search税理士・公認会計士のご紹介

病医院訪問・MX活用事例 一流のデザインと接遇を強みに クリニックをさらなる成長へ

医療法人エイレイテュイア 岡崎バースクリニック

202005_02-1


理事長・院長 岡崎 隆行(おかざき・たかゆき)

福島県郡山市にある医療法人エイレイテュイア岡崎バースクリニックは、昨年クリニックのリニューアルを行った。国際的な賞を受賞したその美しいデザインと、徹底したスタッフ教育による細部まで行き届いた接遇を強みに、さらなる飛躍を遂げた。江戸時代より続く長い歴史を持つクリニックをどのように変革させたのか。昨年、理事長に就任した岡崎隆行氏に話を伺った。

DATA医療法人エイレイテュイア 岡崎バースクリニックimg_b0291_02.jpg

所在地福島県郡山市安積2-335
TEL:024-945-8080
https://www.okazaki.or.jp
診療科目

産科・婦人科
病床数 19床(うちLDR3床)  

診療時間午前   9:00~12:30
午後 14:00~17:00
月~水曜日・金曜日・土曜日

240年の歴史を誇るクリニックがリニューアル 国際的なデザイン賞で5つ星を獲得

――貴院には長い歴史があるそうですが、まずはクリニックの概要について教えてください。

岡崎 当院は江戸時代から続く240年ほどの歴史があります。当時から白河藩の藩医として、地域医療に貢献してきました。私の父の代になってからここ郡山市に移り、1980年に岡崎産婦人科として開院しました。私自身は東日本大震災の直後に戻り、昨年理事長に就任しています。そのタイミングで老朽化していたクリニックの建て替えを行い、2022年11月にプレオープン、4月にグランドオープンとなりました。

――建て替え後のクリニックは、国際的なデザイン賞である「International Propaty Awards」で、最高賞となる「Best Public Service Interior Japan」を受賞されているそうですね。

岡崎 温かみがあるラグジュアリー感が出るように、内装の色味や間接照明は非常にこだわりました。設計を担当したのは「ozi design works」です。分娩施設の設計実績は1件だったのですが、それ以外の商業施設などのデザインの良さにも魅了されお願いしました。
 設計にあたっては話し合いを重ねて、スタッフが使いやすいようにもしています。たとえば沐浴室は、アイランドキッチンのように部屋の中央に沐浴を行うスペースを作りました。スタッフとお母さん方が対面で向き合うことで、指導が行いやすくなるからです。
 また、バックヤードの動線を広くとりスタッフ同士が行き来しやすくしました。バックヤードが使いにくくては、労働意欲の低下につながるからです。

img_b0255_04.jpg
タイル装飾が特長的な新生児室

――患者数や患者層について教えてください

岡崎 外来患者は1日平均100人ほどで、多いときは140人を超えます。妊婦健診と婦人科の割合はほぼ半々で、患者層は9割が20~30代の方です。
 建て替えを行ったタイミングで患者数は一気に伸びました。分娩者数は1~9月の時点で、昨年1年間の分娩者数を超えています。去年は月40件前後だったのですが、これが急激に増加してしまいました。
 ありがたいことではありますが、急激な分娩数の増加は事故の原因になりかねません。今後は毎年1割増程度のペースで、少しずつ分娩数を増やしていき、クリニックの体制を築いていく必要があります。
 また、診療圏が非常に広いことが当院の患者層の特長です。というのも福島県は東日本大震災の影響もあって一時期県内の出生数が大きく下がり、開業医も次々閉院してしまいました。分娩を取り扱う産婦人科医の数は、人口10万人あたりで日本ワースト3です。そういった事情もあり、県南地域全域をカバーしているのはもちろんのこと、栃木県北部の那須などから来られる方もいらっしゃいます

img_b0255_04.jpg
対面での指導が可能な沐浴室


――現在のスタッフ構成について教えてください

岡崎 スタッフは、常勤医師2人、助産師16人、看護師7人、看護助手3人、総務9人、事務6人で、産休育休を取得しているスタッフがいるため稼働している人数は41人になります。これに加えて、レストラン・清掃の外注スタッフの方がいます。とはいえ、現在でもスタッフの数が十分とは言えません。現在の分娩数の伸びに合わせるならば、ゆくゆくは50人以上のスタッフが必要になってくると考えています

