【ユーザー事例】柔軟な発想と行動で“一歩先行く”業務環境を構築
基幹系システム > 神奈川県南足柄市
市民部市民課 課長(前情報統計班長) 井上伸行 氏 / 企画部企画課情報統計班 主査 長谷川誠 氏
- 住所
- 神奈川県南足柄市関本440番地
- 電話
- 0465-74-2111
- 面積
- 77.12平方キロメートル
- 人口
- 42,100人(2019年3月1日現在)
- URL
- http://www.city.minamiashigara.kanagawa.jp/
コストの“ムダ”を徹底排除
──今年1月21日から、「TASKクラウド」が本稼働となりました。
長谷川 サーバー等の保守完了に伴い、基幹システムをリプレースしました。クラウドに切り替えた理由は二つです。第一が、「コストの最適化」です。サーバーなどの保守期限(5年)のたびにシステムを更新していては十分な費用対効果を得られません。そこで機器の保守期限に関わらず、サービスとしてシステムの提供を受けることで費用対効果をより高めたいと考えました。
第二が、「重要データの安全な保管」です。自治体には、大規模地震災害などで庁舎が被災した場合でも必要な行政サービスを維持・提供することが求められます。また情報セキュリティーの観点でも、庁内に専用データセンターと同じセキュリティーレベルの環境を構築・維持するには膨大な手間とコストがかかります。そのため安全かつ安心なデータセンターサービスを利用したいと考えました。
今回は単独導入ですが、全国の自治体と同じシステムを利用しているという点でTASKクラウドは「自治体クラウド」とほぼ同じと考えています。
井上伸行 課長
井上 総合評価の結果、TKCに決めました。県内では、すでに綾瀬市や神奈川県町村情報システム共同事業組合(14町村)で基幹システムの移行実績があり、そのノウハウも生かせるだろうと考えました。限られた期間でしたが、職員と一緒に頑張ってくれた結果、大きな問題もなく移行できました。
──ノンカスタマイズ原則など、コストの最適化も徹底していますね。
井上 既存の “やり方”にこだわりシステムをカスタマイズすれば、当然、余分なコストが発生しますが、法令等に準拠したシステムであれば、運用方法に多少の違いはあっても結論は同じでしょう。条例や施行規則の見直しで済むのであれば、カスタマイズをせずにシステムに運用を合わせようというのが市の考え方です。これにより導入・運用コストを削減でき、また法制度改正対応でシステムの改修が漏れるといったミスを減らすことにもつながると考えています。担当課としては、運用方法の変更により業務へ支障が出ることを懸念していたのですが、TKCのサポートもあり大きな問題なく運用が開始できて安堵しています。
長谷川 また、ネットワークの強靱化対策によりLGWAN端末と住民情報端末の分離が求められ、その維持・管理にかかるコストや手間も増加しています。これを解決するためTKCへ逆提案し、TASKクラウド上の仮想化技術を駆使して、仮想ブラウザや仮想アプリケーションによるサービス環境を構築してもらいました。こうした利用環境は全国でもレアケースだそうですが(笑)。これにより繁忙期でも端末を追加することなく、設定を変更するだけでLGWAN端末から住民情報を見られるようになりました。その結果、維持・管理が楽になるとともに、コストを軽減することができます。今後、業務が拡大した場合も、ソフトウエアのライセンス数を増やせば対応できるだろうと期待しています。
市民も職員ももっと便利に
――窓口の業務改革にも積極的です。
長谷川 誠 主査
井上 7月から証明書コンビニ交付サービスをスタートするとともに、TASKクラウドかんたん窓口システムも合わせて導入します。これまでも総合窓口案内は実施していましたが、新たに異動手続きや住民票取得など各種手続きを行う際に申請書等の記入を一部簡素化でき、窓口サービスの向上が見込まれます。これにより市民がこれまで以上に“便利”になるのはもちろん、職員にとっても業務が効率化され“便利”になることを期待しています。初めての経験だけに市民課では多少の不安がありますが、その点は運用とシステムの双方でベストな方法を構築していきたいと考えています。私個人としては、この仕組みで市民サービスの向上や職員の業務がどれだけ効率化されるようになるか楽しみにしています。
長谷川 福祉相談支援体制の強化も検討しています。すでに2016年4月から、妊娠から出産、子育てまで一貫して支援する「出産・子どもネウボラ」をスタートしていますが、新たに福祉相談支援システムを導入し関係各部門の円滑な情報連携を図り制度横断による支援体制構築を目指します。
――常に一歩先を見据えていますね。
長谷川 その点では、AIやRPAなどにも注目しています。今回、仮想化技術を駆使した環境構築を逆提案しましたが、その根底には「南足柄市のことは自分たちで考える」という意識があると思います。何かをする際に先進団体の例を参考にしても、最小のコストで最大の効果を実現するためには自分たちなりのアレンジを加えます。
井上 社会情勢が急速に変化する中、常に改善の意識をもって業務を見直し、経常的なコスト削減に取り組むことが必要です。そのためにどうするか知恵を絞る。小さい市だからできないということは絶対にありません。
TKCのシステムは、マイナンバー時代を意識したデータ連携を実現している点で他社より優れていると思います。とはいえ、システムを利用する側の視点から見ると「もっとこうしてほしい」というところがまだまだあり、もっとシステムを進化させてほしいですね。業務の効率化や生産性向上など自治体が抱える課題は多く、それを解決するために職員とともに考え、 “よりよい方法”をもっと積極的に提案してくれることを期待しています。
掲載:『新風』2019年4月号