導入事例 CASE STUDY
株式会社プライムバンク 様
統合型会計情報システム(FX4クラウド) ユーザー事例
管理業務のDX化で飛躍を目指す
人材総合サービス会社の将来性
元証券マンの宮﨑哲也社長が、2006年に埼玉・東松山で設立したプライムバンク。「最も優れた人材を蓄えている」という意味合いを社名に冠した同社は、管理業務のDX化を推し進め、さらなる飛躍を目指す。宮﨑哲也社長、飯嶋克寿取締役、服部美賢顧問税理士に話を聞いた。
宮﨑哲也社長
──創業のいきさつは。
宮﨑 証券マンの時代に独立を志し、2年間人材派遣会社に勤めてノウハウを吸収した後、故郷の東松山市に帰って2006年に当社を設立しました。証券業界とは縁を切り、一からの起業でした。
──ちょうど製造現場への人材派遣が解禁されてすぐの頃ですね。
宮﨑 はい。成長産業と目されてはいましたが、東松山市近辺では人材派遣を利用する会社もまだ少なく、当初は、地元企業に飛び込んで人材派遣のメリットについて説明しつつ営業活動を行いました。
自動車関連業界に強み
──激しい競合のなかでの差別化はどのように?
本社社屋
宮﨑 とにかく「人(派遣者)を大事にする」ことを心掛けました。当時の人材派遣業界は、いくつかの大手企業のずさんな派遣者の管理が批判の対象となることも多かったので、派遣者一人ひとりの意向や生活環境などを営業マンがフォローアップしながら離職率を抑え、また丁寧な教育の実施によって仕事のクオリティーの高さを担保することで、取引先の信頼を獲得していきました。昔も今もそこが当社の最大の強みです。
──自動車業界からの受注が目立つようになったのは?
宮﨑 東松山市には世界的な自動車部品メーカーのボッシュの工場があり、同業者や地元の伝手(つて)を頼りながらここと取引できたのが大きかったですね。また、13年にホンダの寄居工場が稼働した際にも、やはり人脈をたどりながら取引をスタートすることができました。そうした実績を積み重ねるうちに、近隣の富士重工、神奈川の日産や福岡のトヨタ工場からの引き合いも得ることができ、いまでは当社の売り上げの約8割は自動車関連が占めています。
──8割とはすごいですね。
宮﨑 自動車産業は生産工場のほかにも、物流拠点や倉庫なんかもあって裾野が広く、営業活動のなかで人脈を広げていけば、ニーズを深掘りしていくことができます。その意味では安定していると同時に、やり方次第では今後も伸びが期待できる市場だといえます。
──自動車関連以外の分野は?
宮﨑 さまざまあります。たとえば、福岡ではNTTとの取引もありますし、一般企業の事務系の仕事の受注も少なくありません。また、埼玉県や群馬県、東京都、神奈川県など近隣の県市区町村への派遣も増えてきました。ちなみに、7月には90名の人員(1日)を東松山市長選挙に派遣する予定です。七つある支店の支店長には、今後、行政への営業を強化するよう指示しています。
──派遣会社は構造的に薄利だとも言われています。対策は?
宮﨑 業務の効率化と経費の削減によって利益体質の構築につとめ、粗利益30%前後、最終利益7%を一応の目標にしています。創業からしばらくは思い通りにいきませんでしたが、近年はこの利益目標をクリアできるようになっています。
複数の基幹システムとシームレスに連携
──業務の効率化といえば、社内体制の整備がポイントになってくると思いますが……。
宮﨑 7つある支店の支店長や営業マンの教育が大事だと考えています。効率よく人材を配置して、ムダのない業務フローを作らなければなりませんから。そのために根拠のあるデータが必要なので、バックヤードのDX化にも取り組んでいます。
──DX化は服部先生の提案がきっかけだったのだとか。
服部美賢顧問税理士
服部 5年ほど前に私が税務顧問に就任した際、すでに『FX4クラウド』を導入されていたのですが、複数人入力機能を使っていたくらいで、他の機能はほとんど活用されていませんでした。それではもったいないと思い、基幹システムとの連携や階層別部門管理、あるいは、自由に帳表をデザインできる「マネジメントレポート(MR)設計ツール」の活用などを提案させていただきました。
──それまでの管理業務はどんな感じだったのでしょうか。
飯嶋(取締役) 当時、約650名の派遣社員を抱えていて、その給与明細や請求書、社会保険、雇用保険、交通費などの経費をそれぞれの帳簿から拾い上げて集計する作業を行っていました。そこから『FX4クラウド』に手入力して、最終的にそれぞれのデータを照合するというプロセスを経ていました。
──それを一元化されたわけですね。
服部 当社は人材派遣業向けの販売管理と勤怠管理のシステムを使用していて、これはどうしても外せない。ですから、CSVでデータを切り出して『FX4クラウド』へ自動的に移管する仕訳連携機能を活用することにしました。
──導入効果は?
