特集

TKC全国会・株式会社TKC・日本政策金融公庫が連携協定の覚書を締結ー災害等の危機事象発生時に、円滑な資金供給を支援する新スキーム

目次
TKC全国会中小企業支援委員会 委員長 松﨑堅太朗

連携協定(覚書)締結の背景

 このたび、TKC全国会・株式会社TKC・日本政策金融公庫(以下、「日本公庫」)の3者において、災害等の危機事象発生時に、TKC会員事務所の関与先企業に対する資金供給を支援するための連携協定の覚書が締結されました。
 これまで、日本公庫では、地震や局所的な豪雨災害、コロナウイルス感染症等の危機事象発生時には、セーフティネット貸付や災害貸付といった様々な資金繰り支援を実施しています。とりわけ、コロナ禍において実施された「ゼロゼロ融資(無利子・無担保)」が、緊急資金繰り対策として極めて重要な役割を果たしたことは記憶に新しいでしょう。
 実は当時、株式会社TKCの飯塚社長は日本公庫に対し、TKC会員事務所の関与先については、複数関与先の必要書類をとり纏めて会員事務所から日本公庫に郵送することで「ゼロゼロ融資」の申込みが受付けられるよう提案頂いており、日本公庫がこの提案を受けて頂いたことから、我々TKC会員事務所はコロナ禍における関与先への資金繰り支援を滞りなく行うことができたのです。
 こうした過去の経緯から、近年増加傾向にある災害等の発生時に、TKC会員事務所の関与先企業に対して円滑な資金供給を実現するべく、3者による連携協定の覚書を締結することとなりました。

連携協定の概要

【覚書の目的([危機事象発生における業務連携に関する覚書」から引用]】
「危機事象発生における連携を行い、地域の事業者に対する円滑な金融サービスの提供を継続し、地域経済の復興・発展を図ることを目的とする」
 危機事象とは、「地震、津波、豪雨等の自然災害や感染症の発生等、地域経済に影響を及ぼす事象」を指します。本覚書の締結により、これらの危機事象の発生に備えた平時からの連携体制を整備するとともに、実際に危機事象が発生した際には、双方がそれぞれの支援機能を発揮することで、迅速な資金繰り支援を実施することが可能となります。

危機事象発生時の資金繰り支援スキーム

 日本公庫では、各地域で災害等が発生し、都道府県や市区町村において「災害救助法」が適用された場合、支店単位で「特別相談窓口」が設置され、これに伴い災害からの復旧を目的とした「災害貸付」の取り扱いが開始されます。
 なお、災害救助法の適用に至らない場合でも、地域経済に重大な影響を及ぼす事象(大規模火災、インフラ障害、感染症の急拡大など)が発生した際には、日本公庫が特別相談窓口を設置する場合があります。
 3者連携協定における資金繰り支援では、災害等発生時における「特別相談窓口」の設置を契機として、「TKCファストリンク」のスキームをベースとして災害対応の支援スキーム(「災害ファストリンク」)が利用可能となります。
 具体的には、日本公庫に災害等発生に伴う「特別相談窓口」が設置されると、即座に株式会社TKCに情報連携され、「災害ファストリンク」の取り扱い開始が、TKC会員事務所および関与先企業(FXクラウド利用ユーザ等)に周知されます。
 被災した関与先企業は、復旧・復興にかかる資金調達について、顧問のTKC会員事務所に相談することで、TKC会員事務所から日本公庫に必要書類をオンラインで事前送付(日本公庫ダイレクトを利用)することで、迅速な融資審査が実施されます。

下図「危機事象発生における事業者への迅速な資金繰り支援に向けた連携」参照

危機事象発生における事業者への迅速な資金繰り支援に向けた連携

必要書類や手続きを大幅に簡略化

 「災害ファストリンク」は、災害等の危機事象発生時の対応であることから、可能な限り、事前審査等で準備する書類等を省略することで、迅速な資金供給を実現します。
 これまでに日本公庫と取引がある関与先企業については、TKC会員事務所から必要書類を提出することで、ほぼワンストップで事前審査に必要な書類提出が完了します。また、日本公庫と初めて取引を行う関与先企業においても、OMSから出力する「関与先カルテ」を添付することで事前審査を可能とし、被災した関与先企業の書類準備等の負担を大幅に軽減できます。
 このような対応が可能となるのは、TKC会員事務所が日頃から月次巡回監査を通じて関与先企業の状況を的確に把握し、経営者と「顔の見える関係」を築いているからこそといえるでしょう。
 さらに、貸付限度額においては「TKCファストリンク」の3000万円の2倍となる6000万円とするなど、被災した関与先企業の復旧に向けて手厚い支援を行なうことが可能となっています。

「災害ファストリンク」を利用するためにも、まずは1件「TKCファストリンク」を使ってみましょう!

 3者の連携協定による「災害ファストリンク」は、まさに我々TKC会員事務所の取り組みに対する日本公庫からの信頼が結実した仕組みと言えます。自然災害等が増加している我が国において、地域中小企業の存続を支援することは、TKC会員事務所の使命であり、そのためにも平時から備えをしておくことが重要です。「災害ファストリンク」の利用には、「TKCファストリンク」の事前準備と同様に「日本公庫ダイレクト」の利用登録を完了させておく必要があります。会員の皆さまにおかれましては、まずは1件「TKCファストリンク」を活用頂き、「災害ファストリンク」の利用準備を整えておきましょう!
 当委員会では、本覚書の締結を契機に、日本公庫との連携を今まで以上に強化してまいります、ぜひご期待ください。■

危機事象発生における事業者への迅速な資金繰り支援に向けた連携

令和8年3月17日(火)、ホテルメトロポリタンエドモントの「波光の間」において、覚書締結に関する調印式が執り行われた。当日は報道関係者等が多数集まる中、日本政策金融公庫田中一穂総裁、TKC全国会坂本孝司会長、TKC飯塚真規社長が今回の連携の意義を語ったあと、覚書の調印が行われた。

(会報『TKC』令和8年4月号より転載)

おすすめのトピックス