株式会社イーソナー様

株式会社イーソナーの皆さんと今村顧問税理士

統合型会計情報システム(FX4クラウド)ユーザー事例

店舗別業績管理の徹底で
“スマホ時代”を勝ち抜く

『iPhone』の登場以来、スマートフォンの普及が進む携帯電話業界。携帯ショップもまた、少なからずその影響を受けている。高知県でドコモショップ3店舗を運営するイーソナーの小松和弘社長は、「接客の長時間化が進み以前より儲けにくくなってきた」という。同社は、顧問の今村洋昭税理士の指導のもと、緻密な財務管理で本格化する“スマホ時代”を突破しようとしている。

継続的な組織力強化で環境変化に立ち向かう

小松和弘社長

小松和弘社長

――携帯電話は、契約数が1億を超えて成熟産業となっています。ドコモショップを運営するうえで、現在の経営環境をどう捉えていますか。

小松 携帯電話は普及期から成長期を経ていったん成熟期を迎え、さらにいまはこれまでとは別の新しい時代に移行する段階だと捉えています。具体的には従来のフューチャーフォンからスマートフォン(スマホ)へ、通信方式で言えば3G(第3世代)から4G(第4世代)への移行です。ドコモだと『Xi』(クロッシィ)というスマホ・タブレット・データ通信向けのサービス。これはLTE(Long Term Evolution)といって3・9Gの通信方式が使われています。

――競争条件が変化していると?

小松 普及期や成長期は、黙っていてもショップの売り上げが伸びる時代でした。それが成熟期は接客力やサービス力で顧客満足度(CS)を高めることが勝ち残る条件になった。CSを高めないと価格競争に巻き込まれて大手家電量販店などに負けてしまうからです。
 現在はCSだけでもダメで、プラス財務・労務管理といった組織力が重要になっています。例えばスマホ販売の場合、お客さまが望む利用方法などを十分にお聞きして最適な説明と提案を差し上げないといけないため、1台あたりの接客時間がフューチャーフォンよりも長いんですね。で、接客時間が長くなれば当然、時間あたりの売上高(生産性)が低下する。生産性が低下する中で利益を出すには、緻密な財務管理が不可欠になるというわけです。

――auが『iPhone』の提供をはじめましたが、キャリア(通信業者)の商品力も重要ですね。

小松 現状お客さまは、スマホは『iPhone』とそれ以外という認識が強いので、ショップ経営において『iPhone』を扱っていないことの不利は確かにあります。
 一方でドコモもスマホを積極的に投入していますし、なにより「一番繋がりやすい」という強みがあります。この強みをお客さまにスムーズに訴求できれば競争に勝っていけるはずです。

――その鍵が接客力であると……。

小松 生産性を低下させずに接客力を高めることが重要です。

――ただ接客スキルは、多分に属人的で、しかも暗黙知の部分が大きい。組織的に向上させるのは難しいのではないのですか。

お客様への接客風景

小松 確かに個人による部分は少なくありません。ただ、接客パターンはそんなに複雑ではないので、仕組みがしっかりしていれば社員の力は着実に向上します。大切なのは育つ環境を整えることです。

――“育つ環境”とは?

小松 組織風土と規則・規定の2つがあります。風土の部分では、企業使命感や行動基準の共有化です。言うなれば会社の“憲法”です。内容は本当に基本的なことで、「報連相(報告・連絡・相談)を徹底する」など。当社ではこれらを文書化して、全員で毎朝唱和しています。基本ができていないと人は育ちません。
 また規則や規定の部分では、携帯ショップは女性スタッフが多いので、例えば産休や育休の制度などを整備する。結婚や出産、育児で中途退職されるのは大きな損失です。育成は時間がかかるので、できるだけ長く勤めてもらう仕組みが大切です。半面、定着率が高まればその分、人件費も高まってきます。だから、何度も言いますが財務管理が重要になる。これらすべてを含めたものを私は組織力と呼んでいます。

――そうした取り組みが成長に繋がっているわけですね。現在3店舗を展開中ですが増やす予定は?

小松 新たに2店舗増やします。多店舗展開する理由は、法人営業の効率化を進めるためです。法人でもスマホの需要が高まっていますので、これまで以上のサポート体制の強化が求められています。1店舗運営だと効率が悪いため、法人営業をすればするほど赤字になってしまうのが実態なんです。多店舗化も勝ち抜く条件のひとつですね。

『FX4クラウド』で粗利重視の経営を徹底

――財務管理の重要性を強調されていますが、具体的には主にどんな数値を重視しているのでしょうか。

株式会社イーソナーの皆さんと今村顧問税理士

小松 強いてあげれば労働分配率と限界利益(粗利)です。
 労働分配率とは粗利に対する人件費の比率ですから、これを下げる(生産性を高める)には粗利を向上させるか、人件費を抑制するしかありません。ところが人件費を抑制しすぎると現場スタッフのモチベーションダウンにつながり接客力も低下するので、そうするといかに粗利を高めるかになる。当社では商品1台1台に対して個別に目標粗利額を設定して管理しています。

