導入事例 CASE STUDY
株式会社マリンフロート 様
右から2人目は中村敬子さん
統合型会計情報システム『FX4クラウド』 ユーザー事例
「ものづくりは物語」精神で突き進む
発泡樹脂の専門家集団
発泡スチロール樹脂をベースに建築装飾、養殖用ブイ、船舶用防舷材などさまざまな分野で製品を販売しているマリンフロート。光岡会計事務所の光岡寿弘所長税理士、板野幹也巡回監査担当を交え、同社の中村俊一社長にTKCシステムの活用法や経営戦略について聞いた。
「できません」は禁句で常にアイデアを出し続ける
──デザイン性の高い建築装飾を数多く制作されているとお聞きしています。
中村俊一社長
中村 装飾性の高い3D造形物や立体看板の制作を得意としています。代表的な制作物には、大阪・箕面墓地公園に設置した全長8メートルの金色の涅槃(ねはん)像、大阪・道頓堀川沿いのビル屋上に設置した人気チェーン店「串かつだるま」の巨大人形「だるま大臣」、高知駅前広場に10年前に設置した坂本龍馬、中岡慎太郎、武市半平太の土佐三志士像などがあります。三志士像はブロンズ像に見えますが、実は発泡スチロール(EPS)にハイブリッドウレタン樹脂を直接吹き付けた「デコフォルム」で作られています。デコフォルムは、軽くて弾力がある発泡スチロールの特性を生かしながら、強度や経年変化にも強いというのが特徴です。デザイン性の高さや成型の自由さから、一般建築はもちろんのこと、ホテルやレストランなどの商業施設、オフィスビル、テーマパークなど幅広い用途で使用されています。
──元々は海洋で使用される製品を販売していたとか。
中村 40年以上手がけているのが養殖で使用する発泡スチロール製の浮力体(ブイ)です。ベーシックなタイプのブイは紫外線から守るためにポリエチレン製のカバーをかけるのですが、だいたい3年もすれば劣化して破れてしまいます。これを防ぐために当社では、芯材の発泡スチロールと外側のプラスチックを同時成型した「ハイブリッドフロート」の提供や、生分解性プラスチック製カバーの試験導入などを実施。世界的な問題になっている海洋プラスチックごみの抑制に取り組んでいます。また現在は養殖筏(いかだ)用素材として主に竹が使われていますが、その竹の代用として発泡スチロールやABS樹脂、ガラス繊維を一体成型した次世代型資材「ハイブリッドパイプMF」も好評です。竹材の3倍以上という高い耐久性、高耐候性、波から受ける負荷を吸収するしなりの強さを兼ね備えています。
──最近開発された画期的な新製品についてお聞かせください。
(上)養殖用のブイの基材 (下)3D造形物を得意とする
中村 現在当社の一番のトピックは、世界にも例を見ない高性能な船舶用防舷材の開発に成功したことです。船舶用防舷材とは、船と船が接触した際に衝撃を吸収するためのクッションのこと。衝撃に強いゴム製はその重量が難点で、機動性が求められる海上自衛隊や海上保安庁などでより軽くて強い防舷材のニーズが高まっていました。そこで当社はEPSやネオフォーム、発泡ポリプロピレン(EPP)、ポリウレタンエラストマーなどのプラスチックを使った軽量防舷材フロートを開発、「マリンフェンダー」のブランド名で約10年前に防舷材市場に参入していましたが、先日EPPの表面にハイブリッド樹脂を塗布した新製品を試験したところ、吸収エネルギーと反力が従来品の倍以上に達する世界一の防舷材であることが分かったのです。これには大手造船メーカーの担当者もびっくりで、「ウルトラマリンフェンダー」として販売していく予定です。
──常に新市場開拓、新製品開発に取り組んでいる印象です。
中村 私はよく社員に対し「ものづくりは物語だ」と話すのですが、開発の現場には必ず秘話があり、その秘話は必ず営業トークに生かすことができます。私が従業員に求めるのは、アイデアを出し続けることと課題解決の力を発揮することで、社内では「できません」という言葉は禁句になっています(笑)。
部門ごとの人時生産性で頑張りや工夫を数字で確認
──『FX4クラウド』導入の経緯などについてお聞かせください。
中村 光岡先生とは先代の時代からの長いおつきあいをさせていただいていますが、私は経営の基本的な考え方として、西順一郎氏が提唱された「MQ会計」を採用しています。これはP=単価、Q=数量、V=変動費、M=儲(もう)け、F=固定費、G=利益と置き、企業方程式「PQ=VQ+MQ、(MQ=F+G)」で表現できるというもので、この考え方を板野さんに話したところ、TKCの変動損益計算書の考え方と基本的に一致していることが分かり、他社システムから、ご提案いただいた『FX4クラウド』に切り替えることにしました。MQは変動損益計算書でいうところの限界利益のことですからね。
