株式会社プラスワン 様

統合型会計情報システム(FX4クラウド) ユーザー事例

粗利益と販管費の緻密な管理で
『不動産総合サービス』を目指す

三重県津市に拠点を置く株式会社プラスワン(以後、プラスワンと表記)は、新築住宅の販売、リフォーム、不動産仲介事業を展開している。資材価格の高騰や働き手不足という逆風が吹くなか、同社はどのような経営のかじ取りを行っているのか。経営戦略や業績管理体制について取材した。

 1999年設立のプラスワンは、三重県津市を中心に住宅リフォーム業をなりわいとしてきた企業である。現在の店舗は津本店と津南店の2カ所。その後注文住宅や不動産の仲介事業にも参入した。

 2019年には、事業譲渡で当時東証・名証1部上場の株式会社AVANTIA (現在は東証スタンダード、名証プレミア上場。以後AVANTIAと表記)にグループ参画。建売住宅の販売事業や土地販売事業にも乗り出した。同社の管理部門を統括するAVANTIAの牧野光財務部次長はいう。

「売上高の構成比率はリフォーム事業が4割、不動産仲介事業が1割、建売住宅・土地の分譲事業が5割です。利益率はだいぶ異なりますが、利益額でみると3部門ともほぼ同水準。三つの柱が会社を支えているので、仮に一つの柱が不調であっても、会社全体が大きく崩れることはありません」

 同社の特長は、個人の住まいに関するあらゆるニーズに対応するワンストップサービスの体制を構築していること。牧野氏はいう。

「住宅の耐久性は一昔前に比べ格段に向上しています。不動産の売買から住宅の購入、リフォームまで、ユーザーとの長いおつきあいがより重要になってきます。そこで当社では、生活環境を作るうえで必要なものを全部当社でそろえることができる『不動産総合サービス』を目指しています」

 建売住宅は夫婦と子の一般的な家族構成を想定したファミリータイプがメイン。一般的な会社員勤務世帯でも余裕をもって購入できる価格帯で展開している。AVANTIAグループは年間約1,000棟超、累計約2万棟を超える一戸建て住宅を全国で販売してきた実績を持つ。豊富な実績に基づく多彩で厳選されたプランを提案できるのが強みで、プラスワンでは現在年間20棟前後を販売している。

ミドル層がターゲット

 さて建築業界では、資材価格の高騰や人手不足など供給面での制約が多くなっている。同社はどのように対応しているのだろうか。

「職人さんや社員の確保には本当に苦労しています。しかしそうはいってもすぐにそれが解決するとは限りません。少ない人数でも業務を回していけるよう、顧客管理・工程管理・経理業務の効率化を図るため可能な限りDXの推進を図っています」(牧野氏)

 経理業務の効率化推進については、顧問契約する税理士法人明鏡止水の前川定之税理士の指導のもと、『FX4クラウド』の活用と月次巡回監査を通じたタイムリーかつ正確な業績把握を実践している。

「最も重視していることは粗利益と販管費の徹底した管理です。販管費以上の粗利益があれば黒字になりますからね。年間予算に基づきその月の販管費を精緻に見極め、粗利益の目標金額を1カ月ごとに事業部門ごとに設定します。そこから逆算すれば必要な売上高が算出できるので、これらの数字を毎週追求し、『FX4クラウド』で日々の取引を入力・管理することでリアルタイムに実績を把握しています」(牧野氏)

原価管理意識を徹底

 利益の向上は会社の発展、社員の収入アップに不可欠だ。その源泉となる粗利益を徹底して管理していくことは非常に重要である。売上(収入)-原価(支出)=粗利益。単純な理屈だが、これを徹底して管理し、少しでも利益を上げていく取り組みをしていくのはなかなか難しい。同社は顧客管理から工事別の原価管理までを一貫して管理する独自の原価管理システムを使用しているが、締め日までの入力を厳守するなど運用ルールの遵守を徹底、スタッフの原価管理意識の向上を実現させた。

「5年前までは比較的安い価格設定で受注拡大を推進していました。しかしそれは結局のところ会社の利益を減らしているだけ。それをカバーする売上の量が必要になるので、結果として営業社員のハードルが相当高くなってしまいます。そこで利益率の目標値を見直し、原価管理の徹底を図りました。現在は以前より利益率が改善しています」

 

