──キタムラさんといえば、「横浜元町」発祥のハンドバッグブランドとして有名です。

辻 桜係長

辻　1882（明治15）年に横浜元町に誕生し、創業当時は風呂敷や和装小物を扱っていましたが、時代の流れとともにいち早くヨーロッパブランドを取り入れたハンドバッグ専門店となりました。1972（昭和47）年には「本物の価値あるハンドバッグがつくりたい」という思いから、本物へのこだわりと横浜元町の感性を組み合わせたキタムラだけのオリジナルバッグの展開を始めました。現在のKマークが誕生したのもこの時です。

──鮮やかな色使いやデザインで、たちまち人気を集めたそうですね。

辻　革のハンドバッグというと当時は黒や茶などの色が主流で、他ではどこもやっていなかったピンク、アイスブルーといったパステルカラーやキタムラ紺に革を染めることにも挑戦しました。キタムラのコンセプトは「やさしさ・可愛(かわい)らしさ・上品さ」です。カラーだけではなくデザインや素材、機能性など全てにこだわったものづくりを現在も続けています。

──本店1階の売り場を見回すと、どこか〝遊び心〟を感じさせる商品も目に付きますね。

辻　今季の新作は立体的なパーツや刺繍(ししゅう)、プリントなどいろいろな手法でイチゴを表現したシリーズです。カジュアルからフォーマルシーンにお使いいただけるシンプルで使いやすいバッグも多数展開していますが、家やケーキの形をそのままバッグにした商品など「これハンドバッグなの？」と思わず笑顔になってしまうような遊び心あふれる商品も取り揃(そろ)えています。

──そして本店2階は、「クロコダイルショップ」になっています。

辻　希少価値の高く上質な皮革ですが、多くの方により身近にクロコダイルをお楽しみいただきたい思いから、キタムラでは24色の豊富なカラーバリエーションを用意しています。また、中にはリボンやベルトだけなど部分的にクロコダイルを使用した商品もあり、カジュアルなシーンでもお使いいただけます。

──「トータルコーディネート」の提案にも力を入れているとか。

魅力的なキタムラの商品

辻　キタムラと言えばハンドバッグのイメージの方が多いかと思いますが、女性のお洒落(しゃれ)にはバッグだけではなく、洋服や靴とのコーディネートも大切な要素です。素材やシルエットにこだわった上質な洋服、履き心地にこだわり足を美しく見せるシューズを合わせたキタムラらしいやさしく上品なコーディネートをご提案しています。2016年秋には、「元町三丁目店」を小物店から洋服とシューズをメインにしたお店にリニューアルし、バッグとはまた違うディスプレーができるよう取り組んでいます。実は、いま私が着ているワンピースもキタムラのものなんですよ。

──現在、全国に何店舗を展開しているのですか。

辻　オンラインショップ（ECサイト）を含めて、合計31店舗あります。全国各地の百貨店に売り場を設けているほか、「海老名サービスエリア」をはじめ、高速道路のサービスエリア・パーキングエリア全3カ所でも展開しています。

──やはりインターネットでの販売は重要ですか。

辻　これだけネット社会になると、お客さまの買い方も変わってきているため、それに対応していかなければならないと思っています。ネットで商品を見てから実店舗に買いに来るお客さまもいれば、実店舗で下見をしてからネットで購入するというお客さまもいます。ECサイトの充実は今後さらに重要なテーマになってくるでしょう。

──『FX4クラウド』を導入した経緯をお聞かせください。

葛西理恵次長

葛西　顧問税理士の鈴木（裕章）先生から提案されたのがきっかけです。2017年3月に導入しました。

鈴木税理士　以前は他社の会計ソフトを利用されていましたが、あまり使い勝手がよくないとの相談を前々から受けていました。そこで、『FX4クラウド』に「銀行信販データ受信機能」が搭載されたタイミングで提案してみたところ、高い関心を示してくれたんです。

