【ユーザー事例】コスト削減へ、6町村でクラウドを共同利用
基幹系システム > 群馬県吾妻郡町村情報システム共同化推進協議会
吾妻広域町村圏振興整備組合 事務局長 武藤賢一 氏 / 事務局総務企画課 補佐兼企画係長 富澤勝一 氏
- 事務局
- 群馬県吾妻郡中之条町西中之条135 吾妻郡町村会事務局内
- 電話
- 0279-75-4700
- 人口
- 58,387人(6団体合計)
- URL
- http://www.aga-kouiki.jp/
──基幹系システムの共同化に至った経緯を教えてください。
武藤 きっかけは、一部の町村長から「情報化コスト削減へ、いい手立てはないか」との問題提起があったことでした。吾妻郡6町村(中之条町、長野原町、嬬恋村、草津町、高山村、東吾妻町)は、もともと消防など15業務を共同処理するなど各種施策で協力してきた素地があります。発言を受けて実態を調査すると、6町村全体で関連経費が年間6億円を超えることが分かりました。そのような中で「自治体クラウド」の記事を目にして情報収集を進めるうちに一気に話が具体化し、2013年4月に「吾妻郡町村情報システム共同化推進協議会」を発足しました。
協議会では基幹系や内部情報系など六つの専門部会を設置し、実務に携わる職員をメンバーとして共同調達に向けた調査・研究を行いました。
不要なカスタマイズを
徹底して排除
武藤賢一 事務局長
──共同化の推進にあたり、留意した点は何でしたか。
武藤 柱に据えたのは、「コスト削減」「住民サービスの向上」「情報セキュリティー強化」の3点です。中でも最大の命題がコスト削減でした。いま、あらゆる業務でICTの活用が進んでいますが、これと比例して情報化コストも年々増加しています。
そこで具体的な検討にあたり、「ノンカスタマイズ」と「ベンダーロックインの回避」の方針を掲げました。そのため、専門部会の検討でもメンバーの意見を積極的に吸い上げる一方で、「それは業務上、本当に必要な機能なのか」という視点を外さないようにしました。また、「中間標準レイアウト仕様」を採用することで、ベンダーロックインの回避とともに円滑なデータ移行と費用の軽減も狙いました。
富澤 共同調達はプロポーザル方式により行いました。また、提案内容の審査・評価は、業務システムを利用する職員による「一次評価」と、システム全般と財政を所管する職員による「二次評価」の二段階方式としました。理由は、機能の優劣に加えて導入・移行、運用にかかるコスト面も考慮した上で判断したいと考えたものです。
総合評価の結果、TKCシステム(住基・税・福祉)の採用を決めました。2016年3月から本稼働を予定する中之条町を筆頭に、すでに3団体で移行作業を開始しており、2017年11月までに全団体の切り替えを完了する予定です。
──TKCシステムの採用を決めた理由は何だったのでしょうか。
富澤 中間標準レイアウト仕様に対応し、またユーザーの要望を採り入れて進化し続けるパッケージシステムであることなど、われわれの要望を汲み取った提案だった点が評価されたのだと思います。中でも大きな決め手となったのは、自社データセンターの存在です。マイナンバーの利用開始にあたって情報セキュリティーの強化は最重要課題ですからね。一次評価段階のプレゼンテーションでデータセンターの紹介ビデオを拝見したのですが、これにより潮目が変わったように感じました。
武藤 6町村のうち5団体が同じベンダーの基幹システムを利用していたため、そちらで決まると予想していたのですが、一次評価でもTKCシステムの評価が上回ったのには驚きました。
クラウドサービスの導入実績に加え、これまでにも数々の共同化案件を支援していることで「TKCへの安心感」はあったと思います。ただ、それ以上に大きな要因となったのは「職員の意識変化」でしょう。つまり、過去にこだわることなく、将来のために「よりよいシステムは何か」という視点で客観的に評価したということです。この変化を大変頼もしく感じています。
職員主体で進められた共同化
成功の秘訣はトップの理解
富澤勝一 課長補佐
──職員主体で共同化を推進したのは、珍しいケースです。成功の秘訣は。
富澤 第一が、「各町村長の理解」です。トップが率先垂範することで、職員の意識も共同化へ向かっていったのだと思います。協議会メンバーには、町村長からたびたび「スピード感を持って成果を出せ」と檄が飛んでくるほどでした(笑)。
第二が、「職員の連携体制の構築」です。当初はシステム切り替えへの不安や不満もあったと思いますが、職員自身に一次評価の採点表の作成まで任せたことで、〝わが事〞として前向きに考えるよう意識が変わっていったのではないでしょうか。
これを機に今後ぜひ取り組みたいのが、業務継続性の観点からの「相互補完体制の確立」です。特に吾妻郡域には浅間山と白根山と二つの活火山があり、対策が急がれます。また基幹系システムを統一したことで、①帳票の印刷や封入封かん作業の共同調達、②業務の標準化による共同体制の確立──なども可能となり、これらも前向きに検討していきたいと考えています
武藤 ここのところ、6町村の担当者同士が顔を合わせる機会が以前に比べ減っていましたが、これを復活できたのはクラウド化のもう一つの大きな成果です。その意味で、システムの切り替えはゴールではなくスタートです。相互にレベルアップを図るためにも、担当者同士が集まる場を継続してつくっていきたいですね。そこには、ぜひTKCも参加して、最新情報の提供や新たな提案をしてくれることを期待しています。
掲載:『新風』2016年1月号