[診療圏調査] 患者動態調査による増患対策
フクダ電子株式会社 病設企画部 石川 智敏
経営改善をする際の現状分析は、現在ある問題点を明確にし、改善計画を立案するうえで非常に有効な手段といえる。この経営改善の第一歩ともいえる現状分析を弊社が実施している患者動態調査を例に、ここで紹介する。
市場調査と患者動態調査
弊社は開業地選定において、独自のシステムにより市場調査を実施し、1日の外来患者予測を導き出す。毎月更新される最新の医療施設情報と全国にいる地域担当者からの詳細な情報とを併せて提供する市場調査は、先生方にも好評で、開業地選定という大きな意思決定に少なからず貢献していると自負している。しかし、ここで提供した市場調査も開業後は日々の診察に追われ、次第に忘れ去られるのが常である。開業後一定期間を置いた中で、再度この市場調査と現状の患者動態を比べ、地域的な戦略を再構築するよう開業ドクターには提案している。
患者動態調査とはレセプトコンピュータから患者データを抽出し、来院患者の住所地を地図上に落としこみ、実質診療圏を導き出す。また、地図上には市町村別人口とその地域での市場占有率を色分けして表現し、「重点戦略エリア(増患が見込める地域)」と「目標達成エリア(目標値の集患ができている地域)」の見極めをよりわかりやすい形で表している。
実質診療圏と地域戦略
平成15年4月にA市郊外にて開業したA医院の場合、開業前に実施した市場調査では診療圏を半径1.5kmと仮定し、1日外来患者予測を59人と割り出した。1年が経過し平均外来数は55人/日と順調に推移していたが、新患の伸び悩みに危惧していた。そこで、患者動態調査を実施。実質診療圏は半径4km圏であることがわかり、また重点戦略エリアはK市S町とN町であることが判明した。S町には同時期に開業したB医院が位置しており、この医院に集患されていることはほぼ予想がついた。そこで目標達成エリアの電柱広告の本数を減らすとともにK市国道沿線への建て看板を設置。広告投資の比重を重点戦略エリアへとシフトした。また、同じ内科系のB医院との差別化をはかるため呼吸器を専門とするA医院はCOPD患者の発掘に注力し戦略を進めていくこととした。地域新聞への広告と健康相談の掲載、またK市健康セミナーの実施を試みた。また、商圏内人口年齢比率に比べ、来院患者の年少人口比率が高いことから、待合空きスペースにはキッズコーナーを設けることとし、子供用書籍や玩具を充足した。現在、来院患者からの評判も良好で、K市からの新患も徐々に増加して 先生曰く「自院の診療圏の実際範囲が分かれば地域における戦略がたてやすく、また開院後の競合施設も明確にすることができる。無駄な広告や設備を再度現状に合わせた形で変更することで新たな患者を呼び込むことが期待でき、また現状の患者様への更なるアメニティの充足にもつながる」
現在は、この実質商圏である半径4km圏内の外来患者予測数80人/日を目標とし、さらに増患対策を推進している。
以上、開院前に調査した市場調査を再度現状の患者動態と比較しながら検討し、その地域における増患対策を早期に打つことは、陳腐化した資本投下を効率的に配分することができ、さらなるサービスの質的向上と地域におけるアピールの機会を増大させることができる。患者動態調査は地域医療圏での自院のポジショニングを明確にし、他院との差別化、今後の経営戦略を打つ上でも有効な手段であると考える。
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