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病医院訪問・MX活用事例 「早期発見・早期治療」を理念に健診・診療をワンパッケージで提供

医療法人社団健診会 東京メディカルクリニック 

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理事長 増澤源造(ますざわ・げんぞう) 

医療法人健診会東京メディカルクリニック(東京都北区)は2012年に開業した。「早期発見・早期治療」を目指し、健診と診療をワンパッケージで提供する。そのため最新鋭の検査機器と診療体制の充実を図っている。こうした医療サービスが支持され、受診者数、検査数は右肩上がりで伸びている。増澤源造理事長、理事・事務総長の船津大輔氏、顧問税理士事務所の菅川洋税理士、室井力税理士に話をうかがった。

DATA東京メディカルクリニックimg_b0291_02.jpg

所在地東京都北区滝野川6-14-9
TEL:03-3910-3438  FAX:03-3917-2848
https://www.dock-tokyo.jp/
診療科目

内科・消化器内科・循環器内科・婦人科・乳腺科・内分泌代謝内科

自費診療
  
アレルギー検査・ピロリ菌の簡易検査 等

診療時間月~金 8:45~11:15 13:45~17:00
土曜日 8:45~11:15 13:45~16:30
休診日
日曜・祝日
スタッフ常勤医師8人、非常勤医師約30人

最新のMRI・CTなどを完備 受診20万人超、検査10万人超

――医療法人社団健診会は二つのクリニックがあります。まずは沿革から教えていただけますか。

増澤 当院は1979年、先代がクリニック滝野川内科(現・滝野川メディカルクリニック)を開業したのがはじまりです。内科中心の診療所として地域医療に取り組んできました。ただ、患者さんが何らかの症状を自覚してから受診するのでは、がんなどの重い病気の場合、病状が進んでいて完治が難しくなるという問題意識を常に抱えていました。

 そこで病気を早期発見・早期治療するために、1995年に北区で最初にMRICTを導入しました。その後も検査機器の更新や拡充を進める中で、施設が手狭になったため2012年に法人化するとともに、東京メディカルクリニックを新規開院しました

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広々とした待合室

――東京メディカルクリニックは立派なビルですね。

増澤 東京メディカルクリニックは、MRI、CT、マンモグラフィ、超音波診断装置など最新の高度医療機器をそろえた人間ドック・健診センターを有しています。2022年で10周年を迎えましたが、この間、受診者は右肩上がりで、検査数は年間約30%ずつ増え、10万人を超えています。また、健診に関しては受診者数が10年間で約8.6倍増の年間3万人超、累計では20万人を超えました。

 さらに画像診断センターとしての機能も持ち、検査だけを依頼するクリニックなどと連携し、大学病院など約800施設の医師から検査依頼を受けています。現在、法人全体の売上の9割を東京メディカルクリニックが占めています。

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健診センター受付

――順調に業績を伸ばされていますが、他の医療機関との違い、貴院の強みはどこにあるとお考えですか。

増澤 私たちが目指しているのは、「保健指導」→「健診」→「診療」→「精査」までワンパッケージで医療サービスを提供することです。健診で異常値が見つかれば当院で診療を行い、精密検査まで行います。精密検査の結果、手術など、より専門性の高い治療が必要な方は連携する医療機関にご紹介します。

 実は、健診とMRI、CTを使った精密検査までが1カ所で完結する医療機関はほとんどありません。検査で異常値が見つかった受診者は、その検査結果を持って他の医療機関で診療を受けます。

 一方、当院では異常値があった方には来院していただき治療を行います。そうすることで来年の検査結果は改善します。検査をする意味は何かというと、異常値があればきちんと治療し、改善することです。そのために当院の外来診療では、内科を中心に細分化し、専門性を持たせています。消化器、循環器、内分泌、婦人科、乳腺科などがあり、常勤医8人、非常勤医師30人弱の体制をとっています。

 このような一貫した医療サービスを提供する医療機関は非常に少ないため、利用者には安心感と信頼感を持っていただいていると認識しています。実際、健診から診療に入る流入率は約11%で、外来患者さんの年齢は40~60代が多いです。一般の外来は70代が中心になりますが、当院は全国平均に比べ約20歳若くなっています。

 また、北海道や九州など全国から通院される方もいます。当院は慢性疾患で症状が安定している方は3カ月処方を基本にしていますから、首都圏以外の遠方からも通院しやすいのだと思います


開業当初は利用者集めに苦労したが、テレビ番組出演などのPRが奏功

――開業当初、どのように利用者を増やしていったのでしょうか。

船津 当院は北区滝野川というこの地域ではそれなりに知名度のある医療機関だと自負していますが、東京全体で見たら無名に近いです。また北区にはいわゆる大企業が少ないので、企業健診はあまり期待できません。そこで千代田区や中央区など都心部の大企業を飛び込み営業で回りました。しかし新しいクリニックなので実績がなく、ほとんど門前払いでした。

 それで開業2期目に取り組んだのが、テレビ局へのアプローチです。テレビ番組で紹介されれば知名度を一気に上げることができるからです。とはいえツテなどないですから、医療や健康関連の番組を放映しているテレビ局に電話をかけたり、番組の内容の改善ポイントを記した手紙を送ったりしました。そういうことをしばらく続けていたら、制作会社から連絡があり、当院を取り上げてもらうことができたのです。狙いどおり、企業健診や人間ドックの申し込みが急激に増えていきました。

