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左は税理士法人思惟の樹事務所の関口浩平氏
産業用ヘルメットの加工販売に特化して堅調な業績を続ける進和加工販売。システムのクラウド化で経理業務の効率化を進めつつ、デジタルインボイスによる請求書発行に取り組む。山崎隆成社長と美代子専務、そして税理士法人思惟の樹事務所の関口浩平氏に聞いた。
──業容を教えてください。
山崎 建設現場などで使用される産業用ヘルメットの名入れ加工を行っています。先代の島野保司が、現在の主な仕入先であるヘルメットメーカーの進和化学工業から1985年に独立した会社で、私は99年に入社し、2011年に代表に就任しました。
──入社以前は?
山崎 大手トラックメーカーでエンジニアをしていたのですが、妻(美代子専務:経理担当)が先代の長女だった関係で会社を継ぐことになったという経緯です。
製品の高付加価値化を推進

ヘルメットに多彩なデザインの
加工を施す
──“名入れ加工”というのは?
山崎 ヘルメットに社名やロゴマーク、絵柄などのデザインを入れる加工のことです。
──注文はどこから?
山崎 建設会社などから要望を受けた金物店や防災用品店、作業服店などから注文を受けます。当社の強みは、大きな利ざやが見込めないため大手メーカーが避けがちな「少量多品種」に素早く対応する機動力で、約500の取引口座を持っています。
──エンドユーザーは?
山崎 もちろん建築・土木業者がメインですが、そのほかに、消防署や消防団の方々などにも使っていただいています。いずれにせよ最近は、オリジナル感を出すための凝ったデザインの要望が増えていて、そこへの対応がポイントとなっています。
──どのような対応を?
山崎 従来のスクリーン印刷だけでなく、表面に艶消し塗装を施したり、多色塗りやグラデーションをつけるためにインクジェットプリンターを使った加工なども増えています。そのための設備投資も積極的に行ってきました。
──付加価値をつけるということですね。
山崎 はい。販売については、少子化による労働人口の減少で「数」は漸減していますが、高付加価値製品の増加によって単価は上がっています。当社は私を含めて10名ほどの会社なので、作業工程をデジタル化するなど、いかに効率的にスピード感を持って付加価値の高い製品をユーザーに提供できるかが、今後、生き残っていくための条件だと考えています。
会計をクラウド化しデジタルインボイスを導入
──生産現場だけではなく、間接業務のデジタル化にも取り組んでおられます。

