ユートク・ライフ様

山崎正人常務取締役・渡邊康監査担当

統合型会計情報システム(FX4クラウド)ユーザー事例

きめ細かい業績管理をクラウドで実現する不動産店

都内に5つ不動産店を展開するユートク・ライフは、賃貸マンションやアパートなどの仲介・管理を主業務とする。常務取締役の山崎正人氏(44)は、リスク管理の観点からTKCの『FX4クラウド』に強く引かれたという。消費税アップを目前に控えたいま、耐震工事を物件オーナーに積極的に提案している同社の経営戦略とは?

5つの店舗を展開し1都3県をカバー

──賃貸マンションやアパートなど不動産の仲介・管理を手がけているそうですね。

山崎正人常務取締役

山崎正人常務取締役

山崎 いわゆるプロパティー・マネジメント(PM)です。賃貸物件がメーンなので、お客さまの6割ぐらいが、学生さん、サラリーマン、OLといった単身者。あとは、自宅を購入する前の若いファミリー層が多いですね。1都3県(東京、千葉、神奈川、埼玉)にわたるエリアを営業地域としています。

──御社ならではの持ち味や強みといえば……。

山崎 お客さまの年齢が比較的若いため、それに対応するスタッフも若手中心に編成しているところでしょうか。おもに20代から30代前半のスタッフが窓口業務に当たっています。というのは、同世代のスタッフのほうが、お客さまが何を求めているかがよく分かるからです。むかしは学生向けのアパートというと6畳一間、場合によってはお風呂がないのも当たり前で「安ければいい」という感じでした。しかし、いまの若い人たちは「25平米くらいほしい」とか「バスとトイレは別々がいい」といった好みの傾向があるなど、同世代だからこそ「共感」できるポイントというのが意外とあるんです。

都内5カ所に店舗を置く

都内5カ所に店舗を置く

──現在の店舗数は?

山崎 (1)池袋店(2)高田馬場店(3)渋谷店(4)成増店(5)赤坂店の5店舗です。
 高田馬場店や成増店はいわば「地域密着型」の店舗で、その地域に住む人が主なターゲットとなります。一方で、池袋店と渋谷店は「ターミナル型」の店舗。大型ターミナル駅のちかくに店があって、乗り入れ沿線駅すべてを営業エリアとします。都内にしか出店していないにもかかわらず、1都3県で展開できている理由はここにあります。池袋店なら埼玉方面、渋谷店なら神奈川方面も網羅できるわけです。ちなみに赤坂店は都心部を営業エリアとし、お客さまの年齢層は少し上になります。

──営業戦略上、いま特に力を入れていることは何ですか。

山崎 賃貸物件をお預かりしている大家さんの信頼にどれだけ応えられるかが、われわれが事業を展開していくうえでの重要な柱となります。これを踏まえて今、もっとも力を入れているのが建物の「耐震化」の提案です。なかでも震度5程度までしか想定していない旧耐震基準で設計された建物については、来年4月の消費税改正前に改修工事をすることを積極的にお勧めしています。
 実は、今年9月末までに請負工事の契約をしていれば、引き渡しや代金支払いの一部が来年4月以降にずれ込んでも税率は現行の5%で済みます。なので、このタイミングを逃さない手はありません。迫り来る大地震に備えることは建物の所有者として必要なことだし、またそれをお預かりしている私たちが再度そのことをお伝えして新耐震基準への適合を促すことは、私たちが大切にしている「共助の精神」からも必要なことだと思っています。

──店舗への集客面で特に意識していることはありますか。

山崎 インターネットの効果的な活用がそうですね。いまは、まずネットで事前に借りるお部屋の目星をつけてから不動産店に足を運ぶ時代。魅力的な物件情報を自社のホームページにきちんと掲載していくことも大事だし、ツイッターを通じてさまざまな情報をお客さまに発信していくことも必要になります。ツイッターでは、各店舗のスタッフが地元のおいしい飲食店を紹介する「地域情報」をつぶやいたり、新築などの物件情報をホームページに掲載するよりも先に流したりしています。それらツイッターの文章を通じて、私たちがどんな考えのもとに事業を行っているかという「心の部分」を見せることが、集客面における一定の効果を生み出しています。

BCP対策としても有効な“クラウド”の利便性に着目

──『FX4クラウド』を導入したのは、昨年5月とお聞きしました。

山崎 これまで『FX2』『FX3』と導入してきたので、『FX4クラウド』に移行するのはある意味自然な流れだったのですが、やはり一つのきっかけとなったのは、「クラウド型」であるところでした。
 クラウドに関心を持つようになったのは、東日本大震災による津波の被害で宮城県南三陸町の戸籍データが消失してしまったという報道を耳にしてからでした(編集部注:のちにデータの副本が発見)。これは決して人ごとではなく、うちの会社でもデータ保管に関して万全を期す必要があると感じたのです。顧客情報をはじめ、自社の大切なデータを外部の専門業者に安全に預かってもらえるクラウド・コンピューティングはその有効な手段になり得ます。

渡邊康・監査担当

渡邊康・監査担当

渡邊康・監査担当 『FX4クラウド』の会計データは、最高度のセキュリティー体制を備えたTKCデータセンターで管理され、バックアップデータの保管は不要です。万一、災害にあった場合でもいち早くシステム再構築が可能となります。

──『FX4クラウド』に切り替えたことで、大きく変わった点は?

