──本社ビルにあるショールームを見せてもらいましたが、パッケージ、ディスプレー、SPツール等の紙器関連製品を幅広く取り扱っているようですね。

鳴島　もともとは出版関係のパッケージやケースの受注生産が多かったのですが、出版業界が低迷する中で、パソコンソフト関係の分野にも進出するようになりました。さらにその延長線上で音楽・映像関係のCDやDVDのパッケージなどにも手を伸ばすようになり、業容を拡大していきました。単にパッケージを製作するだけでなく、DVDをストッパーで固定するトレーを作ったり、セット梱包するといった仕事も手がけるようになったことも受注拡大に大きく貢献しました。

──一貫生産ができるところが御社の特徴だそうですね。

鳴島　パッケージだけだと中身は空気。その中にモノを入れれば付加価値がつく。そんな考えから、セット梱包をやるようになったり、デザインや印刷といった仕事も内製化するようにしていきました。
　一般的な紙器メーカーの場合、抜き加工やブックケース加工は自社で行うものの、それ以外の工程は他社にアウトソーシングしているところが多い。でもうちでは、企画デザイン→印刷→加工→セット梱包→倉庫保管の流れをすべて自社内で一貫しておこなえる体制を築いています。

──一貫生産のメリットといえば何でしょうか？

鳴島　他社に外注すると当然、中間マージンが発生するし、仕掛品（製作途中の品物）を移動する際に「横持ち運賃」が発生します。ところが社内で一貫生産できるのなら、それらの費用は発生しないので、トータルコストを抑えられるし、納期も短縮されます。

──なるほど。

鳴島　また、クライアントから製作依頼を受けた翌日に、いくつかのサンプルを作って見せることができるのも一貫生産ができる当社ならではの持ち味です。以前、企画デザインを他社に外注していたころは、サンプルができあがるまでに1週間ぐらいかかることもざらでした。それと比べたら、いかに早いかがお分かりいただけるはずです。

──創業は1964年だとお聞きしました。

鳴島　先代の父が、鳴島紙器加工所を立ち上げたのがスタートでした。それまで父は東京湾で漁業（ノリの生産）を営んでいましたが、時代の趨勢もあって転業を考えたそうです。その際に目を向けたのが、母が内職でやっていた紙器加工の仕事だったといいます。
　私が社長に就任したのは2000年のこと。他社に修行に出ていたときに思い描いた一貫生産の夢を実現させようと、その後、印刷機を購入したり、セット梱包業務をするための第2工場を建てたりしました。

──会社経営のモットーのようなものがあれば教えてください。

鳴島　当社の第1の目標は「幸せの共有」です。これは、お客さまに対してだけでなく、社員に対しても同様に考えています。実は、私が専務をしていたころ会社が火事になったことがあり、そのときいた5人の社員が「給料はいらないから、とにかく事業を続けましょう」と言って私を助けてくれた。以来、「従業員を大事にしなければならない」と強く思うようになりました。すると不思議なことに運がどんどん味方してくれるようになって、会社の業績が上向いていったんです。

──従業員教育にも力を入れているとか。

鳴島　社内にはさまざまな委員会があり、イベント委員会などのほかにも、社員の技術レベルや知識レベルの底上げを図る教育委員会があります。その教育委員会が音頭をとって、営業に関する勉強会を開いたり、他社の工場に見学に出かけたりしています。

──去年の7月に『FX4クラウド』を導入した狙いは？

鳴島　それまではサーバーシステムの『FX3』を使っていました。埼玉の本社工場と、東京・江戸川区にある自宅の両方でシステムを使えるようにするためにインターネットVPNを利用するなどいろいろ複雑なことをしていたのですが、『FX4クラウド』ならインターネット環境さえあればもっとシンプルに本社から離れた場所でも使うことができると聞いて導入を決めました。

芦川浩士・顧問税理士　それと、データの保全ですね。『FX4クラウド』の場合、パソコンにデータを保存するのではなく、インターネットを通じてTKCデータセンターに保存します。免震構造を備えるデータセンターで預かってもらえるので、とにかく安全なんです。