山崎隆成社長
山崎 インボイス制度への対応を機に、税理士法人思惟の樹事務所の関口(浩平)さんの支援を受けて会計ソフトのクラウド化(『FX2クラウド』導入)に取り組んだのですが、思いのほか大きなメリットがありました。
関口 既存の販売管理ソフトでは、インボイス制度への対応が難しいのでは……との相談を山崎社長から受け、それなら、いっそのこと『FX2クラウド』に切り替えて、その販管機能を活用したらどうですかと提案しました。そうすれば、一気に販売管理と会計がシームレスにつながり、インボイス制度対応に何の問題もなくなりますよと……。基幹ソフトである販管ソフトを変えるのは勇気がいることだと思うので、よく決断されたと思います。
山崎 それまでは販管ソフトのデータをスタンドアロン版のFXシリーズに打ち直していたわけなので、それだけでも大幅な効率化になりました。
──デジタル(ペポル)インボイスでの請求書発行にも取り組まれています。
山崎 それまでは、デジタルインボイスが、通常のPDFの請求書と違うということを知りませんでした。しかし、関口さんの話を聞くと、デジタルインボイスによって、かなりの業務効率の改善になることは間違いないし、『FX2クラウド』を導入することで、簡単に対応できると……。また、将来的にはこれが請求書発行のスタンダードになるということで、取り組んでみることにしました。
──どのような段取りを踏まれましたか。
山崎 昨年の5月くらいから取引先に対して、メールやファクスで請求書の発行方法が変わることを案内し、送付のためのメールアドレスを収集しました。加えて、営業担当が取引先を訪問して説明しました。やるなら徹底的にやりたいですからね。結果的に約9割の取引先に対応いただき、デジタルインボイスを発行し始めたのは8月。紙の請求書は約1割に減らすことができました。
「受信側」のメリットも期待
──効率化の具体的中身を教えてください。
山崎美代子専務(以下専務) プリントした請求書を折りたたんで封筒に入れ、宛名ラベルを貼って投函する作業を毎月5回、月に100社分くらいは行っていました。私を含めて3人がかりでトータル10~20時間/月かかっていたのですが、いまでは送付先の9割がたにワンクリックで送れるようになり、大変楽になりました。
──すごい効率化ですね。
専務 デジタルインボイスはもちろんですが、もう一つ、TKCシステムの「銀行信販データ受信機能」が使えるようになったのも大きかったですね。
──というのは?
専務 従来は、銀行で入金を確認し、その内容を仕訳しながら販管ソフトに入力していました。数字が間違えていたら全部見直しです。しかし「銀行信販データ受信機能」が使えるようになってからは、預金取引がほぼ自動で仕訳計上できるようになり、そうした懸念がまったくなくなりました。つまり請求書発行・送付から入金の仕訳までがシームレスにつながったのです。結果的に土日は出勤しなくてよくなったし、経理処理の手間が、感覚的には10分の1になったような気がします。
山崎 その分、専務や経理スタッフが名入れの作業を手伝うことができるようになり、現場の生産性も大幅に上がりました。
──ペポルネットワークを利用したデジタルインボイスは、送信だけでなく「受信」側のメリットも期待できます。
山崎 仕入先がデジタルインボイスで送ってくれるようになれば、その内容が自動チェックされ、会計システムに自動で仕訳・入力されると聞いています。そうなれば、圧倒的に効率化できるし、まさに一気通貫を実現することができます。今から楽しみですね。
関口 デジタルインボイスによる請求書のやりとりは、もはや世界的には常識となりつつありますし、日本でも5~10年後にはおそらくそうなります。その意味でも山崎社長の決断は、大きな意味があると思います。
──今後の見通しをお聞かせください。
山崎 繰り返しになりますが、生産部門は、より高付加価値な製品を提供することで高い限界利益率を追求し、事務部門では、『FX2クラウド』の機能を生かしながら、さらなるデジタル化、ペーパーレス化を進め、コストを削減します。この二つの取り組みの相乗効果によって全社的な利益率を高めていきたいと考えています。
コンサルタントの眼
所長・税理士 髙橋 琢
税理士法人思惟の樹事務所 群馬県高崎市小八木町2031-4
https://www.shiinoki.or.jp

進和加工販売さまは、創業来、産業用ヘルメットに特化した業態を強みにして、ニッチ市場で技術を磨きながら参入障壁を築いていく経営を続けてこられました。それが、現在の安定した業績につながっているのだと思います。
2代目の山崎社長とはお酒の席をご一緒したり、あるいはマラソン大会に一緒に参加したりと、日ごろから親しくさせていただいていますが、とても温和で、計数管理にも熱心に取り組まれる方です。また、DXにも前向きで、TKCシステムについても当事務所の提案を積極的に取り入れていただいています。今回、従来の販売管理ソフトを『FX2クラウド』の販管機能に移行した上で、証憑保存機能やペポルインボイスを導入してはどうかという当事務所の提案も快く受け入れていただきました。
当事務所は、インボイスの機会をとらえて、関与先企業さまに対して、既存の販売管理ソフトを『FX2クラウド』へと移行するよう促してきました。クラウド化の推進と証憑保存機能、ならびにペポルインボイスの普及が目的でしたが、山崎社長はその意図をご理解いただき、他社に先んじて導入いただきました。
今後、確実視されているペポルインボイスの普及が、中小企業の効率化、生産性アップを後押しすることは間違いありません。仕入先からの請求書がペポルインボイスに変わっていけばなおさらであり、その意味でも、近い将来、進和加工販売さまの取り組みが飛躍的な効率化をもたらすことが期待されます。
(取材協力・税理士法人思惟の樹事務所/本誌・髙根文隆)
名称 | 進和加工販売株式会社 |
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業種 | 産業用ヘルメット加工・販売 |
設立 | 1985年5月 |
所在地 | 群馬県藤岡市三波川74 |
売上高 | 2億2,000万円 |
社員数 | 10名 |
会計システム | FX2クラウド |
URL | http://s-kakou.com |