キーワードは「平準化」

 税理士法人明鏡止水の前川税理士との関係は、20年を超える。以前勤務していた会計事務所で担当者として伴走、独立後も同社から継続して関与することを依頼されたのである。「複数人で入力ができるようにしたい」という要望をきっかけに2015年に『FX4クラウド』を導入したが、システム活用の範囲はそれだけにとどまらなかった。総務、経理部門の業務を一手に引き受け獅子奮迅の活躍を見せている管理部の木皿晴加主任はいう。

「経過勘定の洗い替えなど月末にあらかじめ発生すると分かっている伝票の入力について、先日付けで入力できるのは便利ですね。通常31日付けの伝票は31日以降に入力しなければなりませんが、『FX4クラウド』では先日付け入力ができます。余裕があるときは20日前に月末日付けの仕訳を入力することもあります」

 キーワードは「平準化」である。牧野氏も続ける。

「月次決算を積み上げていっても、四半期決算などの決算処理で洗い替えなどをまとめて行ったりすると、数字が大きく変わってしまうことがあります。そうした場合、経営者が数字を読み間違えてしまうリスクが生じてしまいます。そうしたケースを避けるため、当社では年間1回もしくは数回で支払う固定資産税や自動車の保険料、労働保険料などを12分の1に分割して平準化し、業績見込みのズレを防止しています」

 

グループ全体のモデルに

 勘定科目の取引先別管理も欠かせない機能だ。木皿主任はいう。

「私たちの業界は着手金、中間金、完工金と段階的に支払われる残額がゼロになるまで正確に追いかける必要があります。取引先別管理によってこれらの管理を正確に行うことができます」

 またダイレクト納付(e-Taxによる口座振替)も2020年から実施。銀行の窓口に出向いたり書類を作成したりする手間からほぼ解放され、経理業務全体の効率化に貢献している。 

 法改正や制度対応への取り組みも万全だ。インボイス対応では2022年2月には取引先に案内文書を配布し適格事業者番号の収集を開始、電子帳簿保存法対応では証憑保存機能を活用し取引先から電子メール等で送られてきた請求書を電子保存している。

 住まいに関連するサービスをワンストップで提供する『不動産総合サービス』の実現に邁進(まいしん)する同社。牧野氏は今後の抱負について次のように語る。

「『不動産総合サービス』は、もともと住宅販売として出発した親会社のAVANTIAでも実現したいサービス。当社は小規模ですが、AVANTIAグループでは唯一それを実現できている会社です。グループ全体のモデルケースになるような会社にしていきたいと思います」

コンサルタントの眼

『FX4クラウド』各機能を徹底的に活用

顧問税理士 税理士法人明鏡止水 / 税理士 前川定之

 株式会社プラスワン様は、従来より月次決算を発生主義で徹底、確定決算の際は貸借対照表の勘定科目内訳明細書を自社で作成されるなど、高いレベルで自計化が完成された関与先様です。

 AVANTIAグループの会社となって以降は、通常月の月次決算処理は翌月10日までに完了、四半期決算時は通常の月次処理をおおむね月初3営業日から5営業日後までに確定させて、その後年次処理で株式会社プラスワン様が期末整理仕訳を全部入力、弊社で消費税を計算、確定決算時は法人税等の計算、税効果会計の計算をしています。かかる“月次処理”と“年次処理”にシステム上分けて入力することで、決算整理前試算表と整理後試算表が精算表の形で確認できますが、これこそTKC財務会計システムのなかでは『FX4クラウド』でのみできることです。

 牧野様はよく「特別なことはしていない」とおっしゃられますが、『FX4クラウド』をここまで使いこなしている会社はそう多くはないと感じています。株式会社プラスワン様の運用事例を弊社の他の『FX4クラウド』のユーザ様に還元したいと今回の取材で改めて感じました。

企業情報

本社ショールーム。
キッチンのモデルプランや壁紙、
屋根材のサンプルなどを確認できる

株式会社プラスワン

業種
総合建設業
設立
1999年7月
所在地
三重県津市渋見町410番地9
売上高
約12億円
従業員数 
15名
URL
https://www.mie-plus1.com/

顧問税理士 税理士法人明鏡止水
税理士 前川定之

所在地
三重県津市観音寺町766番地8
URL
https://www.maegawa-sadayuki.com

『戦略経営者』2024年9月号より転載)