──TKCシステムに対して、どんな印象を持っていますか。

鳴島　目標（予算）と実績との対比、つまり「予実管理」ができる機能が充実しているところが特に気に入っています。芦川先生に作ってもらった単年度計画を『FX4クラウド』に月別登録して《365日変動損益計算書》などに予算比の数字が出るようにしています。

──部門別管理はどうですか。

鳴島　(1)企画部(2)営業部(3)製造事業部（4)梱包事業部(5)印刷事業部の5部門に分けて、それぞれの部門の売上高、限界利益率、予算達成度合いなどをタイムリーにつかめるようにしています。
　私は常々、各事業部の責任者に対して「君たちはその事業部の社長なんだよ」と言い聞かせています。社長であるからには、その部門の売り上げがどうなっているか、人件費の使い方は間違っていないか、計画どおりに利益は出ているのかなどを正しく知っておいてもらう必要がある。『FX4クラウド』から出力した帳表類を社内会議の資料として使っているのは、こうした考えからでもあります。
　少し余談になりますが、5つの事業部のほかにも、フィリピンに支社があり、こちらも個別に業績管理をしています。フィリピンでは設計の仕事が中心で、現地スタッフがCADデータを作成し、それを本社工場に送ってもらっています。

──他のシステムとのデータ連携がしやすいのが『FX4クラウド』の特徴の一つです。その点についてはいかがでしょうか。

鳴島　自社の生産管理システム→TKCの販売・購買管理システム『SX4クラウド』→『FX4クラウド』という流れでデータ連携させています。このおかげで、売掛金の入力データなどをわざわざ2度打ちする手間がなくなり、経理業務の大幅な効率化がなされました。

芦川　ナルシマさんは昨年、生産管理システムを業者に依頼して新たに導入しました。そこに請求・入金を管理する機能を追加することもできたのですが、多額の費用がかかることから見送った経緯があります。その代わりに導入したのが、請求書の発行や入金管理ができる『SX4クラウド』でした。
　生産管理システムのデータを一度、『SX4クラウド』側にもってきて、請求書の発行ができるようにしたうえで、さらに『SX4クラウド』と『FX4クラウド』を連携させることにより、入金データを『FX4クラウド』に自動的に仕訳入力できるようにしています。

──『FX4クラウド』では、同じ画面を会計事務所からでも見たり、遠隔操作をすることができます。その辺りのメリットをどう感じていますか。

鳴島　私は質問が多くて、疑問に思ったことがあればすぐに芦川先生に電話をかけてしまいます。その際に、同じ画面を見ながら、あれこれ聞けるのは本当にありがたいです。その場ですぐに疑問が解消され、つぎの仕事に進むことができます。

──独自帳表をスプレッドシート形式で作れる「マネジメントレポート（MR）設計ツール」は活用されていますか？

鳴島　この機能も便利ですね。TKCの給与システム『PX4クラウド』のデータもスプレッドシート上でぶつけて、「1時間あたりの人件費」や「1時間あたりの固定費」がいくらなのかが一目でわかるオリジナル帳表を作成しています。これがあれば、たとえば人件費や電気代を含めたセット梱包にかかるコストがどれくらいかということを営業スタッフに伝えることができます。営業のほうも仕事を取りたいばかりに金額を安くしたがるときがあるのですが、「その金額では採算割れになる」とクギを刺すことができます。きちんと数字で示せば、みんなすぐに納得してくれます。

──今後の目標を聞かせください。

鳴島　TKCシステムをしっかり使いこなせるようにしたいというのが、まず一つ。それと、ナルシマブランドの商品をどんどん開発していきたいですね。
　すでに商品化しているオリジナル商品には、『ブリトレイ』という名前の、吸着式ディスクトレイなどがあります。ディスクのストッパー部分は従来のはめ込み式ではなく、吸着して固定する独自の工夫を採り入れています。今後もさらに魅力的な商品を世の中に送り出していきたいと思っています。