株式会社平出精密 様

統合型会計情報システム(FX4クラウド)・
インボイス・マネジャー(FX4クラウド) ユーザー事例

精密板金のパイオニアが実践する
デジタルインボイスの利活用

高精度の板金加工技術を武器にさまざまな金属部品を生み出している平出精密(長野県)では、インボイス制度に合わせて『インボイス・マネジャー(FX4クラウド)』を導入。デジタルインボイスの送信や電子取引データの保存に着手した。平出正彦社長、管理部の溝口和史部長と中條早苗さんに同社の経営戦略と経理業務合理化への取り組みを聞いた。

地域や業界への貢献が評価され「旭日単光章」を受賞

最新鋭の機械設備を積極的に導入

──業容を教えてください。

平出 当社は1964年に「平出精密鈑金製作所」として創業して以来、高精度の板金加工技術を武器にさまざまな金属部品を製造してきました。得意先の業種は半導体製造装置、計測機器、食品機械メーカーが多くを占めていますが、最近はiPS細胞培養器、持ち運びレントゲン、電気自動車のバッテリーケース、人工衛星等のパーツも製造するなど、将来の中核産業として期待されている業界との取引も増えています。

──高精度な精密板金加工を実現できている要因は何でしょう。

平出 新たな工法の開発や最新鋭の機械設備の導入を積極的に行っていることが挙げられます。当社ではファイバーレーザーなどの先端レーザー技術と既存技術の融合、ミクロン単位の精緻な加工方法の開発など、革新的な技術の確立に挑戦してきました。絶え間ない技術開発によって蓄積した技術力とノウハウは得意先から高く評価されており、先ほど説明した医療機器、環境エネルギー、航空宇宙産業といった、とりわけ高精度かつ高品質な加工が求められる業界との取引にもつながっています。
 一方、設備投資についても積極的に行っており、1982年に長野県で初めてレーザー・パンチ複合機を導入して以来、異なる金属どうしでも滑らかに接合できるファイバーレーザー溶接機、小型の全自動曲げロボットなど、折に触れて最先端の設備を導入しています。昨年の3月には本社工場の一部を増築し、最新鋭のレーザー・パンチ複合機、自動金型交換装置付きベンディングマシンを導入しました。これにより、生産能力が増築前の1.3倍以上に拡大し、従業員の残業時間も大幅に削減するなど、生産効率の向上を実現しています。

──社員教育にも熱心に取り組んでいます。

平出 新入社員教育や専門技術研修、階層別教育計画などを通じて社員の知識や技術力の向上を図っています。最近、特に力を注いでいるのが品質管理です。社員全員がQC検定4級以上を取得できるよう、業務の空き時間などを有効活用しながら学習の機会を設けています。

昨年秋の叙勲で「旭日単光章」を受賞

昨年秋の叙勲で「旭日単光章」を受賞

──ところで、平出社長は昨年秋の叙勲で「旭日単光章」を受賞されました。勲章を受賞しての感想を聞かせてください。

平出 精密板金業界の発展や地域経済の活性化に貢献してきたことが評価されたと、たいへんうれしく思っています。創業当時、精密板金は一般的な加工技術ではありませんでした。日本で最初に「精密鈑金」を社名に掲げたのも当社です。このような経緯もあり、当社が精密板金のパイオニアとして、板金加工業界の地位や技術力の向上に努めてきました。例えば、1985年に日本で初となる板金加工の業界団体(長野県シートメタル工業会)の設立に尽力し、設立時には板金に関する技能検定の立ち上げにも力を注ぎました。2000年には長野県諏訪地方の中小企業とともに共同研究開発事業を行う「DTF(デスクトップファクトリー)研究会」を立ち上げ、23年間継続しています。
 このほか、信州大学工学部、長野県工業技術総合センターなどとの産学官連携、異業種連携をコーディネートしたり、県内の小・中・高・大学生向けの工場見学会を定期的に開催するなど、地域人材の育成にも積極的に取り組んでいます。こうした活動が旭日単光章の受賞に結びついたのだと思います。

デジタルインボイスの利用で請求業務を省力化

──『FX4クラウド』による自計化の効果を聞かせてください。

溝口和史管理部部長

溝口和史管理部部長賞

溝口 部門を細かく分けて業績管理できるので、とても重宝しています。当社では「営業」「製造」「品質保証」「神明工場」「管理・総務」の部門に分けて管理しており、月初めの会議で売上目標に対する進捗や総生産、差引収益、時間当たりの収益について各部署から報告をしてもらっています。最近は原材料や光熱費が軒並み上がっているので、支出の内容を細かく確認し、計画との差異を分析しています。

──入力面ではいかがでしょう。

中條 現金取引は手入力していますが、売上げ、仕入れに関する取引は生産管理システムから出力したデータを、支払いに関する取引はエクセルシートを読み込ませることで仕訳を自動計上しています。これにより入力の手間が省け、月次の業績も早期に集計できるなど、会社に良い影響を与えていると感じます。

──昨年10月にインボイス制度がスタートしました。実務への影響は?

