明確にし入会後すぐにTKCバッジ会員へ

──TKC入会後すぐにバッジ会員になられるなど、書面添付以外にもあらゆる項目に取り組まれていますね。

竹添 すぐにTKCバッジ会員になることができたのは、当時の首都圏東SCGサービスセンターの方々による支援のおかげです。「竹添先生、あと少しでバッジ会員ですから頑張りましょう!」と、折に触れてエールをいただきました(笑)。SCGの皆さんには本当に感謝しているんですよ。
 また、弊所では、年度ごとに重点的に取り組む項目を決めています。例えば、令和4年9月に開業してから1年間はまず書面添付に取り組み、標準業務化を進めました。その後、令和6年は企業防衛、令和7年は継続MAS、そして今年は月次決算速報サービスに取り組んでいます。
 加えて、リスクマネジメント制度にも積極的に取り組んでいます。実は、書面添付と並ぶ私の「得意技」の一つでもあるのです。関与先には不動産会社もいらっしゃるので、例えば売買が成立した際の保険や、車をお持ちの関与先へご提案して、楽しく推進することができています。一般の税理士事務所ではいきなり損害保険代理店になるのは難しいですから、TKCの協働代理店方式を活用してのリスマネ推進は、すごくありがたいと感じています。

東京メトロ丸ノ内線・茗荷谷駅から徒歩約4分の場所に位置する竹添
義之税理士事務所。令和6年8月に現在の場所に移転。

東京メトロ丸ノ内線・茗荷谷駅から徒歩約4分の場所に位置する竹添 義之税理士事務所。令和6年8月に現在の場所に移転。

書面添付推進ツール等を徹底活用して事務所の付加価値向上へ

樋口 昨年、書面添付推進委員会では、書面添付推進ツールとして「書面添付推進チラシ」(書面添付未実践会員向け、経営者向け、金融機関向け)を提供したのですが、ご存知でしたか。

竹添 初めて知りました。書面添付制度の周知に便利ですね。

樋口 そうなんです。また、つい先日、新たな書面添付推進ツールとして「書面添付推進カード(名刺サイズ)」が完成しました。

竹添 名刺サイズというのが持ち運びに便利で素晴らしいですね。

──これらの推進ツールをはじめ、業種別法人税書面添付事例集(製造業)、書面添付の各種情報などがProFIT「書面添付」の推進サイトに集約されているのです。「書面添付推進チラシ」や「書面添付推進カード」は視覚的に訴えかけられるようになっています。

竹添 素晴らしいですね。チラシに関しては早速『事務所通信』に挟んで全関与先にお配りしようと思います。また、月次の所内会議の日に勉強会もしているので、そこで業種別法人税書面添付事例集を活用して添付書面の内容を深掘りしていく予定です。「書面添付推進カード」は名刺サイズでコンパクトですし、懇親会などで大活躍しそうですね。

──「書面添付連続提出表敬状」をはじめ、表敬状についてはご存知でしたか。

竹添 これも知らなかったです。弊所はちょうど3年以上連続で書面添付を提出している法人が増えてきているので、すぐにOMSから表敬状の申し込みをします。表敬状を関与先の応接室などに飾っていただき、「書面添付を何年も続けているのはすごいことなんだよ」とアピールする材料にしたいですね。
 「意見聴取結果についてのお知らせ」は関与先に大変喜ばれると思います。取得企業への表敬状についても、条件を満たしたら活用したいです。
 書面添付推進ツールも含めてこれらを徹底活用して、事務所の付加価値向上へとつなげていきたいと考えています。

地域会の書面添付研修に参加しまずは1件、書面添付の実践を!

──ニューメンバーズフォーラムの「書面添付実践表彰」では、3年連続でトップ3にランクインし表彰されるなど、めざましい活躍をされていますが周囲からのサポートも大きかったのでしょうか。

竹添 そうですね。TKC東・東京会は樋口先生や前任の書面添付推進委員長であった小城麻友子先生をはじめ、ニューメンバーズ会員に対して非常に親身に接してくださる方が多い素晴らしい環境です。先輩方のきめ細かいサポートがあったからこそ、私も安心して書面添付に取り組むことができました。件数を争うというよりかは、みんなで切磋琢磨して取り組む雰囲気がとても好きです。

樋口 小城先生は特にニューメンバーズ会員に対して大変きめ細かいアプローチをされていましたし、色んな先輩方が活躍を見て声をかけてくれるのも励みになりますよね。

──これから書面添付を実践しようと考えているニューメンバーズ会員や、まだ取り組めていない会員へ向けたメッセージをお願いします。

竹添 まだ書面添付を実践されていない先生方は、まず地域会の研修などに出て、先輩方のお話を聞いてみることをおすすめします。そして「まずは1件、自分で取り組んでみる」ことが大切です。書面添付のひな形は「書面添付文例データベース」などに揃っていますから、最初は売上の小さい会社からでも構わないと思います。とにかく一度書いてみて、添付書面の内容をお客さまに説明してみてください。声に出し、説明することで自らの業務を振り返ることができるでしょう。
 会計事務所の仕事は、数字だけでは何をやっているかお客さまに伝わりづらい部分があります。しかし、書面添付は、自ら取り組んだ仕事を文字で表現でき、見える化することができます。税務調査が減るというメリット以上に、お客さまとの対話のきっかけにもなりますので、まずは一歩、踏み出してみてほしいです。

──最後に、今後の抱負をお聞かせください。

竹添 私は開業してまだ4年目ですが、事務所を拡大でき、職員も増え、経営も安定してきたのは支えてくださった皆さまのおかげで、心から感謝しています。いつかは、お世話になったTKC東・東京会の先生方や、所属している東京税理士会の小石川支部へ、何らかの形で恩返しをしていきたいと強く思っています。TKCの素晴らしいシステムや書面添付制度を活用することで、経営が安定し、お客さまからも感謝される事務所を作ることができます。今後もTKCシステムをフル活用しながら税理士の4大業務である「税務・会計・保証・経営助言」に愚直に取り組んでいきたいと思います。

──本日は貴重なお話をいただき、誠にありがとうございました。

竹添 こちらこそ、書面添付推進ツールをたくさん教えていただき、ありがとうございました。明日から早速活用していきます!

(インタビュアー/TKC全国会事務局 高須亮二、構成/米倉寛之)

事務所概要
事務所名 竹添義之税理士事務所
所在地 東京都文京区大塚3-6-13 グランドメゾン茗荷谷2F
開業年 令和4年9月(同時にTKC入会)
職員数 7名
月次関与先件数 120件(法人110件・個人10件)
自計化導入件数 106件(うちFXクラウドシリーズ97件)
継続MAS予算登録件数 38件
書面添付実践件数 88件

(会報『TKC』令和8年6月号より転載)

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