TASKクラウド行政サービス・デジタル化支援

開発者が語る

TASKクラウドスマート申請システム

「TASKクラウドスマート申請システム」は、申請から認証、決済、交付まで行政手続きの一連のプロセスをオンライン上で完結できるシステムです。2020年8月に大阪市様でサービスがスタートしたことで、多くのお客さまから注目されています。
開発者紹介
生山祐介おいやま ゆうすけ
住民向けサービスなどの開発を経て、新商品技術推進室で新製品・サービスの企画・開発に関わる。2019年からデジタル・ガバメントシステム第二開発部の責任者に。
根本恵理ねもと えり
入社以来、住民向けサービスの開発を担当。並行して、行政手続きオンライン化の実現に向けた検討プロジェクトにも関わり、2019年からスマート申請の開発に従事。

実を結んだ、長年の「オンラインサービス」研究

――スマート申請システムとは。

生山利用者から市区町村職員にいたる行政手続きの一連のプロセスをオンライン上で完結させるものです。これにより、利用者(住民・事業者)はインターネットから各種行政手続きをオンライン申請できるだけではなく、認証(個人確認・法人認証)や決済、通知書類などの交付まで、がすべてオンライン上で完結できるようになります。いわば、行政手続きのために〈窓口に来させない、書かせない〉ものです。

――開発のきっかけは。

生山デジタル手続法の施行に加え、新型コロナウイルス感染症の拡大が追い風となって、いま行政手続きのオンライン化への取り組み機運が急速に高まっていますが、実はTKCでは数年前から社内でこれを支援するシステムの研究を進めており、昨年から「手続きオンイランシステム(仮称)」として製品開発をスタートしていました。

 ご承知のとおり、行政手続きのオンライン化は「e-Japan戦略」(2001年1月22日)で〈2003年までに、国が提供する実質的にすべての行政手続をインターネット経由で可能とする〉と定められたことに始まります。その後、2016年1月からマイナンバー制度の運用がスタートしたのを受け、TKCでは新商品・サービスの企画、開発を一段と加速させるため、新商品企画推進室を設置(2016年10月1日)しました。
 ここでマイナンバー時代の行政サービスのあり方を考える中で、改めて「行政手続きのオンライン化」に着目したわけです。単に住民からの申請をオンラインで受け付けるだけでなく、申請データを基幹系システムまで一気通貫で連携するサービスが、いずれ求められるようになると考え、研究を継続してきました。その一つの成果が「TASKクラウドスマート申請システム」です。

根本研究の過程では、2018年に妊娠から出産に関わる〈住民-医療機関-自治体〉にまたがるオンライン申請を想定したプロトタイプシステムをつくりました。私もそのプロジェクトに参加していましたが、自分たちのアイデアを発展・具現化させるための試行錯誤を重ねながら、行政手続きのオンライン化をどう実現するか検討する、いい経験となりました。
 なお、このプロトタイプシステムは、プライベートフェア(TASKクラウドフェア2018)で参考展示し、多くのお客さまから「行政サービスのデジタル化に向けて先進的な取り組みをしている」と興味を持っていただくきっかけともなりました。

――行政手続きオンライン化の変遷を知る開発者として、現状をどう感じているか。

生山e-Japan戦略の策定で“第一次”オンライン化ブームが起こり、当時、TKCも厳格な本人確認ができる「TASKクラウド電子申請・届出システム」を開発・提供したのですが、本格普及には至りませんでした。要因はいろいろ挙げられますが、やはり法律や条令などにより一部の手続きしかオンライン対象とされなかったこと大きいといえるでしょう。その結果、次第に市場が縮小し、多くの事業者が撤退していきました。
 また、この時にオンライン化の対象となった手続きでも“紙”の申請をそのままオンラインに置き換えたことで、利用者の“利便性”が置き去りとなってしまったと感じています。当時、電子申請システムの開発に携わった一人として、この点は大いに反省しています。
 そのため再びオンライン化機運が高まるなかで、個人的には「行政からも利用者(住民・事業者)からも本当に喜ばれるシステムでリベンジしてやる」という気持ちが強いですね。

根本もともと身近な人たちに使ってもらえるシステム開発に携わりたいとTKCへ入社しました。その念願が叶い、ずっと「TASKクラウド公共施設案内・予約システム」や「TASKクラウドかんたん申請・申込システム」など住民向けサービスを担当しています。
 昨今、ICT分野の技術革新は目覚ましく、いまや多くの人がスマートフォンを使ってオンラインショッピングやインターネットバンキングを利用しています。行政手続きの分野でも、もっとさまざまな分野でオンライン化が進み、利用者が気軽に利用できるようになるべきだと思いますし、それを支援するシステムの重要性はどんどん高まっていくでしょう。

生山その意味では、利用者にとって便利で身近なオンライン申請システムの実現が、われわれの重要なミッションだと考えています。そのため開発チームを発足したときに、利用者視点に立った3つの開発方針を掲げました。