――粗利は売り上げから仕入れを引いたものですから、粗利確保のためには売価を上げるか、仕入れの負担を下げるかのいずれかになります。

小松 売価については「どこよりも高く売る」をモットーにしています。以前は他店の価格を調査して、あえてその価格よりも1000円、2000円高く売価を設定するといったことも行っていました。他社より高くてもお客さまに納得していただくには、価格に見合うだけのサービスが必要になる。それを各店の責任者やスタッフに求めています。
 仕入れについては、不良在庫をなくす努力を継続してきました。いまはだいたい50機種、1機種あたり4色程度なので200アイテムくらいを管理しています。その上で予約が入るような人気機種は可能な限り数を確保して販売機会の損失を最小限にし、一方で人気の低い商品はキャンペーンなどを行ってデッドストックにならないように工夫しています。

――キャンペーンは目標台数や売価の設定が難しいように感じます。

小松 正直に言いますと、これまでに何度か思ったように台数が捌けず予想した粗利を確保できなかったキャンペーンもありました。現在はその辺の見極めを、財務データを参考にして決めています。携帯ショップの売り上げには、機種売り上げに加えキャリアからの手数料や支援費などがありますが、これらを別立てで管理して機種ごとの粗利を正確に把握できるようにしています。

――そうした販売管理や財務管理にTKCシステムを活用されています。

小松 今村会計さんからご指導いただき導入しました。

今村顧問税理士

今村顧問税理士

今村顧問税理士 イーソナーさんには、販売管理システムの『戦略販売・購買情報システム(SX2)』や財務管理システムの『FXシリーズ』を導入いただいてきました。今年(平成23年)の7月には最新の『FX4クラウド』を導入いただいています。クラウドなので、まずサーバーの導入コストがかからないといった経済的メリットがあります。さらに高知は南海地震が危惧されていますが、災害時の財務データの消失リスクも低くなった。事業継続の観点で言えば、過去10年間のデータが備蓄できることも大きなメリットですね。
 また、当事務所からもイーソナーさんの会計データを確認できるため、月に1回実施する入力データの法的なチェック作業(巡回監査)などもスムーズに行える。おかげさまで精度の高い巡回監査と月次決算が行えるようになってきていますね。

小松 TKCシステムの良い点は、リアルタイムに知りたいデータを確認できることです。

――主に確認する帳表は?

小松 《部門別変動損益計算書》などです。店舗ごとに利益が把握できるのがいい。数値のイレギュラーがあった場合、迅速に原因の追究ができるようになっています。これは経営者にとって一番のメリットですね。オリジナル帳表も作成できるそうなので、今村会計さんにその設計のお手伝いをお願いしています。

店舗別の業績管理で店長の経営力を鍛える

店舗内風景

――店舗ごとの業績管理は現場力の向上にも繋がると思います。

小松 店舗の予算は店長がつくっていて、店長自身がその達成度合いを管理しています。目標予算はボーナス算定の基礎にもなっています。

――店長はきちっと業績管理が行えないといけませんね。

小松 毎月マネジャー会議を開催していて、ここで各店の業績を報告させています。管理のための帳表は、販売数と売り上げ、粗利をチェックできる資料を独自に作成しています。

今村 今度開催する当事務所主催の経営セミナーに店長をお呼びして、そこで管理会計を学んでいただく予定です。『FX4クラウド』には店長向けのモニター専用ライセンスがあるので、管理会計の知識を身につければ店長にもこのシステムを有効活用してもらえると考えています。

小松 店長やマネジャークラスの社員は、管理会計の基礎が理解できていないといけません。数字が理解できてはじめて、必ず予算を達成するという気持ちが生まれてくるんです。

――最後に経営における今後のテーマをお聞かせください。

小松 引き続き組織力の向上を継続していくことです。そのひとつとして現在、取り組んでいるのが「プライバシーマーク」(Pマーク)の取得による個人情報保護の体制強化です。今後の通信業界は、個人情報の管理が非常に重要になると感じています。例えば最近は「ツイッター」などのソーシャル・ネットワーク・サービスが普及したことで、社員が顧客情報や会社の情報を流出させるリスクが高まっています。このような情報漏洩リスクは年々高まっていくでしょう。仮にドコモショップでそうした事件があった場合、代理店の運営権を剥奪されるケースも考えられる。われわれにとって死活問題になりかねないテーマなんです。
 経営環境はどんどん厳しくなります。その打開策は、健全な組織と多店舗運営しかないと考えています。

企業情報

株式会社イーソナー

株式会社イーソナー

代表者
小松和弘
所在地
高知県高知市朝倉南町8-30
TEL
088-850-7500
売上高
7億円
社員数
60名(パート等含む)
URL
http://www.esona.co.jp/

顧問税理士 今村洋昭
今村会計事務所

所在地
高知県高知市長浜4729
TEL
088-842-8379
URL
http://www.tkcnf.com/imamurakaikei/

『戦略経営者』2012年1月号より転載)