退職者が営業秘密を勝手に持ち出し転職先等で使用されるケースが起こっているようです。わが社の貴重な営業秘密を守るためにはどうしたら良いでしょうか。(保険代理店)
近年の営業秘密に関する情報漏えい事件で最も有名なものの一つは、2021年に起こり、25年7月に刑事事件について最高裁判決があった「ソフトバンク事件」です。これは、ソフトバンクの元社員が、5G移動通信システムに関する技術情報を持ち出して楽天モバイルに転職した事件です。最高裁の判決では不正競争防止法違反(営業秘密領得)の罪で懲役2年、執行猶予4年、罰金100万円の有罪判決が確定しました。その後も図表のように類似の事件は後を絶ちません。より高い処遇や、やりがいのある仕事を目指し転職が当たり前になった現在、自社の営業秘密を守るためには、どのような対策が必要でしょうか。

営業秘密管理規程を作成する
営業秘密は、不正競争防止法によって民事的救済(損害賠償請求、差止請求等)および刑事的救済(拘禁刑等)によって保護されます。同法で営業秘密とは、技術上の情報と営業上の情報の両方が対象になります。その法律上の保護を受けるためには、「秘密管理性」「有効性」「非公知性」の3つの要件をすべて満たす必要があります。
これらの中で最も重要なのは、「秘密管理性」です。この「秘密管理性」の要件を満たすための一つの施策として、「営業秘密管理規程」を制定し、適切な営業秘密管理を行うことが考えられます。営業秘密管理規程には以下の内容を盛り込むとよいでしょう。
- 営業秘密管理責任者を定める。
- 営業秘密の重要度に合わせ「極秘」「秘」「社外秘」などの区分に分類する。
- 「極秘」「秘」「社外秘」の明示の徹底、施錠、社内サーバーへのアクセス規制(例:役員のみ「極秘」情報へのアクセスを可能とする)などについてルールを定める。
- 入社時や社内重要プロジェクト参加時、退職時などにおいて誓約書を取得する。
- 定期的に社内教育を実施する。
さらに、秘密保持契約書の締結も重要です。そのことにより契約上の秘密保持義務を開示先に負わせることができ、さらに上述の機密管理性の確保にも役に立ちます。
営業秘密がネット等に漏えいされてしまったような場合は、情報が転々と流れ、またたく間に拡散してしまいます。現実的にその流出を止めることは困難と言えるでしょう。いったんネット等に流出してしまうと、その回復が極めて難しくなる営業秘密漏えいの特性を十分理解し、日頃から会社全体で自社の貴重な営業秘密を守ろうという心構えを持つことが大切な時代となっています。