  1. 繰り返し使いたくなるシステムを目指す
  2. 安全・安心・快適な体験を届ける
  3. シンプルかつ標準化された仕組みを用いる

 第一が、ネットショッピングする感覚で、オンライン申請を身近に使ってもらえるようにしたいということです。第二の〈安全・安心〉は、情報セキュリティーなどの面で問題が発生するとオンライン化普及の妨げともなり絶対にあってはならないことです。また〈快適〉とは使い勝手のことです。性能やUI(ユーザーインターフェイス)/UX(ユーザーエクスペリエンス)など、いずれも定量的には測りにくいものですが、この最適化を目指そうということです。そして第三は、スマート申請システムは今後どんどん拡張・進化していくものなので、凝ったつくりではなく、シンプルで標準的な仕組みを使うことで柔軟に対応できるようにしようというものです。

――システム開発はどのように進めているのか。

根本スマート申請システムは、大阪市様との“共創”スタイルで開発しています。TKCシステムの開発では、これまでもお客さまの声を積極的に採り入れてきましたが、ここまで深くお客さまと一緒になって一つのモノを創り上げたことはかつてなかったと思います。ICT戦略室の皆さんと毎週定例会議を開催するほか、毎月のように数日かけてブレーン・ストーミングも行っています。その場ではITベンダーの視点では発想できないようなアイデアも数多く生まれ、開発者としてとても新鮮です。難題があっても一緒に議論して最適解を導き出し、それを何とか実現していきたいと考えています。
 新型コロナなどの影響もあって非常にタイトな開発スケジュールとなりましたが、予定通り8月から「大阪市行政オンラインシステム」のサービスを開始できました。サービスが始まってまだ1カ月ほどですが、すでに多くの市民・事業者の方に利用されており、開発に関わった一人として努力が報われたようでとてもうれしく感じています。何よりも、この成果はICT戦略室の皆さんと共に創り上げたからこそ得られたもので、本当に感謝しています。

――そうして生まれたシステムで、ぜひ注目してほしい点は。

生山最初にこだわった〈利用者の使いやすさ〉のほかにも3つあります。

 第一が、申請フォームの作りやすさと柔軟性です。大阪市様では最終的に1500手続きをオンライン化する予定ですが、何千種類もある申請手続きのオンライン化をスムーズに進めるにはここが重要なポイントとなります。
 第二が、マイナンバーによる厳格な本人確認とオンライン決済の実現です。以前の電子申請システムでも電子署名の付与は可能でしたが、オンライン決済との連携まで全てをつなげたのは当社では初の試みです。

 そして、最後が電子交付です。スマート申請システムでは、別のシステムで交付物を作成してそれをアップロードするのではなく、スマート申請システムで交付物を作成し発行できる仕組みとしました。これにより職員の皆さんの業務効率化もご支援したいと考えています。

利用者視点で、進化し続けるプラットフォーム

――発表以来、全国から問い合わせが殺到しているが。

根本そうですね。人口規模の大きな団体を中心に多くのお客さまから問い合わせをいただいています。皆さんからの期待の大きさに、開発者としては喜ばしいとともに少しプレッシャーも感じています。

――今後の開発予定は。

生山スマート申請システムはまだ開発途上の製品で、現在の完成度は5、6割といったところでしょうか。来春に一端の完成を迎える予定ですが、このシステムはまだまだ伸び代が大きいと考えています。システム開発を決めた時に描いたビジョンはありますが、昨今のさまざまな変化もあってこのシステムが数年後にどんな進化を遂げているのか、われわれも想像できないほどです。

 現段階で明確になっている計画では、まず基幹系システムとの連携を進めます。実現に向けて、大阪市様と研究を開始しました。
 また、経済産業省の「Gビズ」(一つのID/パスワードでさまざまな法人向け行政サービスにログインできるサービス)との連携も予定しています。これが実現すると、事業者の方がオンライン申請サービスに利用者登録をしなくても、GビズのID/パスワードを使って利用できるようになります。それにより、新たな世界が広がることも想定され、非常に楽しみです。
 その意味で、スマート申請システムは行政デジタル化時代の〈プラットフォーム〉に位置付けられると考えています。

 これまで〈行政の情報化〉といえば基幹系といわれるバックオフィス系のシステムが中心でした。しかし、今後はフロントオフィス系システムを〈入口〉として集まった情報を基幹系システムと連携する、あるいは省庁や民間事業者との連携する〈ハブ〉の役割も果たしていく――そうしたデータ連携やサービスの融合を支えるのがプラットフォームの役割です。これにより、デジタル化3原則(ワンストップ、ワンスオンリー、コネクテッド・ワンストップ)も可能となります。そうしたプラットフォームとして、スマート申請システムを進化させていきたいですね。

根本また、技術革新によってUI/UXなどももっといいものが登場してくるでしょう。その点では、当初掲げた「利用者にとって便利で身近なオンライン申請システムの実現」に向け、新しい機能の追加だけでなく、最新技術も柔軟に採り入れて引き続き〈使いやすさ〉を追求していきたいと考えています。

生山新型コロナによって、行政デジタル化の動きは一段とスピードを増しました。特に「GovTech」(政府:Governmentと技術:Technologyを掛け合わせた造語)分野ではベンチャー企業も続々と誕生しており、その動きはますます加速していくことでしょう。変化が常態となったいま、TKCもまた1985年から「TASK」というブランド名でシステムを提供し続けてきた実績に加え、フットワークの軽さやスピード感が重要になったと感じています。
 中長期の事業ビジョンに掲げる「行政効率の向上と住民サービスの充実、行政コストの削減を実現し、地域の存続と発展に貢献する」との方針の下、これからもスマート申請システムの早期完成、機能の充実に努めてまいりますので、ぜひご期待ください。

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