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病医院訪問・MX活用事例 在宅医療と訪問リハビリテーションで収益の「天井」を押し上げる

医療法人一世会 うらがみ内科クリニック 

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理事長・院長 浦神一浩(うらがみ・かずひろ)

「うらがみ内科クリニック」は10年前に和歌山市内の大型スーパーの敷地内で開業した。在宅医療に注力していくことで、地域医療に貢献するとともに早期に収益を確保することに成功した。その在宅医療において、訪問リハビリテーションに取り組み、患者の満足度向上と他院との差別化を図り着実に地域に根差してきた。浦神一浩院長に、地域医療にかける想いと経営戦略について話をうかがった。

DATA医療法人一世会 うらがみ内科クリニックimg_b0291_02.jpg

所在地和歌山県和歌山市加納297-1
TEL:073-475-4970
http://www.uragamiclinic.jp/
診療科目

内科・消化器内科・糖尿病内科
・循環器内科
・呼吸器内科

診療時間午前   9:00~12:00
午後 16:00~19:00
休診日
木曜日午後、土曜日午後、日曜日、祝日

在宅医療で地域に貢献 自院の収益につなげていく

――まずは貴院の開業経緯をお聞かせいただけますでしょうか。

浦神 近畿大学医学部を卒業後、いくつかの病院勤務を経て、医療法人須佐病院で20年ほど勤務し、副院長を務めました。そのまま勤務医を続けることも選択肢にあったのですが、在宅医療を通じてこれまで以上に地域に貢献していきたいという想いを持つようになりました。そんな折、大型スーパー「エバグリーン」が、店舗拡大のために敷地内へのクリニックの誘致を始めたのです。今ではそういったクリニックは10軒を超えていますが、当時は前例がなく、当クリニックが「1号店」として開業することになりました。
 建て貸しだったことから初期費用も抑えることができ、税理士法人ウィズの下津正也税理士のアドバイスもあって、独立を決意してから半年ほどで、ちょうど10年前の今日(5月11日)、開業できました

――まずは貴院の開業経緯をお聞かせいただけますでしょうか。

浦神 近畿大学医学部を卒業後、いくつかの病院勤務を経て、医療法人須佐病院で20年ほど勤務し、副院長を務めました。そのまま勤務医を続けることも選択肢にあったのですが、在宅医療を通じてこれまで以上に地域に貢献していきたいという想いを持つようになりました。そんな折、大型スーパー「エバグリーン」

――うらがみ内科クリニックは在宅療養支援診療所(以下、在支診)の認可を受けていますね。

浦神 在支診としての届出は、開業当初から行いました。そして、5年ほど前に、機能強化型在支診(連携型)として、認可を受けました。これは在支診と同じく、24時間の連絡を受ける体制・往診可能な体制・訪問看護体制が必要なのはもちろんのこと、これに加えて、さまざまな施設基準が設けられています。たとえば、在宅医療を担当する常勤医師は、在支診では1名ですが、機能強化型在支診では、連携体制を構築する他の保健医療機関とあわせて在宅医療を担当する常勤医師が3名以上必要です。また、緊急往診の実績や看取りの実績についても、在支診に基準はありませんが、機能強化型在支診では基準が設けられています。
 在宅医療に取り組むようになった理由は2つあります。1つは、最後まで患者さんの治療を行いたいという想いがあったからです。というのも、和歌山県は独居老人の方が多く、内臓機能的にはそれほど問題はないけれども、整形外科的に腰、膝が悪く通院できないという方がかなり多くいらっしゃいます。そういった患者さんのためにも、在宅医療を提供していきたいと思っていました。
 2つ目は、外来診療で患者さんに来院していただくのをただ待つだけではなく、自ら率先して動くことで、経営につなげたかったからです。というのも、このクリニックがある土地は、出身地域でないこともあり馴染みのない土地でした。当クリニックの存在を認知してもらい、外来診療で経営が成り立つまでには、半年~1年はかかると見込んでいました。それならば、ただ待っているだけではなく、こちらから出向いて在宅医療を行うことで、少しでも早く収益につなげていきたいと思いました。

