【ユーザー事例】早期の財務書類作成を実現

日々仕訳 活用事例 > 奈良県香芝市

総務部 次長 仲 哲司氏 / 総務部財政課 主幹 吉田清孝氏
主査 白石敬治氏 / 総務部管財課 主幹 三井史敬氏

2016年4月より、全国に先駆けて統一的な基準に対応した日々仕訳をスタートさせた奈良県香芝市。今夏には、新基準に基づいた財務書類も作成した同市に、日々仕訳の運用状況や財務書類作成等について伺った。

住所
奈良県香芝市本町1397番地
電話
0745-76-2001
面積
24.26平方キロメートル
人口
79,079人(2017年8月末日現在)
URL
http://www.city.kashiba.lg.jp/
登米市は、岩手県との県境にある宮城県北部の市。2005年、登米郡8町と本吉郡津山町の合併で誕生した。古くから米の名産地として知られている。写真は、東京五輪のボート・カヌー競技の会場候補地となった長沼ボート場(左)と、第6回観光映像大賞受賞の『Go! Hatto 登米無双』のポスター(右)。

事前の予算科目整備で99%超の仕訳の自動変換を実現

──統一的な基準への対応として、全国に先駆けて昨年4月から日々仕訳による処理を開始されました。実際に、1年間運用されていかがでしたか。

 日々仕訳を開始するにあたって、2016年度予算編成準備の段階で予算科目を仕訳の単位に細分化しました。これにより、「TASKクラウド公会計システム」上で自動仕訳が可能となったため、各課では複式簿記による仕訳を意識することなく従来と同様のやり方で伝票を起票でき、問い合わせなどはほとんどありませんでした。

白石 また、心配していた普通建設事業費などでも、運用開始当初こそ多少の質問(資産として計上するのか、費用なのかの判断)はありましたが、予算編成から各課が主体となり金額を資産と費用に分けていたので、大きな混乱はありませんでした。

──具体的には、どのように予算科目を整備されたのですか。

仲 哲司 次長

仲 哲司 次長

白石 歳出科目については節、細節、細々節のうち、細節の単位で仕訳が同一の予算科目をグルーピングしました。例えば13節の委託料であれば、細節科目を「ソフトウエアとして資産計上するもの」「ソフトウエア以外で資産計上するもの」「物件費として費用計上するもの」の三つに分けました。そして、それぞれの細節科目に対して細かい支出を細々節科目として関連付けました。
 これにより、例えば庁舎の清掃委託料の細々節科目を選択すると、その上の細節の段階で「(借方)PL物件費/(貸方)CF物件費等支出」の仕訳が自動で選択されることになりました。

 このような取り組みの結果、16年度の伝票件数は歳入2万7700件、歳出3万2000件、歳計外現金6000件に対して、仕訳への自動変換率は歳入が99・95%、歳出が99・78%、歳計外現金は100%と、ほぼ自動で変換できています。予想以上の成果に驚いていますが、これだけ変換率が高いのは、当初予算編成時に手間をかけて予算科目と仕訳で1対1の関係となるように予算科目を細分化したからにほかなりません。

白石 一方で、あえて自動変換しなかった科目もあります。例えば、歳出の21節(貸付金)や23節(償還金、利子および割引料)、25節(積立金)です。これらは短期と長期の振り分けを伝票起票時に判断できないと考え、初めから期末に仕訳を行うように予算科目を整理しました。実際、これらについては件数がそれほど多くなかったため、期末の整理作業自体は短時間で終了しました。

決算統計後2週間で財務書類を作成

──16年度の財務書類の作成についてはいかがでしょうか。

吉田清孝 主幹

吉田清孝 主幹

 大臣通知やQ&Aなどでは、財務書類等を次年度予算に活用するためにも、毎年8月中に作成して9月に公表するよう要請されています。当市では、決算統計と交付税算定業務が終了した7月中旬から作成に着手して、おおむね2週間で一般会計等財務書類を作成することができました。

──示された時期より、早く作成されていますね。

 早期に作成できたポイントは、前述のとおり伝票からの仕訳変換をリアルタイムで行えたため、ほとんどの仕訳が完了した状態で、財務書類の作成に取りかかることができたことです。財務書類を作成する時期は決算統計などと重なるため、総務省が示した時期に作成・公表するためには、当市の体制では期末一括による仕訳変換では間に合わないとあらためて感じました。その意味でも、日々仕訳を選択したのは正しかったと考えています。