「仕事」以外の「プラスアルファ」も求めたい 新卒採用一本に切り替えゼロから教育

――採用面での苦労はないのでしょうか

岡崎 以前は医療事務の採用には苦労していましたが、一時期から新卒採用に切り替えました。経験者の採用は非常に難しくそこで手をこまねいているよりは、新卒採用に舵を切り教育していくほうが、結果的にはクリニックにプラスになると判断したのです。
 また、たしかに経験者を採用すると初期の教育は少なくすむのですが、当院のスタッフに求める「一流ホテル並みのサービス・接客」にはなかなか慣れてくれません。もちろん、「仕事」ができる方が多いのは事実ですが、当院では「仕事」以外の「プラスアルファ」も求めたい。ですから、新卒者を採用してゼロから教育を行ったほうが、結果的に早く当院の仕事に慣れてもらうことができると考えたのです

――接遇には非常に強いこだわりがあるのですね

岡崎 クリニックが新しくなったことで、患者さんが抱く当院に対する期待は非常に大きい。つまり、それだけサービス面も充実させなければ、患者さんは満足してくれません。見かけだけがいい「期待はずれ」のクリニックに終わってはいけないのです。
 私たちが意識しているのは、「お産までは患者さんだけれど、お産後はお客様」ということです。お産後も「患者さん」のままでは、「お客様」としての満足度を高めることもできませんし、口コミも広がりません。
 ですから言葉遣いや所作といった細部にいたるまで、接遇を徹底させる必要があります。私たち医療従事者は医療の「専門家」で、医療事務は事務の専門家です。それぞれの仕事はできてあたりまえで、むしろそれ以外の部分で差別化しなければなりません。

img_b0255_04.jpg
フレンチのフルコースなどが提供されるレストラン

――患者満足度向上のために、他にも行っていることがあれば教えてください

岡崎 産前から産後まで、患者さんの心のサポートを充実させています。当院では「プレママ会」を開催しており、院内見学を行った後に助産師による質疑応答が行われ、出産前の患者さんの不安を解消しています。また、産後も利用者の方が安心して相談できる環境をつくるために「ママカフェ」を開催しています。このコロナ禍の3年間、対面で相談できる環境はなく、お母さん方は不安な思いを抱えながら子育てをしてきたと思います。ですから、子育ての悩みや、子どもの成長を一緒に共有する場を作りたいと思いました。赤ちゃんが生まれてから、1か月健診で「さようなら」ではなく、その後のつながりも作っていく。そのためにも、ベビーマッサージ教室、ヨガ教室、離乳食教室、ズンバ教室など、さまざまな教室を開催しています。
 また、レストラン内においては、サラダバイキングやデザートバイキングの取り組みも始めました。デザートバイキングは年に4回、クリスマスなどの行事ごとに提供していて利用者の方には大変好評です。出産後の患者さんには、「お祝い膳」というコース料理を提供していて、これも大変好評です

――その上で、各スタッフに「専門家」としての活躍も求めているわけですね

岡崎 これだけの分娩数をこなすためには、スタッフの技術力は欠かせません。スタッフ教育は積極的に行っており、たとえば、NCPR(新生児蘇生法)の資格は全スタッフに取得させています。それ以外でも研修・勉強を行う際の受講費は全額当院で負担しており、積極的に自己研鑽を促しています。
 こうした研修・教育体制を作り上げていることもあって、大学病院や総合病院の助産師出向、看護専門学校からの病院実習受け入れも行っています。これは、当院が地域医療への貢献を理念としているからです。元々の出生数の低下に加えて、総合病院ではリスクがある出産が中心になりつつあり、それだけ「通常のお産」の数が少なくなっています。ですから、助産師の教育において大切な「正常なお産の数をこなす」という経験を積むことが難しくなっており、そこに貢献したいと考えました

