企業に義務付けられている障害者の雇用率が引き上げられたと聞きました。当社の常時雇用従業員は42人なのですが、障害者を雇用する義務はありますか。(衣料品小売業)

 障害者雇用促進法では、常時雇用する労働者数に、一定の雇用率を乗じた人数の障害者を雇い入れることが事業主に義務付けられています。この「雇用率」が2024年4月1日から2.5%(従前は2.3%)に引き上げられました。これによって、常時雇用する労働者が40人(従前は37.5人)以上の事業所は、最低1人の障害者を雇い入れる義務が生じることとなります(40÷0.025=1)。つまり、ご質問の企業では、最低1人の障害者を雇用しなければなりません。ただし、この雇用義務が軽減される業種もあるので、詳しくは厚生労働省のサイトで確認してください。

 そもそも、今回の改正は、23年4月に政令として打ち出されたもので、新たな雇用率は2.7%とされましたが、企業にとって、即座に障害者を雇用せよといってもなかなか難しく計画的な対応が必要になります。

 そのため、経過措置として、24年3月までは2.3%に据え置かれ、24年4月から2.5%となり、26年7月から2.7%と段階的に引き上げられます。26年4月以降は、常時雇用する労働者が37.5人に事業所は最低1人の障害者を雇い入れる義務が生じる計算となります。

 さらに、24年4月から、週の所定労働時間がとくに短い障害者についても、雇用率に算入できるようになりました。

 従来は週の所定労働時間が20時間以上の障害者を算入することができていましたが、4月からは、10時間以上20時間未満とより短い労働時間の障害者も参入が可能となりました。具体的には、重度身体障害者、重度知的障害者、精神障害者をそれぞれ0.5人として計算されます。

計画的な採用戦略が必要

 障害者雇用促進法では、少なくとも5年ごとに障害者の雇用率を見直すことになっています。これまでの経過から考えても、28年4月からの雇用率もさらに引き上げられることが予想されています。したがって、労働者の数が少ない中小企業でも、いずれは障害者の雇用義務が生じるということになるでしょう。

 では、ノウハウのない中小企業が障害者雇用を上手に進めるにはどうすればよいでしょうか。

 まずは、社内の理解を深めることです。障害者雇用を企業の社会的義務ととらえる意識を醸成しておかないと、思わぬ軋轢を生むことにもなります。

 戦略的に採用計画を立てることも大事です。担当してもらう仕事をあらかじめつくり、本人がとまどうことのないような業務フローを確立しておくことが必要となるでしょう。

 さらに、サポート体制を整えておくことも必須です。社長や周囲の社員が、できるだけ被雇用者の困りごとを助け、きちんと戦力化する努力が成功のポイントです。

 また、公的な関連機関と連携したり、あるいは、行政や民間のさまざまな障害者支援サービスも存在するので、利用することも考えてみるべきです。

掲載:『戦略経営者』2024年6月号