──『FX4クラウド』のどこに魅力を感じましたか。

葛西　自社でサーバーを持つ必要がない「クラウド」型のシステムであるという点が、まず一つ。それと、仕訳データを手入力する手間を軽減できる機能があるところも、魅力的でした。『FX4クラウド』を導入すれば、経理業務の効率化が間違いなく進むと思いましたね。
　当社では「経費」「棚卸し」「買掛金」「給与」等、部門別に多くの仕訳があります。それらをできるだけ効率的に行いたいとの思いは以前からありました。

──『FX4クラウド』を導入する前は、どんなふうに仕訳入力の作業を行っていたのですか。

葛西　まずは紙ベースで提供された棚卸しや支払い明細等の各種資料を、エクセル（スプレッドシート）で作った所定のフォーマットを使って集計し、仕訳入力用のデータベースとします。さらにそれを紙にプリントアウトしたうえで、あらかじめ会計ソフトに登録している仕訳パターンを呼び出しながら、手入力で会計ソフトに打ち込んでいくというのが以前のやり方でした。

──『FX4クラウド』導入後の使い勝手はいかがでしょう。

葛西　「仕訳読込テンプレート」の機能を使って、エクセルのデータベースと仕訳連携（データ連携）をさせています。つまりエクセルにあるデータを、そのまま『FX4クラウド』側に流し込んでいくイメージです。これなら、仕訳を手入力する手間が要りません。
　以前使っていた他社の会計ソフトにも、外部のデータの〝取り口〟となる機能（データ連携機能）が一応ありました。しかし、自分たちの側でそのフォーマット（仕様）に合わせたデータを用意する必要があり、そこへの対応にかなり時間をとられるため、結局、その機能を一度も使うことはありませんでした。
　ところが『FX4クラウド』の場合、鈴木先生とTKCの導入担当者のサポートのもと、システムを私たちの仕様に合わせてくれるので助かっています。この機能を使って仕訳入力作業の省力化を進めていった結果、1カ月あたり「9人日分」の作業時間が削減されました（1人日＝8時間で計算。75.8時間の削減／右図参照）。
　また、「銀行信販データ受信機能」を活用すれば、材料仕入れや広告宣伝費の支払いなどで利用するインターネットバンキングの取引データを使って効率的に仕訳入力ができます。この効果も大きかったです。

──仕訳入力の効率化によってできた時間は何にあてているのですか。

葛西　経理業務全般の「精査」（チェック）です。経理課では、ノー残業の目標を何とか達成してはいるものの、限られた時間のなかで作業を〝凝縮〟して行っており、かなりの集中が要求される働き方を余儀なくされていました。そのようななか、仕訳入力の効率化による時間的な余裕が生まれたことで、チェック作業に労力をより割けるようになりました。月次決算においてはチェックが行き届かないと、翌月に修正仕訳をしなければならなくなります。しかし今は、そうした修正仕訳の数はだいぶ減ってきました。

──毎月、当月内にきちんと終われば、「年次決算」もスムーズに終わりそうですね。

葛西　ええ。今年の年次決算はかなり期待しています（笑）。

鈴木裕章顧問税理士

鈴木税理士　キタムラさんの税務申告は、ちょうど横浜元町ショッピングストリートで行われる秋（9月）の「チャーミングセール」と重なる時期になることが多い。9日間のセール期間中は売上件数が増えるため、決算・申告業務を引きずったままだと、かなり忙しくなります。それを避けるためにも、毎月きちんと数字を精査していくことが大切になります。

──ほかに『FX4クラウド』導入の効果があれば教えてください。

葛西　予算策定の作業がスムーズに行えるようになったことですね。
　当社の予算は、前期の実績をもとに作られます。そのため、それぞれの店舗の1年ぶんの実績を示した資料（エクセルシート）が必要になるのですが、以前は2日程度費やしてそれを作成していました。しかし今は、「マネジメントレポート（MR）設計ツール」の機能をうまく利用することで、31店舗分の資料をわずか2時間程度で作ることができています。

──今後の展開についてお聞かせください。

辻　やはりECサイト事業のさらなる拡充というのがありますね。

葛西　ECサイトの運営で重要なのは、購買データや販促効果などの分析力です。「なにが売り上げにつながったのか」の分析を、経理課を含むキタムラの「管理部」全体でサポートしていくためにも、より一層の業務効率化を進めていきたいと考えています。