導入事例 CASE STUDY
有限会社輪音creation厨様
統合型会計情報システム(FX4クラウド)ユーザー事例
「部門グループ別管理」で
組織横断的に採算性をみる
三重県北中部(鈴鹿市・四日市市・津市)を中心に「座ダイニングたわわ」と「隠れ庵 個室のたわわ」を展開するのが、山名孝社長(47)が代表を務める「輪音creation厨」だ。現在5店舗を運営する同社が業績管理に活用しているのがTKCの『FX4クラウド』。店長を育成するうえでも役立っているという。
カクテルの名前にちなんで「わをん」と名付ける
──和風ダイニング居酒屋を三重県内で展開されているとか。
山名 孝社長
山名 2002年に「座ダイニングたわわ」を鈴鹿市内に出したのがスタートです。現在この業態で、白子駅前店、四日市店、津駅前店の3店舗を出しています。また、「隠れ庵 個室のたわわ」の業態でも出店していて、白子駅前店と四日市店の2店舗があります。こちらは、もう少しアッパークラスのお客さまを狙ったお店です。
どちらの業態も「落ち着いた雰囲気で飲める店」というのをコンセプトにしているため、お子さまを含む未成年の同伴はご遠慮いただいています。平日は会社帰りのサラリーマンの方が多いですが、週末は女性客の姿も増えます。
──お酒や料理のこだわりは。
山名 ビール、焼酎、ワイン、ウイスキー、カクテルなど豊富な種類を取りそろえています。料理については、旬の食材(伊勢赤鶏、松阪牛、地元野菜など)を使った炭火料理のほか、自家製豆腐などが特におすすめです。自家製豆腐は厳選した大豆をベースに毎日お店で手作りしたもの。甘みのある味わいが特徴です。
──独立開業する前は何をされていたのですか。
山名 レストランなどの飲食業界で働いていました。東京などで見てきたことを自分の地元で発信したいと思い、当時まだめずらしかったダイニング居酒屋をはじめました。
最初の店はロードサイドに出しましたが、道交法が改正され飲酒運転の罰則が厳しくなったこともあり、2店舗目以降は駅前に出店するようにしました。なおロードサイドの1号店は昨年閉店し、現在のお店の数は全部で5店舗です。
──「輪音creation厨」という社名にはどんな由来があるのですか。
山名 輪音(わをん)というのは、実は「XYZ」という有名なカクテルの名前がもとになっています。XYZはアルファベットの最後の3文字。あとに続くものがない最高のカクテルという意味合いが込められています。私たちの社名の輪音はそれにちなんだもので、五十音の最後の3文字を使いました。つまり、最高の会社を創造していきたいという願いが社名に込められているのです。
──現在の経営環境はどうですか。
山名 景気が回復してきているとはいいますが正直、なかなか実感がわきませんね。ただ「人手不足」の傾向は如実に感じています。われわれも人ありきの商売。最低限の人材を確保できなければ当然、売り逃し(機会損失)も出てきます。とはいっても飲食業にはブラックのイメージもあり、簡単に人を集められるわけではない。そうしたイメージを払拭していくためにも、働きやすい職場環境づくりを進めるとともに、「うちに来たら○○ができますよ」といったところをうまく訴求していく必要があると考えています。
──何ができるのでしょう?
