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病医院訪問・MX活用事例 「分子栄養療法」の実践のため開業 地域内外からの集患につながる

メンタルクリニックオータム

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院長 秋田 巌(あきた・いわお)

滋賀県大津市の石山駅から徒歩約3分にある「メンタルクリニックオータム」は、2019年の開業以来、「分子栄養療法」という治療法をもとに精神疾患の治療にあたり、全国各地から問い合わせが相次いでいる。また運営面では、TKC医業会計データベース(MX2)を活用し、安定した経営に役立てている。秋田巌院長に、分子栄養療法による治療の現状について伺った。

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所在地滋賀県大津市粟津町7-21シティーコーポせいらん202号
TEL:077-531-2800
https://mentalclinic-autumn.hp.gogo.jp/
診療科目

心療内科・精神科

診療時間木曜日 15:00~19:30
金・土曜日 9:00~15:00

「藤川メソッド」を実践するためクリニックの開業を決意

――まず、クリニックを開業されるまでの経緯について教えてください。

秋田 私は現在の高知大学医学部を卒業後、精神科医となって心理療法の研究を始めました。深層心理学の一派である、ユング派心理学の第一人者だった河合隼雄先生の薫陶を受けた後、スイスにあるユング研究所に留学し、ユング派分析家の資格を取得しました。帰国後は、京都文教大学の臨床心理学科で、講師・助教授・教授として臨床心理学の研究や教育を続けてきました。
 しかし2017年、藤川徳美先生の著書『うつ・パニックは「鉄」不足が原因だった』(光文社新書)を読んで、内容に衝撃を受けました。藤川先生は広島県の心療内科クリニックの院長で、「分子栄養学」という考え方に基づいた治療法を実践しておられます。私はこれを「藤川メソッド」と呼んでいるのですが、藤川先生によると、たんぱく質や鉄などの栄養素が不足していることによって「質的栄養失調」となり、精神疾患を引き起こしている。そのため、治療には足りない栄養素を補う必要がある――とのことです。
 私は「もし本に書かれていることが本当だったら、えらいことだ」と思い、まずは非常勤先の病院で鉄剤の処方を始めました。すると患者さんの症状が改善して、向精神薬の処方を中心とする治療に比べ、ずっと優れた効果を得ることができました。そのため「ぜひ自分で本格的に実践したい」と思うようになりました。

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明るい雰囲気の受付

 しかし、分子栄養学に基づいた「分子栄養療法」では、プロテインやサプリメントを使いますので、勤務医の立場では、実践が難しかったのです。そこで開業するしかないと思い、大学を早期退職して、2019年4月に61歳でクリニックを開業しました

血液検査をもとにサプリメントを処方 心理療法に基づいた治療も

――クリニックでの分子栄養療法は、どういった流れで行っておられるのですか

秋田 まず、初診の患者さんには血液検査をして、鉄分がどのくらい体内に含まれているかを示すフェリチンの値や、たんぱく質が満たされているかどうかを測るBUN(尿素窒素)などを調べます。鉄分やたんぱく質が不足しているようであれば、鉄剤やプロテインなどを処方します。
 これまでの症例をみると、処方された通りに飲んでくれた患者さんのうち、およそ80%の方の症状が改善しています。そのうち、向精神薬を処方していない患者さんも5割以上はいると思います。もちろん、一般的な向精神薬を処方した場合でも症状は改善しますが、服薬をやめられなくなるとか、強い副作用が出るケースもあります。分子栄養療法では、あくまで不足する栄養素を補うということです。
 ただ、分子栄養療法はまだまだ認知されていないこともあって、こうした処方をしたとしても、納得せずに実践していただけない患者さんもおられるのが実情です。

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血液検査などを行う検査室。ゆったりとした椅子を用意している


――分子栄養療法で治療できたケースとしては、どのような患者さんがおられますか。

秋田 たとえば、軽症から中程度のうつの症状が出ていた60歳近い男性の場合は、血液検査の結果をもとに、鉄剤やプロテイン、亜鉛などを処方するとともに、高たんぱく・低糖質の食事を心がけるように指導しました。すると3か月ほどで症状がほぼなくなり、通院は5か月で終了し、向精神薬を処方しなくとも改善できました。
 もっとも、統合失調症や重いうつ病の患者さんに対しては、必要と判断した場合はサプリメントだけではなく、抗精神病薬や抗うつ剤も処方することがあります。その際、副作用の少ない薬を選んでいて、投与量も従来の治療に比べるとかなり少量です

