導入事例 CASE STUDY
ヤマヒデ食品株式会社様
統合型会計情報システム(FX4クラウド)ユーザー事例
製品別管理で基盤を強化する
かつお・削り節の老舗メーカー
かつお・削り節の老舗メーカーとして著名なヤマヒデ食品。高い品質を担保しながら、約300アイテムもの商品を展開する積極性も併せ持つ同社はいま、財務基盤のさらなる強化に取り組んでいる。村岡亨祐社長(62)と夫人の村岡初美総務部部長、顧問の藤本清税理士、監査担当の藤本秀樹税理士に話を聞いた。
良い素材とすぐれた技術で消費者の支持を獲得
村岡亨祐社長
――かつお・削り節メーカーの老舗だとお聞きしました。
村岡亨祐社長(以下社長) 1952年創業で、関西を中心に展開してきました。商品アイテムは約300で、月に80トンを生産し、年商は24億円。かつお・削り節メーカーとしては全国でも5本の指に入る規模だと思います。
――市場的にはどうなのでしょう。
社長 基礎的な食品なので、景気にはあまり左右されません。むしろ景気が悪いほどよく売れたりします。近年はギフト需要がなくなったのと若者のかつお・削り節ばなれで、個人需要は少し減っていますが、業務用は逆に増えていると思います。
――大手の寡占化が進むなか、安定した業績を上げ続けておられますが、秘訣は。
社長 まず言えるのは、先代が考案した『業務用だし』の存在が大きいと思います。いわしやさばなどの素材をブレンドしたもので、これが、当社の屋台骨を支えてきました。商品名に「業務用」とつけていますが、実際は食品スーパー経由の一般消費者向けです。つまり、「プロの店の味を家庭で再現できる」というコンセプトの商品で、30年もの間、全国のスーパーで定番として販売され続けています。
――やはり支持されているのは「味」ですか。
社長 もちろんです。だしにしろ、かつお・削り節にしろ、良い素材(原料)を集め、良いブレンド割合で仕上げなければなりません。とくに買い付けの際には細心の注意が必要です。われわれは、味に関するノウハウには自信を持っています。
――かつお・削り節やだし以外にも看板商品をお持ちだとか。
社長 天かすや青のり、エビ、紅しょうがなどといった、いわゆるお好み焼き関連具材が伸びてきており、現在、8億円くらいの売り上げを稼いでいます。とくに、天かすなどは業界でベストスリーに入るのではないでしょうか。天かすは、実は20年前まで製造販売するところはほとんどありませんでした。ところが、当社がテスト的に販売したら実に良く売れる。いまでは1日4~5トン揚げています。完全なニッチ商品だし製造も意外に難しいので、大手は手がけたがらないわけです。ただ、需要は確実にある。なので、当社は、自社ブランドというよりも、主に大手のPB商品をOEM供給するスタイルで展開しています。
――それにしても商品アイテムが多彩です。開発体制はどのように?
社長 「新製品開発プロジェクト」という名称で、製造部門や営業部門から有志10名ほどが毎週、会議を重ねています。年間で5アイテムくらいは新製品を出しているのではないでしょうか。さまざまな原料を組み合わせながら「こんなんできんやろか」などと日夜試行錯誤を繰り返しているわけです。現状維持ではじり貧は免れないですからね。
――まったく新しい展開も視野に入れておられるとか。
社長 現在、当社を含めた3社で、毎日大量に出る削りかすなどの廃材を利用して、農業用肥料をつくる取り組みを進めています。これは昨年暮れに行政から販売許可がおりましたから、近いうちにビジネスをスタートさせたいと思っています。それと、養分が豊富に含まれている廃水を利用して、ミミズの養殖などの事業展開ができないか、大学の先生の協力を得ながら研究中です。いずれにしても、従来は廃棄物だったものを有効利用できれば、環境にも良いし、少ない資本で利益を産み出せます。なんとか採算のとれるビジネスに育てたいですね。
自信を持って経営判断ができる体制づくり
――藤本清(顧問税理士)先生とのご関係は?
村岡初美総務部部長
社長 私は娘婿ですので、古い話は部長(夫人)に聞いてください(笑)。
村岡初美取締役部長(以下部長) 私がまだ幼稚園の頃だったと思いますが、父親が会社を立ち上げた当初から家族ぐるみのお付き合いをさせていただいています。当社の2階に先生の事務所があり、私もよく遊びにお邪魔していたようです。
藤本清税理士 実は私も事務所を立ち上げたばかりで、ヤマヒデさんは第1号の関与先だったんです。
――『FX2』を導入されたのも早かったとか。
部長 ウチは藤本事務所の実験台ですからね(笑)。TKCさんの新しいシステムは常に先陣を切って導入してきました。
――『FX4クラウド』もそういう流れで?
