【ユーザー事例】 システム刷新で行政経営に関わる業務効率を改善
庁内情報系ソリューション「公会計システム」 > 奈良県香芝市
香芝市役所 企画部企画政策課 課長 奥山善弘氏 / 主事 芳倉宏文氏
- 住所
- 奈良県香芝市本町1397番地
- 電話
- 0745-76-2001
- 面積
- 24.23平方キロメートル
- 人口
- 78,017人(平成25年11月末日現在)
- URL
- http://www.city.kashiba.lg.jp
奥山善弘課長
──香芝市では、このほど財務会計システムの見直しを行われました。移行に至った経緯を教えてください。
奥山 これまで利用していた財務会計システムは、平成7年度に庁内設置型として構築したもので、経年による機能面の不足などが生じていました。特に、業務効率化の観点では、地方公会計制度改革に伴う財務諸表の作成に加え、契約管理や公有財産管理、事務事業評価との効率的な連携が必要不可欠です。しかし、従来は担当部署が個々にシステムを調達していたため財務会計システムとの連携が困難でした。また、業務継続性の確保も喫緊の課題でした。
そこで財務会計システムが更新期を迎えるのを機に、一連の業務システムをクラウド型のパッケージで再構築することを決め、平成25年6月にRFP(提案依頼書)による調達を行いました。
選定時に取り組んだ二つの工夫
──システム選定にあたり、どのような点を重視されましたか。
奥山 選定にあたっては、①原則、システムのカスタマイズは行わない、②セキュリティーレベルの高い回線を使用したクラウドサービスとする──などに留意しましたが、最も重視した点はシステムの“使いやすさ”です。これを見極めるため、選定では二つの工夫を試みました。
一つが、選定チームを各課の実務者で構成したことです。多くの場合、選定委員は担当部門の部長や課長で組織されますが、香芝市が求める機能を備えたシステムであるかどうかは実務担当者でなければよくわかりませんからね。実際にシステムを使う係長や主査などをメンバーとすることで、十分に納得できるパッケージシステムを選ぶことができるのではないかと考えました。
そして二つ目が、提案に応じたベンダー4社を一堂に会し、“見本市”のようなスタイルでデモンストレーションを実施してもらったことです。
芳倉 具体的には、同じ会議室の中に各社の説明コーナーを設け、選定チームのメンバーが順番に見て歩くようにしました。こうした“見本市”方式によるデモは非常に珍しいようですが、メンバー個々に自分が担当する業務に関して説明を受け、細部にわたるシステムの機能確認や、質問ができるという点ではとても有効でした。また、一般に最後に受けたデモやプレゼンほど印象が強く残るといわれますが、各社のシステムをその場で比較できたことで、自分たちにとって、よりベストな選択肢はどれか冷静に判断することができたのではないかと考えています。
そうしたことを経て、総合的に評価した結果、最終的に「TASKクラウド公会計システム」の採用を決めました。
──決定要因は何だったのでしょうか。
芳倉宏文主事
奥山 機能面では、予算編成から予算執行、決算、行政評価までの一連の業務をスムーズに行える点を評価しました。例えば、TASKクラウド公会計システムでは、サブシステム(TASKクラウド行政評価システム)によりエクセルで作成した実施計画の様式をそのまま取り込める上に、実施計画や行政評価の結果を次年度の予算編成へ容易に連携することができます。また、関連システムとの連携により数値や指標など客観的なデータをもとにした基礎資料の作成も簡単で、住民や市議会からの情報提供要望などへも柔軟に対応できるようになると期待しています。
またサポート面では、何かあった場合でも即座に担当者が駆けつけてくれる点に加え、現在、国が検討を進めている「今後の新地方公会計の推進に関する研究会」についても対応していく方針を明確に表明してくれたことで、将来においても継続してシステムを利用し続けることができる安心感を評価しました。
芳倉 7月に導入を決定し、10月には予算編成業務をスタートするという非常に短い移行期間でしたが、予め新システムへ予算の積算データも含めて去年のデータを載せ替えてくれたことで、大きな問題もなく本稼働を迎えています。今回、提供ベンダーが変わったことで、システムに慣れるまでは職員たちも多少の不安があったようですが、運用開始後も操作に関する質問はさほど多くはなかったのでほっとしています。
諸課題の解決へクラウドを積極活用
──今後の展望について教えてください。
芳倉 従来の財務会計システムには市独自の機能が多くありましたが、今回、カスタマイズは極力行わないという方針の下、多くの市町村で活用されているパッケージシステムを選定しました。これをフル活用することで、この機に業務内容の見直しにつなげていきたいと考えています。とはいえ、財務会計システムは行政経営の基盤となるものです。活用する中で細かな要望もいろいろと出てくると思いますが、TKCでは他団体の運用状況も見ながらシステムの標準機能を継続的に強化していくということなので、この点では大いに期待しています。
奥山 今、市町村を取り巻く環境は社会保障費の増大や税収減などによる財政状況の悪化に加え、番号制度の創設や社会保障と税の一体改革などに伴う社会制度の大規模な改革といったさまざまな課題へ対応することが求められています。しかし、人員は限られます。
そうしたことを背景に、香芝市では近隣6市町とともに「奈良県基幹システム共同化検討会」を発足し、24年からクラウドによる基幹系システムの共同利用を開始しました。財務会計システムについても以前から検討していましたが、システム更新時期の都合もあって今回は単独調達となりました。しかし、経費の適正化や業務継続性の確保などを考えると、市町村で利用されるさまざまなシステムがクラウドへ切り替わっていくことは確実です。先行して財務会計システムをクラウドに移行した経験を他市町とも情報共有し、今後の共同化の検討に役立てていければと考えています。
掲載:『新風』2014年1月号