【ユーザー事例】スマート自治体へ、デジタル行政を積極推進
基幹系システム > 埼玉県坂戸市
総合政策部情報政策課 課長 三谷良昭 氏 / 係長 齊藤 惇 氏
- 住所
- 埼玉県坂戸市千代田1-1-1
- 電話
- 049-283-1331
- 面積
- 41.02平方キロメートル
- 人口
- 100,976人(2020年2月1日現在)
──2020年度から『坂戸市デジタル行政推進計画』がスタートします。
三谷 これは、従来の『坂戸市ICT推進アクションプラン』に続く新たな計画で、「官民データ活用推進基本法」に基づく市町村計画(策定は努力義務)を包含した計画としてまとめました。
具体的には、〈最先端のICTの活用〉や〈行政手続等のデジタル化への対応〉など六つの基本方針を掲げ、これに沿ってBPRの推進やマイナンバーカードの活用などの施策を推進します。なお、計画期間は5年間としましたが、技術革新のスピードを考慮し3年ごとに見直しを図る考えです。
人口減前提に、発想を転換する
三谷良昭 課長
──計画のポイントは何でしょうか。
三谷 やはり、第一は〈スマート自治体への転換〉が挙げられるでしょう。
少子高齢社会を迎え職員数の確保も厳しさを増します。これまでの延長線ではなく、人口減少を前提に少ない職員数でも行政サービスを維持・向上できる体制の構築が急がれますね。その実現には、AIやRPAなど最先端のデジタル技術の活用が欠かせません。また情報化というと、これまで〈行政事務の効率化〉に力点が置かれることが多かったですが、今後は〈市民サービス改革〉へも重点的に取り組みます。それが〈行政手続等のデジタル化への対応〉で、計画でも大きな柱となっています。
齊藤 坂戸市では現在、電子申請サービスを利用して住民票交付予約申請や児童手当にかかる手続きなどを行うことができますが、利用数はわずかという状態が続いています。
とはいえ、多くの市民がスマートフォン等を日常的に利用するようになったことで、今後、行政手続きのデジタル化へのニーズは確実に高まるでしょう。国も「22年度中にほとんどの住民がマイナンバーカードを保有すること」を想定し、さまざまな取り組みを進めています。そこで、市民視点でサービスを再構築する方針です。
その一環として19年8月からAIチャットボットによる問い合わせ対応サービスを開始しました。また、20年度には証明書コンビニ交付サービスを開始します。さらにマイナポータル等を活用したデジタル手続きサービスの拡大も考えています。例えば、子育てワンストップサービスと合わせた形で各種手続きを充実させることで、若い世代への利用拡大が期待できるのではないでしょうか。
──業務効率化も引き続きの課題です。
三谷 そうですね。さらなる業務の効率化の実現には、組織全体で業務の棚卸しや業務プロセスの改善などを進める必要があると考えています。これについては、関係部門と連携しながら最適解を検討することになるでしょう。
情報部門としては、システム周りの事務の効率化から考えていく方針です。その点で重視しているのが〈入力作業の省力化〉です。過渡期の問題とはいえ、しばらくはデジタル手続きと紙の申請書との並行期間が続くでしょう。これまで手書きの申請書をデジタルデータに変換し、システムに入力するのは“人の手”でしたが、今後はできるだけ人手を介さずに済むようにします。
一例がRPAやAI-OCRの導入です。19年度に実証実験を行い効果を見通せたので、20年度は本格運用を進めていきたいと考えています。また、「TASKクラウドかんたん窓口システム」にも期待しています。タブレット端末から申請手続きが行えるため、住民は申請書に記入する手間から開放され、入力された情報は「TASKクラウド住基システム」へ連携されるので職員の作業も軽減できます。
今後の課題は、行政データの活用
齊藤 惇 係長
齊藤 もう一つの大きな柱は〈行政データの有効活用〉です。これに先駆け、今春、統合型GISの更新に合わせ、住民情報がGIS上に日々反映される仕組みを導入しました。今後、地理情報をオープンデータとして公開するのに加え、各課の政策立案のための基礎資料としても有効に活用していきたいと考えています。
例えば、介護認定情報との連携により、災害時に支援が必要な住民の要介護度を地図上で確認するなどの活用が期待できます。また、年代や性別など条件抽出したデータをもとに約50メートルから250メートル四方のメッシュデータを作成し、他のさまざまなデータと組み合わせ、情報を見える化することで、各課が新たな気付きを得られるものとしたいですね。
──データ活用は今後の重要課題で、当社でも本格的な研究を開始しました。
三谷 GISは特に目新しいものではありませんが、どう活用するかはアイデア次第です。ぜひ一歩先行くデータ活用を実現していきたいですね。
20年1月からTASKクラウドが稼働を開始し、坂戸市の住民情報・税務情報等はTKCのデータセンターへ日々蓄積されることになりました。そうした行政データは有効に活用されてこそ意味があります。有用なオープンデータを公開すれば、民間事業者がそれを活用して新しい事業やサービスの創出、地域活性化につなげることができます。また、庁内においてもデータの詳細分析により、社会課題の解決へ役立てることが可能となるでしょう。
データを分析し仮説を立て、何度も検証し、成果を世に出していくには、行政サービスの“現場の知見”とICTのコラボレーションが欠かせません。そうした研究でもTKCと相互協力していけることを期待しています。
掲載:『新風』2020年4月号