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介護施設で往診を行う浦神院長


――現在のクリニックの1日の平均患者数、患者層についてはいかがでしょうか。

浦神 外来の患者さんは、1日50人前後、在宅の患者さんは月180人前後といったところです。患者さんの8割が高齢者の方で、疾患としては、糖尿病、高血圧、心疾患、脂質異常症などの生活習慣病やアルツハイマー型認知症などが多いです。

――開業にあたって、在宅医療を始める際に、難しさを感じることはありましたか。

浦神 やはり「武器」を持たずに、身1つで診療に取り組まなければならないことでしょうか。クリニックでの診察であれば、機材を使って詳しく診察を行うことができますが、在宅医療はそうではありません。最終的に、検査を受けにきてもらうこともありますが、そうはいっても、往診時は自分自身の診察力だけを頼りに患者さんと向き合わなくてはならない難しさがあります。
 一方で、患者さんとの距離感は外来診療時よりも近くなります。リラックスして受診してくれる患者さんのお顔を見られるのは、自分自身のモチベーションにもなっていると思います

訪問リハビリテーションを導入して、収益の「天井」を押し上げる

――スタッフの構成についてはいかがでしょうか。

浦神 私を除いて、11名います。受付などの事務スタッフが4人、看護師が5人。それと、当クリニックでは、訪問リハビリテーションを提供しているので、理学療法士(以下、PT)が2人います。

――内科でPTがいるクリニックはあまりない印象があります。訪問リハビリテーションを開始したのは何か理由があるのでしょうか。

浦神 これは大きく分けて2つ理由があります。1つは、経営における「天井」の高さを押し上げたかったこと。もう1つは、往診の際に、少しでも患者さんやそのご家族に満足感を得てもらいたかったことです。
 一般の会社経営であれば、稼ぐのは社員で、社長は経営判断を行うことが大半です。しかしクリニック経営は、院長自らが率先して動かなければ、自院の収益にはつながりません。逆に言えば、動いた分だけ収益が上がります。その「天井」の高さを押し上げるために、訪問リハビリテーションを導入しました。
 また、患者さんも、そのご家族からしても、往診とは別にリハビリがあると安心してくれるようです。筋肉量が落ちないように、体が固まらないように、患者さんの体を少しでも動かしてリハビリすると、患者さん本人のお顔も明るくなりますし、ご家族からしても、寝たきりにならないように一歩ずつ前進している印象を持たれるのだと思います。

――その他に集患を行うために工夫されていることはありますか。

浦神 口コミは非常に重要視していますが、当クリニックでは流行りのデジタルマーケティングはおろか、看板を出すことも一切していません。
 当クリニックの患者さんの年齢層を考えれば、インターネット広告やSNSでの情報発信が適していないのは明らかです。もちろん、今後時間が経つにつれて、そういったアプローチも必要になるかもしれませんが、今はまだその必要はないと判断しています。
 また、看板については費用対効果を考えたときに、その設備投資をして、どれだけの患者さんが「あのクリニックに行ってみよう」となるか疑問を持っていました。他方で、当クリニックは主要国道沿いに面している大型スーパーの敷地内にあります。つまり、通勤などで日常的に道路を利用する人、買い物に来る人にはその都度クリニックが目に入ることになります。いわば、クリニック自体が看板となっているわけです。この立地条件のよさがある中で、新たに看板を出す必要はないと判断しました。

――口コミを獲得するためにどのようなことをされたのでしょうか。

浦神 まずは、患者さんに一度来てもらう必要があるので、インフルエンザワクチンを相場より安く設定することで、呼び水としました。これは非常に効果がありました。新しくできた飲食店には気軽に入れますが、新しくできた医療機関に行くのは、それなりにハードルが高いと思います。一度クリニックに来てもらうためには、それなりのインセンティブがないと難しい。そういう意味では、ワクチンをリーズナブルな価格に設定したことは、新規の患者さんの誘い水には非常に効果があったと思います。
 また、それ以外にも、一般の方向けの健康講座を開催しました。関連のある病院の栄養士さんに来ていただき、糖尿病や高血圧の話をしてもらうことで、患者さんの頭の片隅に当クリニックを置いてもらうようにしていきました。
 一度当クリニックにきてもらえれば、スタッフの雰囲気の良さには自信がありましたし、私自身も患者さんに接する際に、とにかくわかりやすい説明を心がけていましたので、それが口コミで広がっていく自信はありました。

