【ユーザー事例】 重視したのはサポート体制と信頼性への期待
庁内情報系ソリューション「公営企業会計システム」共同利用事例 > 奈良県内6市町
葛城市役所 企画部情報推進課長 米井英規氏
- 住所
- 奈良県葛城市柿本166番地
- 電話
- 0745-69-3001
- 面積
- 33.73平方キロメートル
- 人口
- 36,744人(平成25年3月1日現在)
- URL
- http://www.city.katsuragi.nara.jp/
米井英規課長
──奈良県では県庁の支援の下、平成22年12月にクラウドサービスによる共同調達を行われました。システムの共同利用に至った経緯を教えてください。
米井 奈良県では、いわゆる奈良モデルとして基幹系システムの共同化などさまざまな局面から市町村連携を進めています。そのきっかけは、平成21年10月に開催された県主催の首長研修会で山形県置賜広域のクラウド導入事例が紹介され、システム共同利用による経費削減効果に注目が集まったことにあります。いずれの市町村でも財政難やITに関する人材不足などの問題を抱えながら、相次ぐ制度改正や行政サービスの多様化に対応するために、システムの全体最適化と経費の適正化が重要課題となっていますからね。
そこで「奈良県基幹システム共同化検討会」を発足し、葛城市を含む7団体でクラウドサービスによる基幹系システムの共同利用をスタートしました。なお、葛城市では平成24年に基幹系システムが本稼働しています。
決め手はサポートへの安心感
──共同化の第2弾として、このほど公営企業会計システムについても共同で調達されました。
米井 きっかけとなったのは、平成26年度から適用される地方公営企業会計制度の見直しです。これに伴い、各市町村でシステム改修が発生しますが、それには多くの改修費がかかることも予想されるため、システム調達を含めた検討が必要と考えました。葛城市では、基幹系システムの共同利用により、一定の業務標準化や経費削減が図られたことから、「まずは共同化を検討する」という首長の方針があります。
そこで、奈良県基幹システム共同化検討会へ公営企業会計システムの共同利用について提案を行い、賛同する市町により部会を立ち上げて検討を開始しました。当初は基幹系システムと同じ枠組みを想定していましたが、最終的には4市2町(香芝市、葛城市、河合町、上牧町、御所市、五條市)で共同調達を行うこととなりました。
──調達にあたり、重視された点は?
米井 今回の調達は公営企業会計、固定資産管理、起債管理、貯蔵品管理と非常に限られた分野であり、また会計基準に沿ったシステムということもあって機能面では各社とも大きな差はないと考えていました。そこで、重視したのが次の2点です。
一つは「ネットワークインフラの信頼性」です。扱うのは行政情報の一つですから、クラウドサービスを採用するのであればLGWAN-ASPは必須であると考えました。これならばセキュリティ面で安心できますし、住民にも理解を得やすいと考えました。
もう一つが「サポート体制」です。クラウドサービスを共同で調達することで経費を削減することはできますが、利用する側の立場としては、システムが稼働した後のサポート体制が一番気になるところです。よく「導入時は安かったが、その後多くの費用がかかった」という話を聞きます。大規模な法改正ならば仕方ありませんが、小規模な改正でも多額の改修費が請求されるのはトータルコストで見ると決して削減にはつながりません。また、何かあった場合にも迅速に対応してほしいですよね。
そのため、今回の評価ではサポート面を重視しました。
──今回、TASKクラウド公営企業会計システムを採用していただきましたが、決め手は何だったのでしょうか。
米井 サポート体制と企業の信頼性です。例えば、研修体制では、システムの選定以前から各市町で公営企業会計の改正点について勉強会を開催してくれました。正直、最初はTKCのことをよく知らなかったのですが、これで信頼度が高まりました。
また、システムの移行時や稼働後の支援体制が明確であったことや、例年の改正についても追加の経費がかからないことなど、運用を開始してからも安心して任せられるなと感じました。
あとは企業としての信頼性です。今回は、公営企業会計システムの調達ということもあり、各社に財務諸表を提出してもらいました。これにより経営状況を確認することができ、他の評価委員も安心させることができました。
共同化で目指すもの
米井 共同化のメリットは経費の削減ということもありますが、それ以外にも広域での行政サービスの標準化を図ることなどがあります。
共同化にあたっては首長のリーダシップの下、パッケージソフトのノンカスタマイズ利用を前提とし、帳票の統一化、BPO(※)化を図りました。また、同じシステムを使うことで、自分たちで分からないことは近隣の市町に問い合わせたり、帳票もお互いに融通し合うことができるようになりました。こうしたことをきっかけに、今後は人材の交流や知識の共有なども進むのではと期待しています。
さらに、ベンダーと共同交渉ができるようになったことも大きなメリットですね。横連携という部分にもつながりますが、市町がお互い得手・不得手な部分を補完しながら、ベンダーと一緒になってよりよいシステムを実現する体制が構築できたと考えています。
──最後に今後の計画を教えてください。
米井 まずは、公営企業会計システムを6市町で立ち上げることです。TKCさんにはシステムの円滑な移行はもちろん、システム稼働後のサポートに大いに期待をしています。
また、今後は人事給与システムなど他のシステムについても共同化を進めていく予定です。住民の生活圏が、既成の市町村の区域を超え広域化していることを背景に、多様化する住民ニーズに対応するためには、市町村間の連携による効率化は有効な手段といえます。公営企業会計の分野でも共同化の成果を上げることで、より多くの市町村に関心をもっていただきたいですね。
※BPO(business process outsourcing)とは、業務処理(ビジネスプロセス)の一部を、外部の事業者にアウトソーシングすること。
掲載:『新風』2013年4月号