特集

AIで広がる新しい業務のカタチ ——TKCが描く未来像とは?

目次

AIが会計事務所の業務をどう変えるのか?

 この問いに、いま業界全体が注目しています。法令改正の頻度増加、人材不足の深刻化、顧問先からの高度な経営支援ニーズ──こうした課題に対応するため、TKCはAIを活用した新サービスの開発を本格化させています。今回は、具体的な取り組みとそのメリットをご紹介します。

1.なぜ今、AIなのか──業界を取り巻く環境変化

 税務・会計業界は、ここ数年で大きな変化を迎えています。
 電子帳簿保存法やインボイス制度など、法令改正の頻度は増加し、人材不足の深刻化により、採用や育成の負担が増大しています。また、顧問先からは、単なる記帳代行ではなく、経営助言や戦略提案を求める声が一層強まることが予想されます。
 こうした状況で、従来の業務スタイルを維持するだけでは、事務所の競争力を保つことは困難です。
 そこでTKCは、「AIによる業務革新」をテーマに、省力化・標準化・高度化を同時に実現する新サービスを開発しています。

2.TKCのAI戦略──理念と開発方針

 TKCが目指すのは、単なる「便利な機能」ではありません。「会計事務所の業務品質を高め、関与先企業から選ばれる存在になるためのシステム」を提供することです。
 そのために、次の三つの方針を掲げています。

(1) 実務に直結するAI

 現場で使えることを最優先に、会員事務所の声を反映した機能を開発します。

(2) 安全・安心の確保

 機密情報を守り、法令やガイドラインに準拠した運用を徹底します。

(3) 進化し続ける仕組み

 会員事務所からのフィードバックをもとに、AIモデルや機能を継続的に改善します。

3.AIで何ができる?──新サービスの詳細と利用シーン

 現在計画中のAI活用サービスは、会員事務所の実務に直結するものばかりです。以下、主な機能と利用イメージをご紹介します。

(1) AI議事録作成機能(OMS連携)

 巡回監査や決算報告会の音声をAIが自動で文字起こしでき、要約まで生成します。音声データとともに、TKC会員向けの税務・会計辞書情報をAIに渡すことで、精度の高い議事録を作成できます。
 報告書作成にかかる時間を大幅に削減し、情報共有のスピードが格段に向上します。
 例えば、新入職員が会議後すぐに議事録を作成し、上司の確認もスムーズに行えます。

●提供予定:令和8年(2026年)6月

(2) 関与先情報AI検索機能

「○○社の決算状況を教えて」など自然な言葉で質問すると、AIが過去の業務日報や関与先カルテなどの情報を整理して提示します。
 1年ぶりに関与先経営者と面談するような際に、概要を即座に把握でき、引き継ぎ業務や顧問先対応の効率化に大きく貢献します。

●提供予定:令和8年(2026年)4月にパイロット版

(3) 自然文検索による税務Q&A(税研データベース改訂)

 「交際費の損金算入要件は?」と人に問いかけるように検索するだけで、AIが最適な回答を提示します。
 経験の浅い職員でも即座に正確な情報を取得できます。

◎提供済み:令和7年(2025年)12月

4.事務所にとってのメリット

これらのサービスは、単なる便利機能ではありません。

  • 業務効率化:報告書作成や情報検索にかかる時間を最大70%削減
  • 品質向上:AIによるチェック機能でヒューマンエラーを防止
  • 付加価値創出:経営助言や戦略提案に時間を振り向けられる
  • 新人育成支援:新入職員でも一定品質で高度な業務を担当可能
  • 関与先との信頼関係強化:議事録をOMSに蓄積し、過去の発言や経緯を即座に把握可能。社長の成長を褒める会話が容易になり、信頼性を深めることができる

5.TKC会員からの声

 昨年10月に開催された理事会やニューメンバーズフォーラムで開発計画を発表した際には、次のような声をいただきました。

  • 「議事録作成にかかる時間が半分以下になれば、所内の生産性は大きく変わります」
  • 「新入職員を単なる作業要員にせず、AIを活用して即戦力化できるのは非常にありがたい」

6.安心・安全への取り組み

 AI活用にあたり、情報セキュリティは最重要課題です。特に前述のAI議事録作成機能と関与先情報AI検索機能は会計事務所で利用中のAIサービス(ChatGPT)やGemini等とOMSを連携させるサービスです。そのため、TKCは次の対策を徹底します。

  • 機密情報の漏洩防止:AIモデルへの学習を利用しない設定
  • ガイドライン準拠:日本税理士会連合会の指針やシステム委員会のガイドラインに沿った運用
  • データ管理の透明性:操作履歴・アクセス権限を厳格に管理
    「安心して使えるAIの仕組み作り」をご支援することが、TKCの責任です。

7.AIとともに進化する事務所へ

 TKCは、AIを核とした会計事務所のDXを推進し、
 省力化(手作業 → 自動化)
 仕組化(属人的 → 標準化)
 電子化(紙 → データ)

 を徹底することで、会員事務所の未来を支えます。
 「AIで業務革新を、未来の会計事務所へ」ぜひ皆さまとともに実現してまいりましょう。

基調講演

(TKC SCG営業本部 本部長 神立直樹)

(会報『TKC』令和8年1月号より転載)

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