山名 たとえば経営ノウハウを学ぶことができると思います。会社の決算内容はすべてオープンにしているし、どうすればお店の収益を上げられるかの対策についても積極的に店長を関わらせています。飲食業は参入のハードルが低いため、起業したいと思って入ってくる人も多いはず。そうした人たちにとって、うちの会社は格好の〝勉強の場〟になるはずです。
──店長を含めた人材育成の面で特に重視していることは何ですか。
山名 できるだけ権限を委譲している点ですね。店長を集めて毎月開催しているミーティング(店長会議)の場に、私があまり顔を出さなくなったものも、彼らの自主性に任せたいという意図からでした。そのミーティングでは、『FX4クラウド』から出力した資料をもとに、前月の実績を検討したり、当期の予算を達成するにはどのような打ち手が有効かなどを話し合ってもらっています。
各店長がパソコンを使ってタイムリーに業績把握
──『FX4クラウド』は2年前に導入したそうですね。
山名 本部システムを入れて各店舗にパソコンを配備したタイミングで導入しました。クラウドシステムなので、どの店でも同じ画面を見ることができます。以前は、月次決算後の損益計算書などをPDFにしてメールで各店舗に送っていましたが、その手間が要らなくなりました。店長自身が、最新情報をベースにしたお店の業績管理ができるようになったわけです。
──日々の仕訳データ入力はどのような体制で行っているのですか。
山名 私が経理部長も総務部長も兼任しています(笑)。
宇野邦規・顧問税理士
宇野邦規・顧問税理士 『FX4クラウド』を山名社長に提案したのは、データ入力の作業負担を少しでも軽減したかったからでもあります。仕訳連携の機能を使えば、POSレジの売り上げデータをそのまま『FX4クラウド』に流し込めます。わざわざ手入力しないで済むのです。
山名 おかげで作業効率が大幅にアップしました。
──部門別管理はいかがでしょう。
山名 「座ダイニングたわわ」(白子駅前店、四日市店、津駅前店)と「隠れ庵 個室のたわわ」(白子駅前店、四日市店)のあわせて5店舗をそれぞれ部門に見立てて管理しています。
また、部門横断的な「部門グループ別管理」も行っています。一つは、「座ダイニングたわわ」と「隠れ庵 個室のたわわ」にグループ分けした業態別管理。もう一つは、「白子」「四日市」「津」の3エリアにグループ分けした地域別管理。こうした2種類の部門グループ別管理も取り入れることで、「どの店舗が稼いでいるか」だけでなく、「どの地域の採算性がよいのか」などもわかるようになります。
──高い利益を出せている店長と、少ししか出せていない店長の違いはどこにありますか。
山名 食材のロス管理の差だと思います。どれくらい使うかをきちんと予測しながら野菜や肉・魚などの生鮮食品を仕入れている店長は、ロス率が少ない。逆にそれを蔑ろにしている店長は、思うように利潤を出せていませんね。ほかにも、人件費のコントロールや、企画・販促ができるかどうかも重要なポイントです。
《部門別利益管理表》で各店舗の採算性をみる
──よく見ている帳表は何ですか。
山名 各店舗の売上高や変動費・固定費の動きなどを知るために《部門別利益管理表》をよく見ています。
宇野税理士 《部門別利益管理表》に記されている各店舗の「限界利益率」が適正であるかどうかを確認するとともに、共通固定費配賦前の「部門貢献利益」の数字についても特に注意深く見るようにしています。ここが少ないと、その店舗には共通固定費を振ることさえもできなくなるからです。
──固定費にはどんなものがありますか。
山名 人件費や水道光熱費のほか、広告宣伝費などがあります。広告宣伝については、ぐるなび、食べログ、ヒトサラといったグルメサイトを活用しています。費用はそれなりに掛かりますが、いまはこれらをうまく使わないと集客が難しい時代といえます。
──予実管理(予算と実績の管理)は実践されていますか。
山名 単年度計画を『FX4クラウド』に月別に登録して行っています。そうすると《部門別利益管理表》などに「計画比」が表示されるので、その月の予算を達成したかどうかがすぐにわかります。
──会計事務所のサポートをどう感じていますか。
山名 宇野先生とは開業当初からのお付き合いです。私の同級生の友人ということで税務顧問をお願いするようになりました。会社の成長過程を一番喜んでくれたり、新店を出す際の物件探しをいっしょに手伝ってくれるなど、本当に親身になって指導をしてくれています。
──今後の展望は。
山名 実は、飲食店の大激戦地、名古屋に新店を出すことも検討しています。ただ自社のこれまでの多店舗展開を振り返ると、「単に会社を大きくしたい」という思いだけで出店すると痛い目を見ることは明らか。新店オープンはきちんと人が育ってからでなければやるべきではないと考えています。とはいえ、従業員を守るためにも、あるいは育成を図るためにも、新店を積極的に出していくことは大事なこと。店長になれる機会を増やしてあげるとともに、店長の経験を積んだ社員がいずれ新設するうちの子会社の社長になるような流れを作り出せれば、「俺もそれに続こう」と、みんなのモチベーションが上がると思うんです。
企業情報
有限会社輪音creation厨
- 設立
- 2004年1月
- 所在地
- 三重県鈴鹿市中江島町28-18
- 売上高
- 2億3000万円
- 社員数
- 64名(アルバイト含む)
- URL
- http://www.wawon-creations.com/
顧問税理士 宇野邦規
税理士法人宇野会計
- 所在地
- 愛知県名古屋市緑区鳴子町5-88
- TEL
- 052-899-1277
- URL
- http://www.uno-tax.com/
(『戦略経営者』2015年8月号より転載)