TASKクラウド
マイナンバーカード交付予約・管理システム
各種クラウドシステムの開発に従事。
2019年10月からプロジェクトリーダーとして
マイナンバーカード交付予約・管理システムを開発。
業務負荷の軽減に徹底してこだわる
――「TASKクラウド マイナンバーカード交付予約・管理システム」とは。
日比現在、多くの市区町村ではエクセル等で管理簿を作成し予約受付や交付(廃棄)までの工程などを個々に管理しています。これらカードの申請・交付予約から、カード交付までの交付事務を一元管理することで、業務効率化を支援するのがTASKクラウド マイナンバーカード交付予約・管理システムです。適切な予約受付、工程管理ができるのはもちろん、データ検索なども容易で、スピーディーな実務が可能となります。
――システム開発のきっかけは。
日比マイナンバー制度がスタートし、新商品企画推進室を中心にカードの利活用について調査研究を進める中で、カードの交付予約・管理業務に相当な時間と手間がかかっていることを知り、「これをシステムで何とか支援できないか」と考えたのがきっかけでした。
とはいえ、最初のうちは社内でもシステムの必要性がなかなか理解されず、製品化を決断するまでは幾度も議論が重ねられました。そして、TASKクラウドフェアに参考出展した試作版システムが好評を博したことから、2019年10月に開発プロジェクトを発足し、本格的な開発がスタートしました。
実は、私自身もこのシステムをきちんと認知したのはTASKクラウドフェアでした。当時は固定資産税システム技術部で登記簿連携機能の開発に携わっており、マイナンバーカード交付予約・管理システムを見て、税のシステムとは全く異なる世界観に触れました。
まず、システムに求められることが違います。税計算のためのシステムはミスが許されないため開発でも常に緊張感が求められます。一方、マイナンバーカード交付予約・管理システムでも当然ミスは許されませんが、それ以上に業務効率化を支援するための発展性や拡張性が求められます。また、画面の見せ方やUIなども従来のTASKクラウドとは異なります。さらにソフトウエアに加えてさまざまなハードウエアとの連携も必要です。エンジニアとして、そうした異色の世界に興味を持つとともに、単なる管理表の作成支援だけではない“プラスα”の面白さやシステムの可能性を感じました。
――開発にあたって、こだわった点は。
日比特にこだわったのは〈職員の業務負荷の軽減〉です。
これまでも〈予約管理システム〉などは数多く商品化されていましたが、カード交付に関する業務全般をカバーするシステムは他にはなく、実際に職員の皆さんの話を伺い実務の大変さを痛感するなかで、その改善がわれわれの使命だと強く意識しました。
そうした思いは、機能面にも表れています。
例えば、J-LISからマイナンバーカードと一緒に届くカード発行一覧表の情報をスキャナーで読み取り、「カード管理簿」を自動で作成できるようにし、データ入力にかかる手間をなくしました。また、カードの券面から生年月日やカードの有効期限を読み取るとともに、マイナンバーカード内(ICチップ)の情報を読み取ることでカード管理簿の作成にかかる手間・時間を軽減しました。そのために専用機器(マイナンバーカード情報読み取り機)を独自に開発しました。
これらはいずれも他社製品にはない機能です。
――マイナンバーカード情報読み取り機とは。
日比これは上部にWebカメラ、下部にICカードリーダーを備え、カード券面とICチップの情報を同時に読み取ることができる専用機器です。
機器には〈手動〉と〈自動〉の2種類があり、自動読み取り機では1度に100枚のカードを読み取るとともに〈申請時来庁方式〉と〈交付時来庁方式〉のカードを自動で区分けできます。これも従来は職員の皆さんが手作業で区分けしていました。カード1枚当たりの読み取り時間は3秒程度ですが、これで券面とICチップ内の情報を読み取ることができるので、決して長すぎる時間ではないとご納得いただけるでしょう。
これまでもシステム開発において既存の周辺機器と連携することはありましたが、システムに付随するハードウエア開発まで手掛けるのは異例のことです。最初にマイナンバーカード情報読み取り機を見た時には、複数の読み取り機能を持つ形態に「何だこれ?」と驚きましたね(笑)。
機器の開発過程では、製造を依頼した昭和精機株式会社と何度もやりとりを重ねましたが、通常のソフトウエア開発では絶対に発生しない課題にも対応する必要があり、これはまったく新しい経験でしたね。例えば、初期の試作機ではカードを区分する際にスムーズにポケット部分に落ちずにカードが一回転してしまうとか、LED照明の影響でデータの読み込みがうまくいかないこともありました。これらを解決するために一緒になって改良を進めました。また、実証試験では多くのお客さまのご協力もいただきました。
そうした多くの人々の苦労が実り、マイナンバーカード情報読み取り機の評判は高く、中にはこれがあるからシステム導入を決めたという団体もあるほどです。
目指すは「カード利活用のプラットフォーム」
――システムに対して大きな反響が寄せられているが、開発者としてどう見ているのか。
日比お陰さまで、8月末現在で政令指定都市を含む全国20団体以上に採用いただきました。ファーストユーザーである茨城県五霞町様にも問い合わせや視察の申し込みが殺到しているそうで、当初はカードの取り扱い枚数が多い中大規模団体からの注目度が高かったのですが、その波は徐々に小規模団体へと広まっています。
こうして注目されることは、開発者として素直にうれしい一方で、より魅力あるシステムとなるようブラッシュアップを図っていくことへの責任感を強く感じています。
7月にはLINEと連携する機能を提供しました。これにより住民は、市区町村のアカウントを友だち登録することで、カードの申請・交付の予約が可能となります。
また、今秋には申請書等のイメージ管理機能を提供します。これは総務省令で申請書の保存期間が15年と定められていることから、申請書や関連資料をイメージデータで保管できるようにするものです。当初、こうしたニーズはあまりないのではと考えていたのですが、システムの機能強化に関してヒヤリング調査を実施したところ、ほとんどの団体が「イメージ管理を利用したい」と回答されました。この結果からも、お客さまが紙をなくしたい、保管・検索の手間から解放されたいと考えていることがよく分かります。
――今後の計画は。
日比全国のお客さまからの要望も多く寄せられており、継続してシステムの機能強化に取り組む計画です。
また、次なる課題と考えているのは、カードの普及拡大に比例して定例業務としてカードの更新作業などが増加することから、これをどうサポートしていくかということです。五霞町様ではシステムを活用してカードの申請・交付予約とともに電子証明書の更新予約も受け付けているそうで、このように実務を通じて見えてくる“気付き”もあります。その点では、お客さまの声に耳を傾けながら、住民や職員の皆さんの利便性向上にもっと貢献できることはないか、しっかり考えていきたいですね。
さらに、マイナンバーカードは交付して終わりではありません。特に、新型コロナウイルスの感染拡大を機に行政サービスにおいても〈新たな日常〉が求められており、そうした中で本格化する〈カードの利活用〉をシステムでどう支援していくか、いろいろと模索を続けています。その一例として、2021年3月からスタートする健康保険証機能の搭載に向け、関係者が集まり国民健康保険システムとの連携の可能性について検討を開始しました。
マイナンバーカードについては、これまでも兵庫県姫路市様など多くのお客さまの協力を得ながら、その可能性について調査研究を進めてきました。マイナンバーカード交付予約・管理システムはその一つの成果といえます。こうして培ってきたノウハウや知見を生かし、〈カードの利活用まで支援するプラットフォーム〉を目指して、これからもマイナンバーカード交付予約・管理システムの強化拡充に取り組んでまいります。