【ユーザー事例】地域の課題解決へクラウドを活用
基幹系システム > 和歌山県海南市
総務部 管財情報課 課長 橋本伸木氏 / 情報システム係 係長 宮尾雅司氏 / 専門員 岡島正子氏
- 住所
- 和歌山県海南市日方1525番地6
- 電話
- 073-482-4111
- 面積
- 101.19平方キロメートル
- 人口
- 53,927人(平成27年2月28日現在)
- URL
- http://www.city.kainan.lg.jp/
橋本伸木 課長
──これまでの情報化への取り組みを教えてください。
橋本 平成17年4月の合併(海南市、下津町)後、翌年には『海南市情報化計画』を策定し地域情報化の推進および電子自治体の構築を進めてきました。
一方で、当時から「東南海・南海地震」で想定される災害に備え、行政データの遠隔地でのバックアップなどの対策にもいち早く取り組んできました。海南市は紀伊水道に面した地域で、多くの住民が沿岸部に居住していることから津波避難の対策は重要です。また、庁舎も臨海部にあり倒壊や浸水による被害が懸念されているところです。
そこで、平成23年4月に5年間を計画期間とする『海南市行政情報化指針』を定め、ここ数年は仮想化技術やクラウドを活用した情報資産の一元化・共用化を進め、情報システム全体のコスト削減と情報資源活用の最適化を進めています。特に、災害発生時の初動で遅れない、庁舎が倒壊した場合でも情報発信を継続できる体制を整備するために、まず情報系システムのクラウド化から着手しました。
宮尾 その一環として25年度には、インターネット、メール、LGWAN、防災システムなどの行政系ネットワークや、小中学校のホームページなど教育系インフラのクラウド化を完了しました。
自然災害の脅威から情報を守るために
いち早く単独クラウドを決断
岡島正子 専門員
──26年12月に、基幹系のシステムもTASKクラウドへ移行されました。
橋本 和歌山県では、平成25年2月に開催された電子自治体推進協議会において自治体クラウド計画が発表されました。これは県下30市町村と県による協議会を立ち上げ、市町村規模や地理的・文化的近接性などを考慮して、3グループに分けてクラウド導入を進めていこうとするものです。
海南市では、もともと26年度中の基幹系システムのクラウド化を計画していたことに加え、特に東日本大震災以降、住民の価値観も大きく変わったことから、共同化の計画を待たずに、昨年12月、単独でTASKクラウドへ移行しました。これにより自然災害などの脅威から行政情報を守る対策を構築でき、まずはひと安心しています。
宮尾 今年1月には早速、通信回線切断を想定した緊急時の通信回線切り替え訓練も実施しました。
──なるほど。
橋本 また、法制度や社会環境、技術の変化のスピードも速く、これまでのように更新時期までシステムを固定的に考える必要もありません。加えて、クラウド化によりサーバーなどの機器や管理の費用低減、システム運用での人的負担の軽減が図れました。
岡島 クラウド化することでシステムの操作性やレスポンスの遅れなどを懸念していましたが、原課ではシステムが変わったことにも気づかないようです。また、移行作業の負荷もなく、大変スムーズで助かりました。
庁舎移転を機に
さらなる住民サービス向上を目指す
宮尾雅司 係長
──庁舎の移転を計画されています。
橋本 1月の市議会臨時会で、現在、津波浸水想定区域内にある庁舎を、平成29年10月をめどに高台へ移転することが決まりました。新庁舎は、災害時の司令塔、復旧復興拠点など危機管理の中心的役割を果たすこととなります。災害対策で庁舎移転を検討する自治体は数多くありますが、正式に決定したところはまだ少ないようです。また海南市では既存の建物を利用することで、新庁舎の整備の時間短縮と経費の削減を実現しています。さらに移転後は、跡地に図書館機能や公園など市民交流施設の整備も検討しています。ただ、新庁舎が市の中心から少し外れるため住民のアクセスが今後の課題となっています。そのため、コミュニティバスによる接続などを検討しています。
一方で「市役所へは住民の皆さまに足を運んでいただくもの」というこれまでの発想を変えることも必要です。そのために電子申請やテレビ会議システムを利用した相談対応、コンビニ交付サービスの導入など、ICTを活用することで、市役所へ足を運ばなくても済む仕組みをできるだけ取り入れていきたいと思っています。
また資産効率の観点から、移転を機に文書管理の方法についても見直しを始めています。具体的には簿冊管理方式からファイリングシステム方式への移行などで、最終的には電子文書や電子決済も視野に入れています。
──最後にTKCへ期待している点をお聞かせください。
橋本 全国各地で自治体クラウドが動き出していますが、その効果が見えてくるのはこれからだと捉えています。TKCクラウドも、今後さらなる進化を遂げ、各地の自治体クラウドに負けないシステムになってほしいですね。
掲載:『新風』2015年4月号