山崎 私が見ている《変動損益計算書》の画面などを、会計事務所にいる渡邊さんも同じように見ることができるため、確認したいことや相談したい点が出てきたときは以前よりも電話で話がしやすくなりました。いろんな画面をハードコピーして、それをFAXして……といった無駄な手間は完全になくなりました。クラウドだからこそ実現できる、この利便性は大きいですよ。

──データの入力は各店舗ごとに行っているそうですね。

山崎 仲介手数料や管理料などの売り上げデータ等は、それぞれの店舗の担当者が個別に入力しています。インターネット回線を利用し、複数拠点からの「分散入力」ができる点も『FX4クラウド』のよいところですね。専用サーバーを用意する必要もありません。

──部門別の業績管理はされていますか?

山崎 もちろんです。各店舗を部門に見たてて、それぞれの業績がリアルタイムにわかるようにしています。また部門の階層管理機能を用いて、各店舗の下に「仲介部門」と「管理部門」をぶら下げるかたちで、より細かいところまで数字を把握できるようにしています。
 こうした部門別管理体制を敷くことにより、どこの部門が伸びているか、どこが伸びていないかが数字で把握できるようになります。つまり収益獲得の柱が何か、あるいはウイークポイントがどこかが正しく認識できるようになるわけです。

渡邊 今後はさらに、各店舗の仲介部門と管理部門の下にもう一つ階層を設けて、「リフォーム」や「更新料」などの詳細項目についても個別に管理していく予定です。

黒字を続けるには「人材教育」が不可欠

──黒字経営の極意といえば、どんなことが思い当たりますか。

山崎 まずは従業員みんなが、誰に対しても誠実であることですかね。顧客はもちろん、周りの仲間に対してもです。それと、目標に向かって努力する気持ち。これら「内面の部分」がとりわけ重要になってきます。

──その辺りの話をもっと詳しく聞かせてください。

山崎 人が暮らす「家=部屋」というのは、「こんな温かい家庭を築きたい」といった夢をみる場所でもあります。当社はそれを紹介する側なので、人に夢を提供できる存在でなければいけない。こうした気持ちを従業員みんなで共有していくことで、全社一丸となって動けるようになります。要するに、黒字経営を続けていくためのカギを握るのは、人をきちんと育てていくことなんです。それには何が必要かというと、徹底的に社員と会話することですね。食事をしながら話をする、ときにはお酒を飲みながら話をする。そうした時間をとにかく大事にしています。

ユートク・ライフ

──会社全体の限界利益を上げるための工夫としては……。

山崎 建物のオーナーさんに対して、積極的にリフォームの提案などをしていくことなどがそうですね。これはオーナーさんにとっても、入居率の改善や家賃の下落を防ぐためにも必要なことで、もちろん過度な修繕をする必要はありませんが、現状に見合った修繕は定期的にしたほうがよいのです。

──オリジナル帳表が簡単に作れる「マネジメントレポート(MR)設計ツール」は活用されていますか。

山崎 現時点においてはまだですが、それぞれの従業員が会社の業績にどれだけ貢献したかがすぐに分かるような自社独自の帳表が作れたら面白いと思っています。それを人事評価の参考資料として使うわけです。部門別管理を今よりもっと掘り下げて、リフォームや更新料などの詳細項目についても各店舗ごとに把握できるようになれば、より現実味を帯びてきます。

──今後の展開は?

山崎 プロパティー・マネジメントだけでなく、これからはアセット・マネジメント(AM)にも力を入れていくつもりです。たとえば「駐車場にしている土地にアパートを建てたほうが資産活用上メリットがある」といった提案をしていきます。専門部署を設けて、積極的に展開していく予定です。
 それと、まだ具体的な計画は何もないのですが、当社の店舗の配置分布をみると城東地区(墨田区、江東区など)だけがまだないので、将来的にはそちらの地域にも出店したいと考えています。

企業情報

ユートク・ライフ

ユートク・ライフ

代表者
二川目 稔
設立
1985年12月
所在地
東京都豊島区東池袋1-1-1
TEL
03-3982-6631
売上高
約3億円
社員数
30名
URL
http://www.yutoku.co.jp/

顧問税理士 渡辺 衛
岩城・渡辺税理士合同事務所

所在地
東京都港区赤坂2-16-21
栄屋ハウス102
TEL
03-6459-1110
URL
http://www.watanabe-mamoru.bz/

『戦略経営者』2013年6月号より転載)