飯嶋 これまで手入力だった部分がシームレスに連携されたので、当然ながら手間はかからないし入力間違いもなくなりました。それと、常に最新のデータを見ることができ、「MR設計ツール」を使って、経営判断を促すような管理データを作成することも可能になりました。
──詳細な部門別管理も実践されているのだとか。
宮﨑 各支店長に新しいパソコンを配布してモニターライセンスを与え、『FX4クラウド』の内容を見ることができるようにしました。これで、支店長の意識が一気に変わりましたね。それぞれが自分で売り上げや粗利、経費を確認し、打ち手に生かすようになりました。
服部 経営データの内容も、部門別管理機能を生かしつつ、非常に細かいものにしました。全社業績や支店業績はもちろん、取引先別業績、さらには派遣社員の一人ひとりの業績を部門として重層的に管理、4階層の損益が分かるようにしたのです。ちなみに、宮﨑社長は税理士試験5科目のうち2科目に合格されているほど数字に詳しく、データを経営判断の材料として生かしていく気持ちの強い方です。そのニーズに応えていくためにも、このような緻密な管理が必要でした。
──社員個別の損益まで管理できるというのはすごいですね。
服部 膨大な仕訳数に上るので、これはもうシステムでないと無理です。
飯嶋克寿取締役
飯嶋『FX4クラウド』では、集計に時間がかからないので、常に最新で正確なデータを見ることができます。それによって、たとえば利益率の高い注力すべき取引先を選別したり、利益率が著しく低い派遣社員の問題点を検証したりといったこともタイムリーにできるようになりました。それと、さきほど社長が述べたように、支店長の意識がてきめんに変わったのは強く感じています。
──どのように?
飯嶋 ある支店長は、月極駐車場を借りるより、時間貸しの有料駐車場を使った方が安いと判断しました。また、社会保険料なども、これまではいきなり負担が来て慌てる支店長も多かったのですが、いまでは事前に予測して収支バランスを見ることができています。
──数字が読めるようになったと。
宮﨑 そう。毎月の支店長会議では、各自のパソコンでクラウド上のデータを見ながらさまざまな課題について話し合いますが、より具体的で実用的な打ち手の提案が増えてきたという印象があります。
──関連会社のプライムトラストでは、FXシリーズの「証憑(しょうひょう)保存機能」も活用されているとか。
自動車部品の選別作業
服部 領収書や請求書など、紙のものはスキャニングして、電子取引は電子データのまま取り込んで保存、仕訳入力へとシームレスにつなげています。また、今年1月から電子取引データを紙で出力して保存することが禁止されたので(2年間の宥恕(ゆうじょ)期間あり)、この法改正にも対応することができています。証憑保存機能については、近くプライムバンクでも採用する予定です。
──今後はいかがでしょう。
宮﨑 より会社としての体力をつけつつ、一方で人材派遣以外の事業にも手を広げていきたいと考えています。まずは、経済産業省の事業再構築補助金を活用して、この7月から地元でトレーニングジムとエステサロンをオープンします。そして、現在の年商15億円(グループ)を5年後に20億円に引き上げ、3会社9事業(現在2会社6事業)にまで拡大する計画です。さらにその5年後くらいには悠々と引退したいですね(笑)。
企業情報
バックオフィスのデジタル化が進む
株式会社プライムバンク
- 設立
- 2006年2月
- 所在地
- 埼玉県東松山市神明町1-1-5
- 売上高
- 約15億円
- 社員数
- 80名
- URL
- http://primebank.co.jp/
顧問税理士 グランディール税理士法人
代表社員・税理士 服部美賢
- 所在地
- 埼玉県東松山市美土里町6-81
- URL
- https://grandir.or.jp/
(『戦略経営者』2022年8月号より転載)