株式会社サノ 様

統合型会計情報データベース(FX4クラウド) ユーザー事例

部門別業績管理を徹底して
期末予測の精度を高める

サノは医療、研究機関で使用する試験薬を扱う老舗卸売企業。4年前に社長に就任した佐野宗孝社長は、3カ年の中期経営計画を策定し、自社製品の開発や経理体制の変革にまい進している。佐野社長と堀川勤専務、経理担当の平川大介課長に月次監査担当の髙橋晃彦税理士を交え、早期の月次決算がもたらした効用を語ってもらった。

臨床検査薬やサプリで健康的な暮らしを支援

──今年、会社設立65年を迎えたそうですね。

佐野 当社の創業は江戸時代初期にさかのぼり、呉服業の後、薬種問屋を代々営んできました。秋田県内外で55店舗の調剤薬局を運営するサノ・ファーマシーとともに、ホールディングス体制をしいています。
 当社が担っているのは、臨床検査薬や研究用試薬、電子工業薬品等の卸売り事業。いわゆる川中の立ち位置で県内の病院、研究機関、企業に商品を卸しています。

──注力されている事業領域は?

佐野 秋田県では、毎年1万人を上回るペースで人口減少が続いています。こうした外部環境は、県内に主要顧客を抱える当社にとって死活問題です。その問題解決の打ち手として、県外や海外の人々のニーズをつかむべく「メイド・イン・サノ」を掲げ、オリジナル商品の開発に取り組んできました。今年8月に発売したサプリメント「てくケア」はそのひとつです。

──商品の特徴を教えてください。

佐野 黒ショウガエキスと秋田県産ジュンサイのエキスを配合した機能性表示食品です。佐野薬局の薬剤師と管理栄養士、販売スタッフからなるチームを立ち上げ、秋田市の研究機関と共同開発しました。
 黒ショウガの含有成分は、歩行能力の維持機能があると報告されています。商品名には、てくてく歩くのをケアするという意味と、テイクケアという2つの意味合いを込めています。

──発売まで2年半を要したそうですが、どのような試行錯誤を?

佐野 一番大変だったのは、消費者庁との書類のやり取りですね。機能性表示食品は2016年に設けられた制度で、消費者庁への届け出により、表示することができるとされています。ただ実際には、消費者庁に書類を複数回提出する必要がありました。販売開始後はご好評いただいており、地元産の食材を用いている点や、薬剤師等の専門家と共同開発した点が着目され、メディアで取り上げられる機会が増えています。

──「SDGs(持続可能な開発目標)バッジ」を着用されていますが、その関連の取り組みをお聞かせください。

佐野 てくケアの原料として、秋田県三種町で収穫したジュンサイのエキスを用いていますが、これまで廃棄処分されていた葉の部分から抽出したものです。また、コロナ禍で発売した除菌スプレー「杉の雫」も、今まで木材の伐採後に廃棄処分されていた杉の葉を原料としています。こうした地域社会への貢献活動がひとつ。
 それとSDGsには、社員の働きがいの向上をテーマとする項目もあります。当社では3カ年の中期経営計画「サノアクションプラン(SAP)」を策定しており、今期は「SAP2022」の最終年度にあたります。その活動の一環として取り組んでいるのが、社員の働きがいの充実です。各部署の社員がプロジェクトメンバーとなり、働きやすい職場づくりをテーマに議論してきました。
 3年前におこなった社員満足度調査を年度末に改めて実施し、活動の効果を検証する予定です。

データ連携機能を活用し月次決算の早期化を実現

──『FX4クラウド』を導入されたのは4年前と聞いています。

佐野 私は大学卒業後、東京都内の化学メーカーに就職し、6年間勤務しました。その後サノに入社して、2019年に父から事業を引き継ぎました。社長就任後まず着手したのは、会計システムの切り替え。経理業務を抜本的に改めたいと考えたんです。税理士法人RINGSの髙橋先生から、『FX4クラウド』というすぐれモノの会計システムがあると紹介されていたので、業績の透明化や経理体制の刷新を目的に導入しました。

──従来はどのような経理方法だったのでしょう?

