監査法人出身会員に聞く

得意分野を活かした拡大とTKCビジネスモデルに沿った事務所経営が成長のカギ

しおみ総合会計事務所 塩見秀樹会員(近畿大阪会北支部)
塩見秀樹会員

塩見秀樹会員

大学卒業後建設会社に就職し、監査法人での勤務を経て、関与先ゼロで開業した塩見秀樹会員。建設業の許認可申請等を足がかりにした関与先拡大や、弱点だった税務業務の克服方法など、開業からの道のりをお聞きした。

トンネルの工事現場で予実管理を経験

 ──公認会計士の資格を取る前は、一般企業に勤務されていたそうですね。

 塩見 出身は京都府ですが、東京の大学に進学し、卒業後は大手建設会社に就職しました。専攻は政治経済学部で簿記会計にはまったく縁がなかったのですが、入社した建設会社では大阪本社の管理部門に配属され、「建設業経理検定」という試験を受けることになったのです。
 その勉強が意外と面白くて、また試験にも一発で合格できたので、数字を使った仕事は自分に向いているのかなと。

 ──特に印象に残っている仕事はありますか。

 塩見 実際の工事現場での経験です。本社管理部門の次は土木部に異動したのですが、トンネル工事などの現場に常駐し、現場の責任者や職人さんたちと協力していかに工事原価を抑えるかというのが私の仕事でした。
 現場責任者は社長と同じで、材料をどこから仕入れてどう使うか、あるいはどの職人にどの仕事をしてもらうかなどを指示します。私は原価管理の担当者として予算と実績を分析し、例えば「このままだと赤字になるので、対策が必要です」と場責任者に進言する役目でした。今考えると、FX2を見ながらお客さまにアドバイスするのと同じです(笑)。
 また、職人さんと直に接することができたのも大きな経験でした。よく一緒にお酒を飲んだり、時には建設業に必要な許認可についての相談なども受けたりしました。建設会社の経営者や職人がどんな悩みを持っているかが分かり、これが開業後に大きな強みになりました。

 ──なぜ公認会計士を目指されたのですか。

 塩見 学生時代、父から「士業の資格を取るといいぞ」とアドバイスされたことがありました。就職活動の時は特に気にせず建設会社に入ったのですが、配属された工事現場に公認会計士が往査に来ていたので、父の言葉を思い出して色々話を聞いたのです。そうしたら「興味があるなら塩見さんも資格を取れば。面白いよ」と勧められたのがきっかけです。
 それで退職して専門学校に通い、2年間勉強して合格しました。さらに監査法人で2年間の実務経験を積んで無事資格を取得できたので、土地勘のあった大阪で開業しました。それが平成25年でした。

建設会社へのポスティングで関与先拡大

 ──関与先ゼロで開業されたそうですが、拡大についてお聞かせください。

 塩見 有名なランチェスター戦略の「一点集中」に倣い、まずターゲットと地域を絞りました。業種はもちろん建設業です。建設業者はその業務内容によって「建設工事業」「とび・土木工事業」などの許認可を取る必要があるのですが、通常はそれを行政書士に依頼します。公認会計士資格があると行政書士にも登録できるので、この許認可の申請代行業務を足がかりに税務顧問につなげようと考えたのです。
 地域は、事務所のある大阪市北区周辺および大阪府北部の市に限定しました。あまり知られていないのですが、許認可を受けている建設会社のリストを地方自治体が公開しているので、社名や住所が簡単に調べられます。そして地図を広げて「今日はこのエリアに行こう」と決め、自転車でそのエリア内の建設会社に片っ端から手作りのチラシを入れたのです。

 ──すべて自転車で配ったのですか。

 塩見 そうです。開業直後は時間がありましたし、実は大学時代は自転車部だったのでその特技を活かしました。
 ポスティングの研究もしたのですが、最も大事なのは「継続」。1回だけでは効果がなくても、例えば2週間に1回の頻度でチラシが入っていれば格段に印象に残りやすくなります。おそらく累計1万枚以上は配りましたが、約100件に1件くらいの割合で「認可の期限が切れそうなので、更新手続きをしてほしい」という問い合わせがありました。

 ──まさに狙い通りですね。

 塩見 時間に余裕がないと多くの枚数は配れませんが、例えば飲食店や美容院など自分が得意な業種に絞り、その業種に向けたチラシを作って、巡回監査などで外出した時に店を見かけたらついでに入れるだけでもいいと思います。
 私も現在は関与先が増え巡回監査で忙しくなったため、以前のようなやり方はできません。でもチラシは常に持ち歩き、外出先で建設会社を見かけたら必ずポストに入れるようにしています。