──財務書類の作成の流れについて、詳しくお聞かせください。

白石敬治 主査

白石敬治 主査

白石 まず、「自動仕訳の対象とせず仮仕訳としたもの」について、仕訳を確定(長期と短期に振り分けるなど)しました。続いて、「固定資産の減価償却」についての仕訳を作成しました。当市の場合、財務会計システムと固定資産管理システムが連携し、伝票起票時に固定資産も登録される仕組みとなっているため、減価償却仕訳もボタン一つで自動作成できました。
 次に「未収金・長期延滞債権・不納欠損の整理仕訳」や「退職手当・賞与等引当金」など減価償却以外の非資金仕訳を作成しました。これらの仕訳も、資産負債内訳簿の入力により自動で作成できました。
 また、当市では統一基準で定める「一般会計等」に含めるべき会計は二つあったため、これにかかる内部取引の相殺消去が必要でした。しかし、これもシステムが伝票データから内部取引を抽出して仕訳を自動で作成できました。最後に附属明細書と注記を作成し、一般会計等財務書類を完成させました。

一般会計等財務書類作成の流れ

──統一基準による財務書類を作成されて気付いた点は。

三井史敬 主幹

三井史敬 主幹

三井 今回は日々仕訳の初年度ということもあり、作業の手戻りがいくつか発生しました。例えば、リースの扱いが最後まで決まらなかったため、固定資産データを取り込み直して減価償却仕訳や附属明細書を再作成することがありました。

吉田 また、100万円を資産計上として支出し、固定資産台帳まで完成した後に、実は100万円のうち20万円は費用計上すべきであった──などです。このように予算科目の選択を誤って支出した場合は、更正振替伝票を起票して予算科目を変更しています。この変更に伴い固定資産台帳も修正(20万円減)する必要があり、手間がかかりました。
 ただ、この点については、更正振替時に固定資産台帳へも連携するようにシステムを機能強化していただけるとのことなので、安心しています。

三井 やはり固定資産における資産と費用の判断は、各担当課では難しい部分もあります。現状は全庁的に研修等を行った上で、判断がつかない場合はその都度確認や相談をしてもらっています。これに加えて管財課では「固定資産の運用の手引き」を作成し、来年度に備える予定です。

白石 また、附属明細書の作成では「行政コスト計算書に係る行政目的別の明細」について、総務省のマニュアルに詳細な作成方法が規定されていないことから、独自の判断が必要となり、確定までに時間がかかりました。通常の執行であれば、款などから付設できますが、引当金などの非資金仕訳をどのように行政目的別に分けるか判断に迷いました。

財務書類をいかに予算編成に活用するか

──財務書類の活用についてはどのように考えられていますか。

 国より統一的な基準が示されたことで、財務書類の他団体比較が可能となります。それを予算編成にも活用していきたいと考えています。また、整備した固定資産台帳を活用して将来のコストを含めたライフサイクルコストを算定し、予算編成に反映できればと考えています。
 これにより、各担当課が他団体比較やライフサイクルコストを参照することで、より適切な予算が編成できるようになると期待しています。

吉田 予算の査定自体も変わってくると考えています。これまでは、査定にあたり判断材料となる資料が少なかった部分もありました。これからは、財務書類や固定資産台帳を参照することで従来とは違った視点で査定ができるものと期待しています。

白石 固定資産台帳が整備されたことで、資産として計上された履歴等を容易に確認できるようになりました。これまでは、担当者の頭の中で修繕や使用年数などを考慮した予算編成がなされてきました。しかし、これからはこれらが明示されることで、判断する側としてもより的確なチェックが可能になると考えています。

三井 さらに、これまで施設の外壁、電気設備、機械設備など付帯設備にかかる修繕の履歴までは網羅的に整理されていませんでした。これらが固定資産台帳に履歴として明記されるようにシステムが対応すれば、今後の修繕の必要性をより的確に把握できるようになると期待しています。

──今後の計画をお聞かせください。

 財務書類は、単に作成すれば終わりというものではありません。書類の活用もですが、まずは議会・住民への説明が求められます。特に、議会へは財務書類の金額の根拠を説明する必要があります。今回は、金額の内訳資料(伝票・予算科目や仕訳、固定資産の一覧)を別途作成しましたが、今後はこれらについてシステムで容易に確認・出力できるようになると聞いており、大いに期待しています。

白石 今回、システムによる仕訳の自動変換機能により、各課の職員はほとんど意識せずに日々仕訳の対応はできましたが、職員のスキルアップは重要であると考えています。当市では、従来より複式簿記の基礎的な研修を実施しています。これは、各課においても財務書類を活用してもらうためで、今後もこの取り組みは継続していく予定です。

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