複雑な経理管理を支えるMX3 今後も地域医療のためにクリニックの発展を

――貴院では、MX3(TKC医業会計データベース)を経営管理に活用されているそうですね。

岡崎 当法人では仕訳数が1,500近くあり、膨大な量にのぼります。そのため、郡司洋一税理士がともにサポートしてくれるMX3は欠かせない存在となっています。それもあり、郡司税理士には、月4回のペースで巡回監査に来ていただいています。当院はリニューアルオープンしたばかりで、変化の真っ只中にあります。月に1回前月の確認を行うだけでは、情報が古くなっていることも多いのです。ですから、通常の経理の確認で3回、今後の検討のためのじっくりとした打合せで1回来ていただいています。
 その際に、MX3を活用し、多角的な視点から検討を行っています。現在、1番着目している数字は月の分娩数で、これは今後も増やしていきたい。そのためには、新しく採用を行っていいのか、収益はどれほど必要なのか、固定費の削減のためにできることはないのかなど、打ち手の検討もしっかりと行っています。現在の収益がどう推移しているのかグラフで一目でわかる点も大変重宝しています

――現在のクリニックの課題はどこでしょうか

岡崎 物流・人材・教育・医療機器すべての面において、発展途上だと感じていますが、強いて言えば、業務の効率化です。現在のスタッフ数で、患者さんの満足度を高めるためにいかに効率よく動けるか。これは真っ先にでも改善したい。たとえば、院内の動線が大きく変化したので、リニューアル後は試行錯誤を繰り返してきました。
 そうした改善のためにも、各課にそれぞれ業務効率化の担当を割り振っています。たとえば、分娩室だけを見る担当は分娩室の改善案に集中してもらいます。そして、各課があげてきた改善案を幹部らで会議し、吟味したうえでその内容をまた各課に降ろしています。

――最後に今後の展望をお聞かせください

岡崎 サテライトクリニックを各地に出したいと考えています。患者さんのなかには、県南地域から2時間かけて来られる方もいます。サテライトクリニックがあれば、定期健診はそちらで、お産の時にだけ当院に来てもらうことができる。そうすれば、患者さんの負担感を大きく減らせると思います。
 また、出産後の医療教育も積極的に行っていきたい。出産して終わりなのではなく、赤ちゃんの病気をどう予防するか、ワクチン接種や食育、予防歯科などまで積極的に啓発していきたいと思います。そしてゆくゆくは、成長した子どもたちに当院に見学に来てもらい、出産まで含めた性教育を行いたいと思います。
 今はクリニック経営を楽しみながら、新しいことにどんどんチャレンジしています。接遇向上のためにしたいことはまだまだありますし、少しでも良くするためのアイデアは常日頃から探しています。今後も地域医療と患者さんのために、クリニックの発展を続けていきたいと思います。

img_b0255_04.jpg
左から郡司洋一税理士、岡崎隆行理事長、院長夫人の岡崎恵美子看護師長

会計事務所からの一言

img_b0255_05.jpg

株式会社郡司総合会計事務所
 代表取締役 郡司 洋一

日々進化と深化を求めるクリニック

岡崎先生はチャレンジ精神の旺盛な方です。新しいものへの感度が非常に高く起業家精神にあふれたドクターです。MX3をご提案させていただいたところ、その先進性と有用性をすぐにご理解いただきました。クリニックは東京の一流ホテルをベンチマークとした感性の高い空間となっております。これからも税務・会計面で引き続きしっかりと支援してまいります。

(2023年10月24日/TKC医業経営情報2023年12月号より)