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コロナをきっかけに人気が再燃したが、プレー人口がピーク時の1,540万人(1994年)から約3分の1の560万人まで減少しているゴルフ業界。そんな厳しい事業環境のなか破竹の勢いで店舗数を拡大しているのがステップゴルフだ。経営ビジョンや戦略について榎本考修代表取締役CEOに聞いた。
- プロフィール
- えのもと・たかのぶ●1979年生まれ。PL学園高等学校卒業。大阪学院大学ゴルフ部所属。2001年日本ゴルフツアー機構ツアーメンバーとしてプロ活動。06年アイエム株式会社設立。12年ステップゴルフ株式会社設立。19年ESGホールディングス株式会社設立。
ステップゴルフ 代表取締役CEO 榎本考修氏
──月額4,980円からはじめられる定額打ち放題・定額習い放題のインドアゴルフスクール「ステップゴルフ」が全国120店舗を突破、累計会員数も8万5,000人近くに達しています。成長の秘訣は何でしょう。
榎本 一番は、商標登録も取得した「店長兼コーチ」という役割を創造したことです。インドアスクールでは通常、事務スタッフと「先生」と呼ばれることが多いレッスンプロがいますが、私たちは両方の業務をワンオペレーションで行うことにより低コストでの運営を可能にしています。また顧客管理や業務管理、予約管理、レッスン支援などのシステムを自社で開発しており、業務効率の向上に努めています。レッスンプロによる指導をしないのは、あくまで顧客目線のサービスを提供するため。初めて体験される方も安心して続けられるような空間づくりを意識しています。
──店舗の特長を詳しく教えてください。
榎本 シミュレーションの機械を設置するなどお金をかければ、どの企業も同じような施設をつくることができます。そうしたなかで当社の店舗を選んでいただいているのは、人間の五感を意識した居心地のよい空間づくりのため細かな気づかいを積み重ねてきた結果だと思います。行き届いた清掃、店内の香り、練習に快適な室内温度などを全店舗で徹底した結果、現在会員数の約45%が女性を占めるまでになりました。女性の高い支持が当社店舗の大きな特徴になっています。
──店舗数の目標は?
榎本 サービスの明確化と同業他社に比べ半額以下という「価格破壊」を実現したことにより、これまで一部のお金持ちや社長、経営幹部がするスポーツというイメージを払拭することに成功しました。自らゴルフを始めるとは思わなかった主婦や若年層が続々と当社の店舗に入会しています。現在年間の出店ペースは40店舗程度ですが、この先さらに出店ペースを加速させ、2031年には国内500店舗体制を確立する目標を立てています。
続々と大型FC契約が決まる
──全国展開の現状について教えてください。
榎本 健康寿命の延伸を通じたウェルビーイングの実現、コミュニティーの活性化を通じた地方創生への貢献など、当社は他社とは次元の異なる価値の創造を目指しています。こうした理念に共鳴いただいた企業とのエリアフランチャイジー契約が次々に決まりつつあり、先日広島では20店舗を5年で出店する大型契約を締結しました。ほかにも計画として沖縄で10店舗、大阪で50店舗、京都で10店舗、名古屋で50店舗出店する予定です。
──ゴルフ人口の拡大を通じて目指したいことは?