部長 それもありますが、最大の理由は「製品群別」の数字が見たかったからです。以前も『FX2』を5台導入して、事業所(部)ごとに独立採算的な計数管理をしていましたが、合算した全社試算表をつくるのに手間がかかっていたし、もちろん製品別の数字など分かりませんでした。しかし、『FX4クラウド』では各事業所(部)で入力されたデータがそのままクラウド上で集約されるので圧倒的にスピーディーだし、部門別・階層別の管理も詳細かつ容易にできるということで、導入を決断しました。
藤本清税理士
藤本清税理士 今回は、会社自体をリニューアルするつもりで取り組んでいただいています。軌道に乗るまでは大変かもしれませんが、将来的には緻密な財務管理が必ず効いてくると確信しています。
――実際、どのような部門別管理をされていますか。
部長 第1階層として製造部、事業本部、本社営業部、東京支店、広島営業所の5事業部門。さらに第2階層として製造部のなかをかつお・削りぶし、青のり、天かすなど「製品群別」に7分類しています。つまり、製品ごとの損益が分かるようになったということ。これが当社にとって一番大きかったと思います。
――効果のほどは?
部長 いままで見たこともない製品別の数字が瞬時に出てくるので、最初は「ほー」と感心するばかりでした。それから中身を検証するにつれて「やっぱり」とか「えー?」とか大騒ぎです。儲かっていると思っていた商品が実際には損をしていたり、あるいは利ざやが薄いと軽視していた商品が意外に利益を稼ぎ出していたりと、細かなところが明確に分かるようになりました。結果として、製品の取捨選択や価格政策などの経営判断が自信を持ってできる体制が整いつつあると思います。
社長 うすうすは分かっていたことでも数字でばちっと出てきた方が納得できますからね。
部長 それから、製品ごとの売上高や粗利などのグラフが出てくるのがビジュアル的でとても分かりやすいと思います。
――独自様式の報告書を効率的に作成できる「マネジメントレポート設計ツール」という機能も活用されているとか。
部長 はい。仕訳で計上された製品群別の経費のデータをスプレッド・シートに吐き出して、独自の原価管理表を作成しています。これを見れば、一目で製品別の原価や粗利が分かるようになっています。
藤本秀樹税理士(監査担当) このツールは、『FX4クラウド』のマスターや実績データを参照する関数が、エクセル上で使用できるのでとても便利です。
"クラウド"の強みを生かしより効率性を高める
――『FX4クラウド』による仕組みが回り出してまだ数か月ということですが、進ちょく度合いは。
藤本秀樹税理士
部長 いままで共通経費だったものをすべて製品別に仕分けなければなりませんから、まだ完璧にできているとはいえません。たとえば、包装紙代を100万円使ったとすると、以前は、そのままでよかったのですが、いまは、どの事業のどの商品に使用されたものかを確認し、振り分けなければならない。正確性を担保するにはより習熟度を上げていく必要があるでしょう。
藤本秀樹税理士 ただ、"クラウド"の強みは大きいと思います。たとえば、私事でいえば、自分の事務所に居ながらにして会計データを修正することもできますから、非常に効率的に仕事を進めることができるようになりました。また、村岡社長も村岡部長も、自分のPCから全財務データを見ることができますから、色んな意味で透明性が増したといえるでしょう。
――今後はいかがでしょう。
社長 先ほども述べましたが、農業用肥料など新しい事業を何とか近いうちに形にしたいと考えています。また、お好み焼き関連具材の分野で、家庭用のセット商品など、より付加価値のついたアイデア商品を開発していきたいですね。
部長 売上高よりも中身だと思います。そんなに儲かる仕事でもありませんしね。その意味でも『FX4』を十二分に活用しながら、利益体質を強化していく必要があるでしょう。
企業情報
ヤマヒデ食品株式会社
- 代表者
- 村岡亨祐
- 所在地
- 兵庫県三木市別所町巴29番
- TEL
- 0794-82-1858
- 売上高
- 約24億円
- 社員数
- 約100名
- URL
- http://k-yamahide.co.jp/
顧問税理士 藤本清
藤本清会計事務所
- 所在地
- 兵庫県三木市加佐196-8
- TEL
- 0794-89-2098
(『戦略経営者』2012年5月号より転載)