中條 インボイスの内容確認やシステムへの入力にかかる時間が増えました。ただ、今は制度が始まったばかりですから、実務に慣れてくればこれらのスピードが上がってくると思います。

──『インボイス・マネジャー(FX4クラウド)』を導入した経緯を教えてください。

中條 『FX4クラウド』ユーザー向けのオンデマンド研修で紹介されていたのを見たのがきっかけです。かねて請求書の授受を電子化したいと考えていたので、社長を通じて瀬戸先生にシステムの紹介をお願いしました。

溝口 請求書を電子化したいという相談は、インボイス制度が始まる前から受けていました。これまでは営業担当者が生産管理システムで請求書を作成し、中條が封詰めして送るという流れで進んでいたので、この一連の業務を合理化したいとのことでした。請求業務の合理化を検討し始めた時期と、インボイス制度への対応準備がちょうど重なったので、これを機に『インボイス・マネジャー(FX4クラウド)』を導入し、請求書のやり取りを電子で行うことを決めました。

──実際に『インボイス・マネジャー(FX4クラウド)』を利用しての感想はいかがでしょう。

中條早苗さん

中條早苗さん

中條 発送にかかる業務負担が軽くなりました。生産管理システムから売上げデータをエクセルで出力し、それを『インボイス・マネジャー(FX4クラウド)』に読み込ませると自動的にデジタルインボイスに変換されるのでとても便利だし、送信までの手順もシンプルで分かりやすいと思います。変換用のテンプレートを作る段階で少し苦労しましたが、瀬戸先生やTKCのスタッフの方々が丁寧にサポートしてくださったので、目立ったトラブルもなく作成できました。最近は自社製品を扱う洗浄機事業部で使用していたエクセル形式の請求書も『インボイス・マネジャー(FX4クラウド)』に読み込み、デジタルインボイスとして送信しています。

──送信後、得意先から何か反応はありましたか。

中條 最初に送信したときは「請求書が届いていない」という問い合わせを何件か受けましたが、電子で送っていることを説明したところ、すんなりと理解してもらえました。

──デジタルインボイスの送信以外の活用方法は?

中條 電子取引データの保存に活用しています。今は社内のサーバーに保管されている電子取引データを、私が『インボイス・マネジャー(FX4クラウド)』にアップしているのですが、このシステムは『FX4クラウド』がインストールされていないパソコンでも利用できると聞いているので、今後は各担当者が直接保存できるように仕組みを整備したいと考えています。

──最後に今後の抱負を。

平出 当社は今年で創業60周年を迎えます。この節目のタイミングで今取り組んでいるのが、「共創と挑戦」をテーマとした中期経営計画の作成です。従来は幹部社員数人で計画を作ってきましたが、今回は新たな取り組みとして各部門から社員を選抜し、総勢20人のチームで計画作成に臨んでいます。社員たちが平出精密の将来をどう描くのか……。完成がとても楽しみです。

コンサルタントの眼

原 大次郎所長

経理業務にも表れる“チャレンジング”な社風

税理士法人瀬戸会計事務所 / 所長 瀬戸雅三

 平出精密さまとはお互いの先代、平出社長のお父さまと私の父がともに代表を務めていた頃からのお付き合いです。先代の頃からチャレンジ精神の旺盛な社風で、新しい技術を開発したり最新設備を積極的に導入したりと、ものづくりに対して熱心な姿勢で取り組んでこられました。平出社長にバトンタッチして以降、これらの革新的な戦略がさらに加速した印象です。

 平出社長とは毎月の巡回監査の際に面談の時間をいただいています。常日頃から会計数値を意思決定の基準として活用されており、工場の増築や最新設備の導入など、ありとあらゆる戦略を最新業績にもとづいて構想されています。そんな社長の右腕として活躍しているのが『FX4クラウド』。仕訳連携機能や部門階層別管理機能など、『FX4クラウド』をとことん活用し、意思決定の迅速化、経理事務の合理化を進めています。

 昨年10月、平出精密さまではインボイス制度を契機として、新たにデジタルインボイスの送受信にチャレンジされました。革新的でチャレンジングな社風は、こうした経理事務の面にも表れていると感じます。

企業情報

本社工場

株式会社平出精密

業種
精密板金加工業
創業
1964年1月
所在地
長野県岡谷市今井1680-1
売上高
20億円
従業員数
140名
URL
https://www.hiraide.co.jp/

顧問税理士 所長 瀬戸雅三
税理士法人瀬戸会計事務所

所在地
長野県岡谷市赤羽1-3-28
URL
https://www.tkcnf.com/setokaikei

『戦略経営者』2024年2月号より転載)