榎本 当社にはゴルフによって健康寿命を延ばし、人生を豊かにするという使命があると考えています。またゴルフは本来、親子3世代で一緒に楽しむことができる素晴らしいスポーツ。大自然のなかで長距離を歩くことができますし、家族や仲間との会話も弾みます。店舗は交流の場にもなり、コミュニティーの活性化にも寄与します。したがって当社ではグループ会社とともに2030年までに地域密着型で100万人のゴルファーを創り出すとともに、ゴルフという枠を超えた地域の「コミュニケーションスペース」 を創り出すというビジョンを掲げています。
──立地や会員のレベルに応じて複数のブランドを展開しています。
榎本 月額4,980円で通い放題・打ち放題という最もリーズナブルな「ステップゴルフ」、スイング解析機の設置や24時間営業などが特徴の「ステップゴルフプラス」(同5,980円から)、セルフタイム共通利用が可能な「STEPGOLF EXtra」(同9,980円から)、最新シミュレーターを全打室に完備した「STEPGOLF PREMIUM」(同1万2,000円から)の四つのブランドで展開しています。立地に応じて各店舗の提供価格は変化させていますが、お客さまからは総じて他のインドアゴルフスクールに比べ「かなり安い」と評価をいただいています。
──目標達成のためには、店長兼コーチの存在が大きな役割を果たしますね。
榎本 採用については、おかげさまで年間約1,000名からアプローチをいただいています。実際に採用に至るのは数十名ですが、これまで店長兼コーチとしてゴルフ好きのサラリーマン、警察官、探偵、保険の営業員、教師などさまざまな経歴を持った方が活躍してきました。
──研修や人材教育についてはいかがですか。
榎本 最初に1~2カ月間の研修をみっちりこなしてもらいます。内容はゴルフのコーチングはもちろん、あいさつの仕方やお客さまへの声かけの仕方、ハラスメント防止の基礎知識、店舗運営のノウハウなど多岐にわたります。
ゴルフ以外のスポーツも検討
──1号店は東京都昭島市拝島町にある拝島店です。都心部ではなく郊外を選んだ理由は何ですか。
榎本 町内人口7,000人と特別商圏が大きいといえる地域ではない拝島になぜ1号店を出したかというと、それは成功させるのが難しいことが分かっていたからです。逆に言うと拝島よりも条件のよいところではかなりの確率で成功が予測できることになります。200人の会員を獲得できれば黒字にできると試算してはじめましたが、雨の日も雪の日も毎日始発からチラシ配りをするなどした結果、10カ月で達成することができました。拝島で第1号店を軌道に乗せたことにより、日本には1,000カ所以上の出店ポテンシャルがあることを確認することができました。その後現在まで、入居していたテナントの建て替えなどやむを得ず統合したなどの例外をのぞき、退店した店舗はまだありません。これは本当に異次元なことだといえます。
──各種イベントの開催が多いのも特長の一つだそうですね。
榎本 コースを18ホール回るのがゴルフの目的という固定観念を打ち破り、自由な発想でサービスを提供しています。例えば初心者向けに3ホールだけラウンドを回る「ファーストレッスン」や、いちご狩りや温泉ツアーを組み合わせたコースレッスンなどを多数開催しています。このイベント開催数の多さは業界の中でもダントツ。ステップゴルフに入会すれば2度、3度おいしいと感じていただけると思います。
──インドアに加えアウトドアにもサービスを拡大するということでしょうか。
榎本 はい。しかし実は会員の4割がまだアウトドアでプレーした経験がありません。どうやってコースにエスコートしてよりゴルフを楽しんでもらうかが課題となっています。そのため当社ではインドアゴルフの展開に加え、ファンドを通じ全国で50のゴルフコースを取得する計画を進めています。相当な費用がかかりますが、100万人の会員が達成できれば貸し切りなどで年間予約を埋め尽くすことは難しいことではないと考えています。
──19年に100%親会社のESGホールディングスを設立しました。その狙いは?
榎本 ステップゴルフは私たちが進める事業の土台ではありますが、すべてではありません。ワンオペ運営ノウハウをベースとした都市型フランチャイズスポーツビジネスとしてフィットネスや卓球、テニスへも今後展開していく予定です。さらに100万人をこえる会員のライフスタイルについてのデータを蓄積し、AIなど技術を生かした新たなパーソナライズサービスを行うウェルビーイングデータ事業も構想中です。ゴルフにとどまらず「ステップライフ」につながるサービスを国内外で展開していきたいと考えています。
(インタビュー・構成/本誌・植松啓介)
名称 | ステップゴルフ株式会社 |
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設立 | 2012年11月 |
所在地 | 東京都千代田区神田小川町3-6-4 日本分譲住宅会館 1F・2F |
従業員数 | 105名 |
URL | https://stepgolf-inc.jp |