税理士・公認会計士のご紹介

相続対策・遺産整理

土地所有者の遺産整理のお手伝い

I.ポイント

貸宅地の相続税評価額の求め方は、更地(自用地)の評価額から借地権価格を控除して求める。この計算方法では、借地権と貸宅地とを合計すると100%の価格になる。一見、合理的な算式に思えるが、この算式が成り立つ条件は、借地権と貸宅地とを一緒に処分する場合に限られる。

Ⅱ.事案の概要

古くからの地主の甲さんに相続が発生し、残された相続人は、奥様と子供2人。生前は不動産に関する一切の業務は、亡くなられたご主人が取り仕切っていたため、奥様はどの不動産を誰に貸しているかなど、ほとんど聞かされていなかった。

相続人
妻・子2人
相続税
子1人につき、1億円ずつ 子は不動産を中心に相続し、妻が金融資産を相続している。

Ⅲ.所有不動産の概要

  1. 貸宅地A
    (1)古くからの借地人に賃貸している。
    (2)地代の改訂は過去数年ほとんど行われていない。
    (3)借地上の建物は、借地人の自宅で今後も借地権が返還される予定はない。
    (4)借地人に底地の買取り資金を調達する余力はない。
  2. 貸宅地B
  3. (1)古くからの借地人に賃貸している。
    (2)借地上の建物は貸家として利用されていたが、老朽化のため現在は空家
    (3)借地人で建替え・修繕等を行う資金的余力はない。
  4. 貸宅地C
  5. (1)古くからの借地人に賃貸している。
    (2)借地上には、借地人の自宅と貸アパートが建っている。
    (3)貸アパートは老朽化しており、借地人自ら順次立退き交渉を始めている。
    (4)貸アパートは今後借地人で建替え・修繕を行う予定はない。
  6. 貸宅地D
  7. (1)古くからの借地人に賃貸している。
    (2)借地上には借地人の自宅が建っている。
    (3)借地人には底地を買取る資金的余力がある。
  8. 貸駐車場E
  9. (1)貸駐車場として自らが駐車場経営を行っている。
    都市計画道路予定地に面しており、近い将来値上がりが予想される。

Ⅳ.遺産整理業務

貸宅地Aについて⇒収益性の低い貸宅地等を物納する

地主にとって貸宅地は、一般的に古くからの安い地代で賃貸しており、収益性の低い資産といえる。また、売却しようとしても、借地権が設定された土地では更地のような価額で売れることはまず望めない。にもかかわらず、高い固定資産税・相続税の負担に悩まされ、地主にとっては所有することが重荷になっている資産である。

しかし、相続税の物納では、更地であっても、貸宅地であっても、国は相続税評価額で収納してくれるのです。したがって、通常は処分しにくい貸宅地などの不動産は、物納を通じて国に買い取ってもらうことにより、所有不動産の整理を進めることが可能となる。

例えば・・・
(1)収益性の低い貸宅地
(2)有効活用に適さない宅地・市街地山林など

≪相続時の状況≫
相続時の状況
甲の土地には、乙の借地権が設定されている。 この場合、甲が所有する底地部分の相続税評価額は、「自用地評価額×(1 - 借地権割合)」とされるが、換金化しようとしても相続税評価額以上では売却することができない。
≪物納による収納時≫
物納による収納時
底地を物納すると、相続税評価額(自用地評価額×(1―借地権割合))により収納される。 収納後は、国が地主となり、乙との賃貸借契約が引継がれることになる。
貸宅地Bについて⇒借地権を買戻す

借地人側で借地が不要となった場合には、借地権を買戻すことを検討。これにより権利関係が整理され、地主は更地として有効活用することもでき、また第三者への売却・物納を検討することもしやすくなる。

例えば・・・
(1)借地上の建物に居住していた借地人が子と同居することとなり空き家になる場合
(2)借地上に建てていた貸家が老朽化したが、借地人には建替えるだけの資力がない場合

≪買取り前の状況≫
相続時の状況
甲の土地には、乙の借地権が設定されており、物納する場合には、底地部分のみの評価となってしまい、売却する場合も低い価額となってしまう。
≪買取り後の状況≫
物納による収納時
借地権又は借地権付き建物を乙から甲が買取る。 これにより、物納する場合は、自用地評価額が収納価額となる。また、売却・有効活用などの選択肢も広がる。
貸宅地Cについて⇒借地権と底地を交換する

比較的広い貸宅地でその上に存する建物を借地人が2以上に区分して利用している場合には、地主の所有する底地と借地人の所有する借地権とを交換することにより、それぞれが完全所有権とすることが可能となる。

例えば・・・
(1)借地上に親世帯の住居と子世帯の住居が建っており、親世帯に相続が発生したため子世帯の住居しか必要でなくなった場合
(2)借地上に自宅と店舗を建てていたが、店舗が手狭になったため近くに新しい店舗を借りることとなり店舗が不要となった場合
(3)借地上に自宅と貸アパートを建てていたが、貸アパートが老朽化し入居率が悪化している場合

≪従前の状況≫
従前の状況
地主・甲の土地について、借地人・乙は借地権を有していた。 貸アパートは老朽化し、新たな入居者は見つからない。
≪交換後の状況≫
交換後の状況
乙の責任において、貸アパートの借家人と立退きを建物の解体工事を行うことを条件に、「甲の有する乙の自宅の底地部分」と「乙の有する貸アパート部分の借地権」とを交換する。
貸宅地Dについて⇒底地を借地人へ売却する

貸宅地の物納は、国に底地を相続税評価額で買い取ってもらうことを意味するが、それよりもよい条件で借地人が買い取ってくれるのであれば、借地人へ底地を売却することも考えられる。また、借地人と合意ができるのであれば、借地権と底地を第三者に同時に売却することも一考の価値がある。

例えば・・・
(1)借地人が底地の買取りを希望している場合
(2)借地人と共に土地を第三者に売却する場合

≪相続時の状況≫
相続時の状況
甲の土地には、乙の借地権が設定されている。物納する場合には、底地部分のみの評価となってしまい、売却する場合も低い価額となってしまう。
≪買取り後の状況≫
買取り後の状況
借地人にとって底地をある程度の金額でも取得するメリットがある。 完全所有権になれば、自宅の建替えや改造も自由にでき、資産価値も高まる。
駐車場用地Eについて⇒同族の不動産管理会社へ移転する

収益性の高い不動産や将来値上がりが予想される不動産など、その家にとって重要な資産は、個人が所有しているといずれ必ず相続の問題が生じる。そのような資産は、不動産管理会社を設立し、法人が所有する形態を取ることにより、個人はその法人の株式を間接的に所有することとなるため、相続から守ることが容易になる。

例えば・・・
(1)収益性の高い賃貸マンションが建っている土地
(2)都市計画道路予定地の周辺の土地で将来値上がりが予想される土地
(3)新駅開設予定地の周辺の土地で将来値上がりが予想される土地

≪従前の状況≫
従前の状況
個人で所有している土地はいずれ相続を迎えなければならない。
≪譲渡後の状況≫
譲渡後の状況
売買により法人に移転することにより、相続の問題から解放される。 移転させる方法として、(1)個人と法人間の売買により所有権を移転させる方法(2)個人が法人に土地を現物出資する方法が考えらいずれの場合においても、譲渡税の課税関係に留意して実行することがポイントです。