堀川 前社長が『FX2』への仕訳入力など、経理業務を一手に担っていました。事業承継を決断された後、経理業務を一時的に引き継ぎましたが、売掛金や買掛金の金額が『FX2』と販売管理システム上でなかなか一致せず、原因を探すのに苦労していました。いまどきもっと効率的なやり方があるのではと、常々疑問に感じていたんです。

──『FX4クラウド』に移行してどんな点が変わりましたか。

佐野 会計システムの運用を担当している業務・総務課の平川の尽力や、販管システムとのデータ連携機能の活用により、仕訳入力の負担が軽くなり、月次試算表が手元に届くタイミングが格段に早くなりました。例えば10月の試算表が完成したのは、11月7日の午前中でした。つまり営業日に換算すると、4営業日後に最新の業績をつかめていたことになります。
 前月の業績を迅速に把握できるようになったため、毎月第2週の金曜日に、幹部会議の開催日を固定化できました。部門別の精緻なデータをもとに業績をブレなく予測できるのはありがたいです。

髙橋 幹部会議の開催を受けて、第3週の木曜日には月次監査のために訪問していますが、直近では訂正が必要な仕訳データはほとんどありません。会計データのチェックに要する時間が減った分、中期経営計画の進捗確認や打ち手の話し合いなどに、より多くの時間を割けるようになりました。

オリジナルの集計表で経営の見通しを立てる

──幹部会議ではどんな資料を配布していますか。

平川 『FX4クラウド』の「マネジメントレポート(MR)設計ツール」を活用して、オリジナル帳表の「部門別損益集計表」を作成しています。集計表では、部門ごとの業績を前年比および予算比で把握できるようになっていて、とりわけ販売管理費の動向に注目しています。

──経営サイドで注視されているポイントを教えてください。

堀川 重点的に確認するのは、支払いおよび入金の予定です。月末等にどの程度の入出金額が見込まれるか、正確な数値をあらかじめ把握でき助かっています。こうした資金繰り機能を活用できているのは、経理担当の平川がシステム操作に習熟しているからこそ。部門別業績管理やMR設計ツールなど、利用範囲を段階的に広げてきたなかで、『FX4クラウド』は、なくてはならないツールであると感じています。

──そのほかに活用している機能はありますか。

平川 重宝しているのは「仕訳読込テンプレートの設計」機能です。この機能を利用して、自社開発の販管システムから出力したファイルを『FX4クラウド』に仕訳として読み込んでいます。その結果、入力ミスの防止や経理業務の負担軽減につながりました。

佐野 コロナ禍で頻度は減ったものの、出張時にスマートフォンで限界利益や口座残高などを確認できるのも便利です。クラウド型のシステムだから、アクセス権限を設定すれば閲覧できる社員を柔軟に変更できる。当社のようなグループ経営している企業にとって、利用価値は大きいと思います。

──目標をお聞かせください。

佐野 「SAP2022」で掲げた、売上高25億円、限界利益3億3,000万円という目標を昨年度達成できました。来年度からスタートする新たな中期経営計画「SAP2025」を策定するため、部門ごとの人員、資金計画を立ててもらっている最中です。売上高の80%以上を占める卸売り事業の強化が、当面優先して取り組むべき課題だと考えています。あわせて、社員1人ひとりが、より意欲的に仕事ができる環境を整備し、働きがいのある会社づくりに取り組んでいきます。

企業情報

株式会社サノ

設立
1957年10月
所在地
秋田県秋田市卸町3-4-2
売上高
25億5,000万円
社員数
34名
URL
https://www.sano-co.com/

顧問税理士 三浦昌貴
税理士法人RINGS

所在地
秋田県秋田市御所野堤台1-6-85
URL
https://rings-accounting.jp/

『戦略経営者』2022年12月号より転載)