導入事例 CASE STUDY
日本セック株式会社様
統合型会計情報システム(FX4クラウド)ユーザー事例
競争力と利益率の向上を
“クラウド”で実現する
LED(発光ダイオード)を使った電光掲示板の製造販売で知られる日本セックは15年ほど前からタイに進出。首都バンコクに現地法人を設立し、東南アジアへの販路拡大をうかがう。昨年『FX4クラウド』の導入に踏み切った中田吉泰社長(57)と、タイからテレビ会議システムで参加してくれた南雲弘之会長の2人に話を聞いた。
完成品メーカーの強み生かし新商品を積極的に提案
――事業内容についてお聞かせください。
中田吉泰社長
中田 駅や空港、道路などで目にするLED式の情報表示板(電光掲示板)の製造販売をメーンにしています。それと、工場の「見える化」を促す生産進捗管理板も幅広く手がけています。たとえば工場のライン設備のうえに「今日の製造目標」「予定・実績」などを掲げて、工員が一目でわかるようにするのが、工場の見える化です。
――会社の特徴・強みは?
中田 自社ブランドというものに創業以来こだわってきました。設計開発から製造、販売まですべて自社で行える完成品メーカーであることが当社の持ち味だと思っています。
――会社の沿革を簡単に教えてください。
中田 創業は1979年。トヨタ自動車がまだ「見える化」を全国的に広める前から、生産進捗板の製造にあたっていました。実は、この生産進捗板を国内で最初に商品化したのが当社です。
以前は、製造を担うセト電子工業と、営業子会社の日本セックに分かれていましたが、それを昨年8月に合併して新たにスタートしました。存続会社となったのはセト電子工業のほうですが、社名はお客さまになじみのある日本セックにしました。
――中田社長はもともと木林会計事務所の職員として、セト電子工業を担当されていたそうですね。
中田 ええ。大学のときは工学部でしたが、あるメーカー勤務を経て、木林会計に長年務めていました。実は、セト電子工業と木林会計の接点を十数年前に最初に作ったのが私で、一番最初の監査担当者でした。
そうしたご縁もあり、前社長である南雲弘之会長からお誘いを受けまして、「最後は富山のものづくりに関わりたい」という強い思いから、一昨年の1月にセト電子工業に入社しました。また、昨年の7月には社長バトンタッチの強い要請を受け、心の中にいろいろな葛藤がありましたが、不退転の思いで社長を引き受けさせてもらいました。
――最近の経営環境はいかがでしょうか。
中田 実はLEDを使った情報表示板の市場は縮小傾向にあるといえます。「屋内」については液晶式の表示板が増えてきていることと、情報表示板自体が国内においてはすでに飽和状態にあるというのが理由です。
――そうした中での経営戦略は?
中田 開発型企業という特性を生かして、技術開発、製品開発、用途開発といった部分をいっそう強化していくことです。
たとえば、熱中症の危険を見える化して熱中症対策を促すための「熱中症予防対策WBGT指標表示器」を開発して、公園や競技場に置いてもらうようにしたのがそうだし、植物に必要な光波長をLED光源で照射する「植物育成装置」の商品化も実現しました。この植物育成装置は、作物が日照不足を起こす恐れがある時期などに、人工の光を与えて安定的な収穫ができるようにするためのものです。さいわいこの周辺には、理系学部のある大学がいくつかあるので、新商品の開発にあたっては大学との産学連携を通じて、さまざまな研究をおこなっています。
あと、LED表示板の市場が縮小していることを受けて、ライバルだった大手メーカーが相次いで撤退し始めていることから、その空いた市場を狙って、自社オリジナルの「LEDモジュール」を販売していくことにも力を入れています。これらは海外で生産することで、コスト面における強みを持ってます。
――海外生産も、御社にとって重要な戦略の一つです。
タイにいる南雲会長にはテレビ会議システムを通して
取材に参加してもらった
中田 15年ほど前からタイに進出し、協力工場を通じて委託生産を始めました。さらに今から3年前に現地法人を設立して、タイをはじめベトナム、フィリピン、インドネシアなど東南アジアの国々に直接供給する体制を築いています。
南雲 タイに現地法人をつくったのは、主に製造と営業の2つの側面からでした。
いま日本では、優秀なエンジニアの調達がだんだん厳しくなってきています。残念ながら日本の若者には、昔のようなハングリー精神がありません。でもタイの人は徹夜も厭わず働くなど、仕事に対するパワー、エネルギー、ハングリー精神を持ち合わせています。そうした人材を今のうちから確保しておかないと、自社ブランドを前面に出して展開していく当社の創業時からの方針が成り立たなくなる恐れもある。それを先読みして、タイでは技術者を中心に人を集めています。
また、ASEANや中国といった海外市場での展開を今後進めていくうえでも、タイの現地法人は重要な拠点になると考えています。
BCP対策としても有効なクラウド・ストレージ
――『FX4クラウド』を新たに導入した理由は?