 ──許認可申請代行から、どのように月次の顧問契約につなげるのですか。

 塩見 「うちは税務顧問もしています。私自身が建設会社にいたので、お役に立てますよ」とアピールしました。すでに顧問税理士がいるところもありましたが、巡回監査や経営助言などについて説明すると「こういうことをしてほしかったんだよ!」と言われることがありました。
 もちろん、許認可申請だけで顧問契約に至らないというケースも多かったのですが、最終的には開業1年で10件程度の建設会社がお客さまになりました。

 ──現在の拡大手法はいかがですか。

 塩見 お客さまからのご紹介が多いですね。建設会社からスタートしましたが、今は不動産会社や飲食店、動物病院などさまざまな業種のお客さまがいます。また7000プロジェクトに取り組んだ結果、金融機関との交流が増えたので、金融機関からの紹介も増えてきました。
 現在、月次のお客さまは約35件で、建設業とそれ以外の業種が半々くらいになっています。

TKCのビジネスモデルは競争優位に直結

 ──TKC入会の経緯を教えてください。

「3の会」開催報告

入会5年未満の近畿大阪会NM会員が事務所経営
について語り合う「3の会」の開催報告。
塩見会員が世話人を務めている。

 塩見 開業にあたり、システムを決めるためTKC社員に説明に来てもらったのですが、「会計事務所での勤務経験がなければ、ノウハウを学び合う仲間がいたほうがよいのでは」とアドバイスされ、確かにそうだなと。
 その後、同じ公認会計士で、現在近畿大阪会の会長をされている野垣浩先生の事務所見学会に参加し、本当に事務所経営のノウハウを教えていただけて感動しました。それが入会のきっかけです。

 ──入会してよかったと感じたことは。

 塩見 たくさんありますが、やはり一番はTKCのビジネスモデルが確立されていることです。先輩会員が議論を尽くしてできたモデルなので、それに沿ってKFSを実践するだけでTKC以外の事務所よりも競争優位がありますから。

 ──会計事務所での勤務経験がないので、最初は大変ではありませんでしたか。

 塩見 特に税務については分からないことだらけでした。法人税については監査法人で少しだけ経験があったのですが、困ったのが個人所得税の確定申告と相続税申告でした。
 個人所得税については、税理士会が主催している納税者向け相談会の相談員をして、隣にいる税理士に「これで合っているかな」と聞きながら(笑)、とにかく数をこなして覚えました。
 相続税については、国税出身で不動産鑑定士の資格も持っている吉村一成先生に教わりました。最初に話をいただいた案件が山林や土地の評価を伴う複雑なものだったので、手伝っていただきながら申告書を作ったのです。おかげで相続の一連の流れを経験でき自信がつきました。
 これもTKC会員だったからできました。もし誰にも相談できない状況であれば案件を断るしかなかったでしょうね。

 ──公認会計士ならではの知識や経験を活かせることはありますか。

 塩見 原価計算についてはかなり深く勉強しており、例えば変動損益計算書の考え方も得意分野なので、お客さまに分かりやすく説明できます。また会計基準への準拠も「当たり前」という感覚なので、中小会計要領のチェックリスト添付も自然に取り組んでいます。
 また組織再編成や会社法にも詳しいと思いますので、今後上場企業の子会社や中堅以上の企業に関与したり、会社の機関設計のアドバイスをしたりする際は大きな武器になるはずです。

「ATM事務所」では存続できないと痛感

 ──今後の抱負をお聞かせください。

 塩見 ある社長に言われて衝撃を受けたのが「前の事務所は銀行ATMのようだった」という言葉です。つまりATMに通帳を入れると取引が記載されて出てきますが、会計事務所も、資料を渡すと試算表が出てくる機械と同じ価値だということです。AIがさらに発達し記帳が自動化されたら、記帳代行だけの事務所は完全になくなるだろうと痛感しました。
 つまり、今後税理士が生き残るためには、保証や経営助言など、AIにはできない高付加価値業務に取り組むしかありません。事務所の組織化ができていないなどまだまだ経営課題は多いのですが、しっかり高付加価値業務に取り組み、地域中小企業の存続と発展を支援していきたいと願っています。

 ──今年のニューメンバーズフォーラムの実行委員長を務められるそうですね。

 塩見 はい。当フォーラムはニューメンバーズ会員フォローの最大のイベントです。皆さんの事務所経営に役立つと思いますので、楽しみにしていてください。

(TKC出版 村井剛大)


塩見秀樹(しおみ・ひでき)会員
平成25年しおみ総合会計事務所を設立。近畿大阪会ニューメンバーズ・サービス委員長。「TKCニューメンバーズフォーラム2017」実行委員長。趣味は自転車、アウトドア、ゴルフ。

しおみ総合会計事務所
 住所:大阪市北区豊崎3丁目20番9号 三栄ビル9階
 電話:06-6131-7490

(会報『TKC』平成29年9月号より転載)

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