――知名度アップがダイレクトに利用者の増加につながったのですね。

船津 この経験からテレビ業界関係者とのつながりができ、さらに多くの番組で紹介していただけるようになりました。

人間ドックをセットメニュー化 HPで簡単に申し込めるなど利便性を工夫

――貴院の人間ドックはプランが豊富に用意されていますね。

増澤 がん・心臓病・脳血管疾患の早期発見を目指した複数のプランをご用意しています。そもそも人間ドックの世界には、オプションをつけるという選択肢があるくらいで、多彩なメニューを用意するという発想がありませんでした。しかし、多くの検査項目がある中から、本当に自分に必要なものを選ぶのは難しい。それならばこちらでおすすめセットを用意すればいいのではというのが発想の発端です。

船津 人間ドックも性別・年齢によってリスクの高い病気がありますから、それをベースにメニューを用意しています。

 初めて人間ドックを受ける方であれば、スタンダードな人間ドックに、最新の検査機器を使用した脳ドック、肺ドック、腹部ドックまで全てを半日で検査できる「プレミアムコース」(101,200円、税込)がおすすめです。もう少し詳しく検査したい方には、プレミアムコースに上部内視鏡、大腸CTを加えた「エグゼクティブコース」(136,400円、同)をおすすめします。この二つのコースが人気で、多くの方がこのどちらかを選んでいます。

――貴院の人間ドックはプランが豊富に用意されていますね。

増澤 利用者には比較的富裕層が多いのですが、非常に満足していただいています。中には、海外在住の日本人がわざわざ帰国して利用されることもあります。

 次第に当院を模倣してパッケージ化する医療機関が現れはじめ、現在では同じような人間ドックパッケージを提供する医療機関がいくつもあります。

船津 人間ドックの利便性に関しては、パッケージ化のほかに、予約の取りやすさにも力を入れてきました。予約サイトをつくり、PCでもスマホでも予約が取れ、ネットで完結するようにしています。電話の必要がありません。

 これは米大手ネット通販サイトのような仕組みを目指したもので、手順をできるだけ減らすとともに、あるパッケージを選ぶと、隣におすすめの検査項目が出たり、それを押すと価格が変動するといった具合につくり込んでいます。現在、人間ドックの予約は約20%がHP経由です。

法人化に伴いMX2を導入 毎月の借入金返済額や労働分配率に留意

――会計では「TKC医業会計データベース」(MX2)を活用されているそうですね。

菅川 当事務所は約15年前、滝野川メディカルクリニックの頃からご支援しています。当時はFX2を利用していましたが、2012年に法人化・東京メディカルクリニックの開設で2拠点になったのを機に、MX2を導入しました。

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TKC医業会計データベース(MX2)の画面
※画面はサンプルです。

室井 法人化してからは私が監査担当者として毎月訪問しているのですが、東京メディカルクリニック開設時の設備投資額が大きいので、毎月のキャッシュフローと、借入金の返済原資となる償却前利益は特に注意して見ています。

菅川 開院時には、設備投資など15億円強を金融機関から借り入れたので、金融機関担当者のチェックは厳しいですね。

船津 私は毎月2回金融機関を訪問し、前月の実績と来月の見通しを報告しているので、金融機関にも安心していただけていると思います。

――その他に注意している数字はありますか。

船津 いま特に注視しているのは人件費です。急激な物価高が進む中で、コントロール可能な人件費やその他のコストの見直しを進めています。MX2なら前年比や予算比が一目でわかるので(前頁サンプル画面)、意思決定の際に非常に役立っています。

 特にコロナ禍では不採算部門がより明確になり、他の部門でカバーするのは限界になってきました。金融機関からも固定費削減の指摘があったため、労働分配率の改善に取り組みました、

室井 様は毎月MX2の数値を見て、それを病院経営に活かしています。それが東京メディカルクリニック様の成長要因の一つであると思います。

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左から室井 力税理士、増澤 源造理事長、菅川 洋税理士

「早期発見・早期治療」の理念の実現に向け、高まる検査ニーズに対応していく

――これからの貴法人の方向性、展望についてお聞かせください。

増澤 「早期発見・早期治療」の方針のもと、引き続き医療の質とサービスの向上に努めていきます。現在、人間ドックなど自由診療の比率が全収益の約60%ですが、この割合は今後も上がっていく見通しなので、受け入れ体制を整えていきます。

 その一方で、定期的に健康診断を受けていれば人間ドックは必要ないという感覚の方もまだまだ多いと思われます。しかし、がん、脳梗塞、動脈瘤などの治療は一昔前と比べ格段に進歩しており、早い段階で発見できれば、完治する可能性が高くなります。

 そうした人を少しでも増やすために、当クリニックのホームページで検査のメリットをわかりやすく伝えるとともに、ホームページからの人間ドック申し込みなど利用者の利便性をさらに高めるなど、経営改善に取り組んでいきます

医業経営コンサルタントからの一言

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税理士法人TGN東京

 代表社員 税理士 菅川 洋

「早期発見・早期治療」を会計面からサポート

先代理事長の時代から、地域医療を支えるクリニックとして、患者さんと顔の見える関係性を大切にし、患者さんに寄り添い、健康を守る取り組みをされてきました。そうしたベースはいまも受け継がれています。当事務所ではMX2の導入を支援し、開院の際の借入金の返済計画作成も支援させていただきました。今後も「早期発見・早期治療」という当院の理念を後押しできるよう、会計面からサポートをしていきたいと思います。

(2022年11月30日/TKC医業経営情報2023年1月号より)