駅構内にあるLED式の情報表示板
中田 以前は『FX2』のピアツーピア機能で財務を統合していましたが、2社を合併するタイミングで『FX4クラウド』に切り替えました。複数のパソコンからの同時アクセスが可能なことや、仮に私がタイに出張に行ったときでもパソコンに『FX4クラウド』が入っていればいつでも最新業績が見られます。こうした点にひかれました。
――実際に導入してみて、“クラウド”ならではの魅力をどんなところに実感されていますか。
中田 BCP(事業継続計画)対策として有効だと思います。たとえ天災などで自社サーバーがダメになったとしても、インターネット上(TKCのデータセンター)に保管されている財務データは無事なので安心感が増しました。
財務データに限らず、自社にある大事な製造に関するデータについても今後は、クラウド・ストレージを用いた保管方法にすることを検討していく必要があるかもしれません。
成田聡税理士 『FX4クラウド』なら、日本セックさんの財務状況を当事務所にいながらにしてインターネットを通じて見ることができます。問い合わせがあった際には、同じ画面を見ながら電話でやり取りできるので、だいぶ便利になりました。
――黒字経営を続けるために意識していることは何でしょうか。
中田 タイで製造し、日本で販売するというビジネスモデルによってもたらされるコスト競争力に磨きをかけ、会社全体の限界利益率を高めていくことを強く意識しています。タイに生産移管する数量・品種を増やしていけば、原価率を下げる余地はまだまだある。そうしたコストダウンをさらに追求していきたいと思っています。
――限界利益率の推移を確認するための資料として、どんな帳表類に目を通していますか。
中田 毎月、営業所長などを集めて「生販会議」と呼ばれる部課長会議を開いていますが、その際には必ず前月の《365日変動損益計算書》を資料として活用します。限界利益のほかにも、その月の売上高が予算に対してどうだったかを示す「予算比」や「前年同月比」などの数字もチェックしています。
――予算は『継続MAS』で策定されているそうですね。
中田 ええ。『継続MAS』で策定した単年度計画(予算)の数字を『FX4クラウド』に月別登録するかたちで予実管理をしています。
「販売」と「製造」とにグループ分けした部門別管理
――重層的な部門別管理をしているとのことですが……。
後列左が監査担当部長・脇本勇喜さん、
後列右が成田聡税理士
中田 まず「販売」グループと「製造」グループという2つの大きなくくりを設けています。そのうえで、販売グループを「東日本」「西日本」「中日本」の3つにわけるとともに、製造グループを「製造」「技術」「管理」の3つにわけて業績管理をしています。さらに東日本や西日本の下には、各営業マンを部門に見たててぶら下げています。こうした重層的な管理をすることでより細かな業績管理ができるようになります。
脇本勇喜(監査担当) ちなみに販売グループと製造グループの2つに大きくわけているのは、販売を担当していた旧日本セックと、製造を担当していたセト電子工業のかつての業績と容易に比較できるようにする狙いもあります。
――『FX4クラウド』には、MR設計ツールによるオリジナル帳表作成の機能があります。それに関してはいかがですか。
中田 現状ではまだ活用していません。ただ、エクセルを使って自社独自の帳表をカスタマイズできる機能だということなので、興味はあります。いまは生販会議のなかで《変動損益計算書》を資料として使っていますが、それとは別のオリジナル帳票を作って活用していくこともこの先考えていきたいと思います。
――今後の抱負をお聞かせください。
中田 昨年8月から始まった3カ年の中期経営計画のなかでは、年商10億円の突破を一つの目標として掲げています。これまでに何度かチャレンジしてきたものの、いまだに達成できていません。これを全社員で実現することを目指しています。売上高と利益をあげることに努め、それが実現されれば給与を上げることを約束して、社員の士気向上を図っています。
企業情報
日本セック株式会社
- 代表者
- 中田吉泰
- 所在地
- 富山県射水市戸破8-10
- TEL
- 0766-56-9555
- 売上高
- 6億5000万円
- 社員数
- 60名
- URL
- http://www.npsec.com/
顧問税理士 木林 實
木林会計事務所
- 所在地
- 富山県富山市奥井町22-6
- TEL
- 076-441-7261
- URL
- http://www.mastac-g.jp/
(『戦略経営者』2012年8月号より転載)