──オリジナル帳表がエクセルで簡単に作成できる「マネジメントレポート(MR)設計ツール」を活用されているとか。
板野幹也巡回監査担当
板野 中村社長の要望に応じ、MR設計ツールを活用して各6部門の月次の限界利益を毎月5~10日に出せるようにしています。このレポートの最大の目的は、中村社長が各部門の人時生産性と部門単位での変化をできるだけ早く把握することです。各部門で1カ月間の総作業時間を入力すれば1時間当たりの限界利益が算出できるので、受注見積もりの参考数値に生かすことができます。また1時間当たりの限界利益を部門ごとで比較することにより、部門の頑張りや工夫を数値に表すことも可能。利益が伸びない部門は正社員ではなくパートに切り替えるなど人員配置の適正化を素早く行い、人財の全体最適化を図ることができます。
中村 人時生産性は、各部門の限界利益を総労働時間で割って計算するのですが、これはつまり1時間当たりの部門ごとの儲けにほかなりません。しかしこの計算の時に使う総労働時間を日報などから正確に把握するのが非常に難しい。そこで当社では、すべての加工指示書にQRコードを付し、作業を担当した従業員がアイパッドで読み込んでどこまでの工程をどのくらいの時間をかけたかを入力する仕組みを整えました。こうして集計した総労働時間で限界利益を割ることで、1時間当たりに各部門がどれくらい儲けているかについて、正確な数字を知ることができるようにしています。
──部門ごとの限界利益を正確に素早く把握することが、経営サイクルをうまく回す前提になるわけですね。
中村 私は報告(社員・幹部)→決定(経営者)→実施(社員・幹部)→チェック(経営者)をぐるぐると回す「決定サイクル」の手法を経営に取り入れています。ソフトバンクグループの孫正義氏が太鼓判を押したことで有名な経営者育成研修「MG研修」で学んだものですが、TKCシステムはこの「決定サイクル」や前述の「MQ会計」の実践をしやすくしてくれる懐の深いシステムだと感じています。
──業務効率改善の観点からはいかがでしょう?
光岡寿弘税理士
光岡 奥さまの中村敬子さんが経理を担当されているのですが、当初は基幹システムに入力されたデータをエクセルで加工し、それを再度会計システムに入力していたので相当大きな負担がかかっていました。しかし今は、請求書を発行した時点で売り上げが計上されるなど、データ連携で直接基幹システムから『FX4クラウド』にデータが飛ぶようにしたので、経理業務の効率は大幅に向上したと思います。
板野「銀行信販データ受信機能」も業務負担の大幅な軽減につながりました。以前は敬子さんが複数の銀行のホームページに一つ一つアクセスし、その都度パスワードを入力して残高の確認をしていましたが、同機能を使うことで、1ページですべての知りたい情報を知ることができるようになりました。
──金融機関などとのコミュニケーションも積極的に行っているとお聞きしました。
光岡 金融機関の担当者や取引先、社員などの関係者をホテルの会議場に招き、中村社長が経営計画などを公表する「経営計画発表会」を毎年開催しています。経営計画や決算の報告、重点的な取り組みの紹介、社員表彰など盛りだくさんの内容ですが、これだけの催しを毎年開催している会社はなかなかありません。普段見ることのできない制作物の写真などを大画面のスライドで見られることから、金融機関や取引先の安心感にもつながっていると思います。
中村 金融機関とのコミュニケーションは大切にしていて、定期的な訪問活動を行っています。そのときに気を付けているのは、各金融機関にはまったく同じ内容の説明を行うこと。そうすることによって銀行による反応の違いがはっきり分かり、その後の交渉に生かせるからです。
──今後の抱負をお聞かせください。
中村 例えば当社に入社したばかりの初心者でもすぐに見積もりが作成できたり、事務スタッフでも簡単に図面を作成できるような仕組みづくりを今後3年程度で整備していきたいと考えています。また職人の勘を数値化してさらなる機械化につなげていくことも目標に掲げています。
企業情報
本社外観
株式会社マリンフロート
- 設立
- 1988年7月
- 所在地
- 岡山県岡山市南区箕島271-1
- 社員数
- 36名
- URL
- https://marine-f.jp
顧問税理士 所長税理士光岡寿弘
光岡会計事務所
- 所在地
- 岡山県岡山市北区平和町2-5
- URL
- https://mitsuoka-zeirishi.tkcnf.com
(『戦略経営者』2021年12月号より転載)