医療と介護のギャップを埋めるために介護施設の設立を計画

――現在、貴院では「TKC医業会計データベース」(MX2)を導入し、日々の業績管理などに活用されているとお聞きしました。

浦神 医業収益や医業利益、患者1人当たりの単価などについて、前月と比べての比較をグラフで一目で確認できる点が特に気に入っています。
 日々の入力業務は、理事である妻に行ってもらっています。私自身は、電子カルテで延べ患者数や点数を大まかに把握しつつ、細かく、正確に自院の状況を把握する際には、MX2での確認を行っています。特に、当院では、新患の人数と延べ患者数に着目しており、電子カルテで把握していたイメージとMX2での実際の数字に乖離があった場合には、下津先生と一緒に分析を行うようにしています。

                         「TKC医業会計データベース(MX2)」の画面
                       
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                                                                                    ※画面はサンプルです

――では、今後どのようなことが課題になってくるとお考えでしょうか。

浦神 いかに私自身の空き時間を捻出していくかが課題になっています。当クリニックの医師は私1人なので、外来にしても、在宅にしても、1日に診察できる患者さんには限りがあります。かといって、外来診療に来られる患者さんの数は制限したいとは思いませんし、在宅の患者さんを抑えるという手があるのかもしれませんが、やはり在宅医療もこれまで通りに行っていきたいと思っています。
 ですから今後は、アルバイトのドクターに来てもらうなどの対応も念頭に置きつつ、業務を少しでも効率化していくことで、私自身の空き時間を捻出したいと思います

――最後に今後の展望について教えてください。

浦神 現在、訪問看護ステーションの立ち上げを6~7月ごろに予定しており、人材の募集を行っている最中です。まずは、この計画を滞りなく進めていきたいと思います。もちろん既に連携先はありますが、自前の訪問看護ステーションがあれば、メールや電話などではなく、日々顔を見ながら情報のやり取りができるため、これまで以上に連携がスムーズになります。患者さんにより満足していただくためにも、なるべく早期に立ち上げたいと思っています。
 また最終的には、介護施設を立ち上げて、医療と介護の両面から充実したケアができるようにしていきたいと思います。現在の日本の「介護」には、医療を提供する側と介護を提供する側でギャップがあると思います。医療側からすれば、「こういう介護をしてほしい」という希望がありますし、介護からしてもそれは同様だと思います。どちらが良い悪いということではないのですが、少しでもそのギャップはなくしていきたいと思います。そのためにも、自ら立ち上げた介護施設で、介護・医療両面から充実したケアを提供していきたいです。とはいえ、まだまだそれまでには時間がかかります。まずはしっかりと既存の介護施設と連携し、地域の患者さんに少しでも貢献していきたいと思っています。

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大学病院などで導入されている最上位の手術機器を備える手術室

会計事務所からの一言

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税理士法人ウィズ 岩出オフィス
 所長 税理士 下津 正也

在宅医療・訪問リハビリで地域の確かな信頼を獲得

浦神先生と弊所は開業前のサポートからのお付き合いです。うらがみ内科クリニックは2013年の開業時から10年経った現在に至るまで、在宅医療や訪問リハビリの導入で患者数を順調に伸ばし続けています。先生のお人柄もあり、ご高齢の患者さんの間で「ファン」が多く、介護施設からも厚い信頼を得ています。引き続き弊所としても、安定した診療所運営ができるようご支援していきたいと考えています。

(2023年5月11日/TKC医業経営情報2023年7月号より)