――分子栄養療法のほかに、心理療法に基づいた治療も行っておられると伺いました。

秋田 むしろ、私はユング派分析家なので、そちらが本職といえます。すべて分子栄養療法だけで治療できればよいのですが、実際にはカウンセリングが必要なケースもあります。
 たとえば、肉親が事故で亡くなられたときや、会社が倒産したときなどには、心の問題、魂の問題になります。不足している栄養分の摂取だけで改善するわけではありません。
 私は約15年前に、今のクリニックの隣の部屋にカウンセリングルームを開設していて、そちらには私のほかに臨床心理士のカウンセラーが5人います。クリニックの患者さんでカウンセリングが必要と判断すれば、カウンセリングルームへ紹介しますし、逆にカウンセリングルームに来られた方で、分子栄養療法による治療が必要であれば、クリニックを受診いただいています。

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診察室の棚には、分子栄養療法に用いるサプリメントが並ぶ

6時間で40人を診察 遠方から受診する患者も

――現在の1日あたりの患者数は何人程度ですか。

秋田 診療時間が6時間のときで30~40人程度です。なお、深層心理学の研究を続けているので、診療時間は木曜日の4時間半および、金曜・土曜日の6時間と短めにしています。
 年代でみると、0歳~80代の方が受診されます。20歳未満の若い方が多い印象があります。また、私が最近、分子栄養療法について取り上げた『60歳うつ』(2023年、PHP新書)を上梓した影響なのか、最近は年配の方も増えていますね。
 地域としては、もちろん地元の滋賀県内の方が多いのですが、そのほかに近畿地方全域や、愛知や三重など中部地方から来られる方などもおられて、おかげさまで日本中から問い合わせを受けています。
 患者さんはうつ病の方が多いです。子どもでは発達障害や起立性調節障害、もう少し成長した方では強迫性障害やチック、大人の方は統合失調症などで受診されます。
 4月に開業した当初は患者数が1日1~2人の日もあったのですが、5月の連休明け以降から増加して、今ではこれ以上は診られないくらいの患者さんに来ていただいています

――それだけ人気ということであれば、受診待ちも長いのではないですか。

秋田 現在は、一番人気のある土曜日の診療で、新規患者さんには最大で4週間待ちをいただいている状況となっています。
 しかし当クリニックでは早期に治癒する患者さんも多く、新規患者さんを受け入れやすいので、新患受付を停止しているようなクリニックと比べれば、早く受診いただけると思っています。
 なお、クリニックの運営体制としては、医師は私1人です。事務スタッフは常勤が1人と、非常勤が2人。看護師は非常勤の3人です。

――分子栄養療法を実践するクリニックというのは少ないと思いますが、患者さんはやはりその治療を期待して受診されるのでしょうか。

秋田 分子栄養学のことを知って受診される患者さんは3分の1くらいではないでしょうか。ホームページには掲載していますが、特にそれ以外の宣伝はしていません。ただ、分子栄養学を知っている整体師の先生やスクールカウンセラーの方から患者さんを紹介いただくことがあります。
 あとの3分の2は、たとえばご自宅がクリニックの近くにあるとか、口コミを聞いて受診される方です。診療した方のご紹介で、ご家族の方が受診されるケースも多いです。

――患者さんを診察されるにあたって、何か意識されていることはありますか。

秋田 やはり当たり前のことではありますが、1人たりともおろそかにしない、ということを強く意識しています。開業以来、自分で「医者心得」というノートを用意して、毎日診察前に内容を読んで戒めるようにしています。

MX2で経費の増減をチェック 治療を通じた集患へ

――貴クリニックでは、「TKC医業会計データベース」(MX2)を導入し、活用していらっしゃると伺いました。

秋田 MX2では、巡回監査の際に見方を教えていただきつつ、主に今月の売上や年間の予測を見ています。税理士法人京都ビジコンの皆さんには、本当によくサポートいただいています。
 また、当クリニックでは治療法のためにサプリメントを仕入れることが多いので、その経費について、昨年同月の値と比べたり、推移を確認したりしています。使い勝手もいいと思っています

                         「TKC医業会計データベース(MX2)」の画面
                       
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                                                                                    ※画面はサンプルです

――最後に、今後の展望をお聞かせください

秋田 これからも治療の能力を上げていって、とにかく目の前の患者さんを着実に治していくことに注力したいですね。今は累計の患者数が1,300人を超えていて、この規模のクリニックであれば十分だと思っています。今いる患者さんを治すことが、結果的には宣伝につながって、新規患者さんも口コミで増えていくはずです。
 また、今後もこのクリニックを運営していくことによって、藤川先生の治療法が広まっていってくれればと思っています

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海来美鶴税理士(左)と秋田巌院長(右)

会計事務所からの一言

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税理士法人 京都ビジコン
 代表社員 海来 美鶴

多くの患者の治癒のため運営面でサポートします

素人ながら、精神科治療は治癒が難しいものととらえていました。そのようななかで、藤川メソッドの分子栄養療法により、たくさんの患者さんが治癒されたと秋田院長からお聞きし、感激しております。多くの患者さんが治癒され、元気に社会生活を送っていかれるよう、これからも「メンタルクリニックオータム」の運営を支援してまいります。

(2023年7月29日/TKC医業経営情報2023年9月号より)