特集 診療報酬・介護報酬・障害福祉サービス等報酬改定
医療・介護・障害の連携・補完 トリプル改定の改定率が決まる
団塊の世代がすべて75歳以上となる2025年を前にトリプル改定が実施される。物価上昇という状況下で行われる報酬改定であり、さらに賃上げ対応も必須の取り組みとなる。注目された改定率は診療報酬、介護報酬、障害福祉サービス等報酬はいずれもプラス改定となったが、関係者にとって諸手を挙げて喜べる結果とはなっていない。報酬改定の施行時期については、診療報酬は6月と後ろ倒しとしたが、介護報酬は医療との関連の大きい居宅療養管理指導、訪問看護、訪問リハ、通所リハの4サービスは6月、そのほかのサービスは4月となる。また、障害福祉サービス等報酬についても4月施行。なお、介護・障害の処遇改善加算は、補正予算で5月まで引き上げ対応をしているため、6月施行となる。それぞれの報酬改定の基本方針やポイントを見ていくことにする。
診療報酬
令和6年度の診療報酬改定は、2023年12月20日の大臣折衝を踏まえ、本体部分を0.88%引き上げ、薬価等について1%引き下げ、全体としては0.12%の引き下げで決着した。
決定した改定率+0.88%のうち、0.61%分を「看護職員や病院薬剤師などの処遇改善」に、0.06%分を食材料費の高騰への対応として「入院の食費増における低所得者支援」に使う。一方で「生活習慣病を中心とした管理料や処方箋料の再編等」の効率化・適正化で▲0.25%とする。これらを合わせた実質的な改定率は+0.46%となる。
また、良質な医療を効率的に提供する体制の整備等の観点から「医療DXの推進による医療情報の有効活用等」「調剤基本料等の適正化」について着実に改革を進める。加えて、医療現場で働く方にとって、令和6年度に2.5%、令和7年度に2.0%のベースアップへと確実につながるよう、配分方法の工夫を行うとしている。
令和6年度の「診療報酬改定にあたっての基本認識」と、「改定の基本的視点と具体的方向性」は以下のとおりとなっている。
改定にあたっての基本認識
▶ 物価高騰・賃金上昇、経営の状況、人材確保の必要性、患者負担・保険料負担の影響を踏まえた対応
▶ 全世代型社会保障の実現や、医療・介護・障害福祉サービスの連携強化、新興感染症等への対応など医療を取り巻く課題への対応
▶ 医療DXやイノベーションの推進等による質の高い医療の実現
▶ 社会保障制度の安定性・持続可能性の確保、経済・財政との調和
介護報酬
■ 改定の4つの柱
改定にあたっての基本的な視点として、
①地域包括ケアシステムの深化・推進:認知症の方や単身高齢者、医療ニーズが高い中重度の高齢者を含め、質の高いケアマネジメントや必要なサービスが切れ目なく提供されるよう、地域の実情に応じた柔軟かつ効率的な取り組みの推進
②自立支援・重度化防止に向けた対応:高齢者の自立支援・重度化防止という制度の趣旨に沿い、多職種連携やデータの活用等を推進
③良質な介護サービスの効率的な提供に向けた働きやすい職場づくり:介護人材不足の中で、さらなる介護サービスの質の向上を図るため、処遇改善や生産性向上による職場環境の改善に向けた先進的な取り組みを推進
④制度の安定性・持続可能性の確保:介護保険制度の安定性・持続可能性を高め、全ての世代にとって安心できる制度を構築
の4点に集約する。
■ 「介護職員等処遇改善加算」への一本化(新設)現行で介護職員の処遇改善の加算は「処遇改善加算」「特定処遇改善加算」「ベースアップ等支援加算」の3つがあるが、これを一本化して賃金改善を申請する際の事業者の事務負担の軽減と、利用者にわかりやすい制度にするととともに、事業所の職員への柔軟な賃金配分を可能にすることを考えている。
新たな加算は「介護職員等処遇改善加算」との名称で、4段階の区分を設け、既存の3加算の要件を組み合わせるかたち(5頁図表参照)を検討している。
なお、4月・5月分の現行の「介護職員処遇改善加算」等を算定するために必要な計画書の提出期限を4月15日とする予定とのことだ。
障害福祉サービス報酬
プラス改定の外枠で処遇改善加算の一本化の効果等があり、それを合わせれば改定率+1.5%を上回る水準となるとしている。報酬改定の主要な事項としては、①障害者が希望する地域生活を実現する地域づくり、②社会の変化等に伴う障害児・障害者のニーズへのきめ細かな対応、③持続可能で質の高い障害福祉サービス等の実現のための報酬等の見直し――の3点。
また、賃上げをはじめとする人材確保への対応は喫緊かつ重要な課題として捉え、介護報酬と同様に、事務負担を軽減する観点、利用者負担の理解を得やすくする観点、柔軟に事業運営を可能とする観点から一本化の方向で検討している。
(「TKC医業経営情報」2024年2月号より)